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ep1

ep1


「ノエル、きみのことが好きだ」


 よく、テレビをみているときに思う。液晶画面の中の芸能人を、同じ世界の同じ人間だとは思えない、と。「華がある」と一言に形容すればそれまでだけれど、それよりももっと無機質で簡素なものだと感じてしまうのは、彼らが演者であるからだろう。

 さて、なぜそんなことを考えているのかと言うと、目の前の人物に対しても前述のことを抱いたからだ。優しげなくっきり二重の瞼の下で、甘蜜のような瞳を浮かべるその人は、恐ろしい程に顔が整っていた。そして、現代では見慣れぬ装い――いわゆる中世ヨーロッパの貴族のような煌びやかな服――に身を包んでおり、まっさきに思ったのは「罰ゲームでも受けているのか?」という至極冷めたものであった。


 私は確かに自宅のベッドで眠りについたはずであったが、なぜか目を覚ますと立派な二本足で立っていた。ギリギリと締め付けられているであろう、酷い圧迫感を腹部に感じると共に、高く固く履き心地の悪い靴を履き、子供一人ぶら下げているのかと疑うほどに重たいドレスを着ていた。そうか、この痛みはコルセットか。天井には絢爛なシャンデリアが吊るされており、眩しくて睨みあげた。


「きみは、俺の事をどう思っているんだ…?」


 何言ってんだこいつ。ドレスグローブを付けた私の手をとる目の前の男になんの感情も抱かなかった。ノエルというのが人名なのだろうという憶測は出来たが、当然日本人まるだしの私の名前なんかでは無くて、それでもこの男はしっかりとこちらを見つめてくるものだから困った。

 よく、人がごった返しているところで「おーい!」とこっちを見て手を振られると、自分なのでは? いや私の後ろの人か? と悩まされるが、あの現象がまさにここでもおきていた。


「どうって……手を離して欲しいです」


 ノエルが私の名前なのだろうと、視界の端で揺れる緩やかに巻かれた銀髪にようやく合点がいった。そうか、私、


「(異世界転生ってやつか)」


 とりあえず鏡を持ってきて欲しい。

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