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ゴブリンガールはガチャを引く!  作者: 仲良しおじさん
メインクエスト【ガチャを引く!】編
2/251

第1話 ゴブリンガールは勇者と出会う!

挿絵(By みてみん)



「ッザッケンナ!」


 机ドンッ!


「アタイは行くよ! 外の世界を見てみたいんだよ!」


 ブチギレるアタイをなだめるようにゴブリン村長は言った。


「諦めろゴブ子。我々ゴブリンはこの集落からは出られんのじゃ。『はじまりの村』から出てすぐの細道、『そよ風街道』の外へはな」

「ひよってんのかい村長!」

「試さずとも結果はわかりきっておる。我々はゴブリンだぞ」


 ゴブリン……。

 それはあらゆる魔物の中で最弱に位置づけられる不遇なモンスター。


 一般に勇者は敵を倒して経験値を得るごとにレベルアップして強くなる。

 MAXのレベルは99。

 それはこの世界を牛耳る魔王に拮抗する強さとされる。

 それに対して魔王の配下にあるアタイらモンスターには生まれながらに『固定レベル』が決まっている。

 いくら経験値を得たとしても定められたレベル以上には上がれないのだ。


「我らのレベルは2止まり。集落の外にはそれ以上のレベルの魔物がわんさかおる。話の通じない凶暴なモンスターは誰彼構わず襲うからな。ゴブリンはいい餌食だ」

「どうしてアタイらのレベルはたったの2なんだよ!」

「魔王様が決めたことじゃ。我らは新規勇者のチュートリアル戦で倒されるためだけに配置された哀しきモブ敵。それが定めじゃ」


「クソがーっ!」


 アタイは集落を飛び出した。



~そよ風街道(探索推奨レベル1)~


 低級ザコモンスターのゴブリンが自由に往来できるのは『ゴブリン集落』と『はじまりの村』とを結ぶ街道の1キロ圏内のみ。

 それは冒険マップに記された広大な面積のほんの1%にも満たない。


 最序盤となるこのフィールドを越えた先にはギルドやレイド、期間限定クエストといったコンテンツが目白押しだというウワサだ。

 なのにアタイらときたら、そうしたアドベンチャーの醍醐味が解放される前までの展開しか知るすべがないのだ。


「生まれる種族を間違えたわ! せめてホブゴブリンならレベル10までいけるのに!」


 こうして自分の運命を呪うことがもう長いことアタイの日課になっている。


「大体チュートリアル用のモンスターってなんだよ! わざわざ勇者に塩持たせるようなことしやがってよお! バハムート初期配置しとけば終わるだろうがよ!」


 もっぱらアタイの怒りの矛先は魔王だ。

 あいつ沸いてんじゃねえのか? マゾか?

 奴の気まぐれに見せる勇者デレに振り回されるのはいつだってアタイら下級モンスターだ。


 街道沿いにあばら小屋を建てて暮らし、新たな勇者が通りがかるたびに恐怖に怯える日々。

 こんな生活もう耐えられない!


 アタイは高速で舌打ちをしながら街道を逸れた小森を歩いていた。

 無邪気に駆け回る野ウサギや小鳥たちにガンくれてやりながらね。


「なに見てんだよ! 見せもんじゃねーぞ!」


 頭上に響く小鳥たちのさえずりがまるで無様な境遇のアタイをあざ笑ってるようだった。



 そのとき、なんの前触れもなくそれは起こった。

 まばゆい光が目の前に現れてアタイの視界を奪ったのだ――――!


 パアァァァァァァ!


「な、なんじゃこりゃあ……!」


 ――――光が収まると、目の前にはどこからともなく出現した青年がいた。


 ピキーン……!

 アタイの体にスピリチュアルな感覚が駆け巡る。


 スゴイ……なんなの……?

 もしかしてこれが運命の出会いってやつ……!?


「え……? ここはどこ? え、僕は誰?」


 男はよれたジャージにボサボサ髪。

 顔面の半分を覆うモサい黒ぶちメガネをかけて、顔つきには締まりがなく口は半開き。

 病的なほどの猫背で辺りをキョロキョロ見回している。

 見るからにみすぼらしかった。


「そうか……。僕は交通事故で死んだんだ……。そして生まれ変わった! 大好きなファンタジーの異世界に転生したんだ!」


 一人で合点がいったようにはしゃぎはじめた男を見て、なんか冷めたしイラっとした。


「うるっせえぞコラァ!」

「ヒイ!」

「さっきから一人でゴチャゴチャと! アタイが置いてきぼりだろうがよ!」

「す、すんません!」


 話を聞くと、男の名は浜田シブ夫。

 違う世界でニート?をしながら生きていたらしく、事故に遭ってここに転生したらしい。

 なんのこっちゃ。


「あんた人間だろう。勇者か?」

「おそらく、そういう流れだと思います……。ここはどこですか?」

「『はじまりの村』と『ゴブリン集落』の中間くらいの林の中」

「ははあ……。どうやら転生の影響でスポーン地点が少しずれたようですね」


 スポーンだかスッポンだか知らねえけどよお!

 アタイはシブ夫の博識ぶった喋り方が癇に障った。


 そこでアタイははたと気付く。

 こいつ、『はじまりの村』を経由してないんなら最低限の装備すら揃ってない丸腰じゃないか。

 しかもレベル1……。


 アタイよりも弱いはずだ!


「ほあたぁー!」


 繰り出されたアタイの鉄拳はシブ夫のみぞおちにクリティカルヒットした!


「ぶべらぁ!」


 特徴的な悲鳴を上げてうずくまるシブ夫。

 ザマア見やがれ!


「どうしていきなり殴るんですか……!?」

「あんた個人に恨みは無いが、アタイらは勇者ってのに散々な目に遭わされててねえ……。仲間が何人も病院送りにされてんだよ!」


 ドカッ! バキッ! ぶべらっ!


挿絵(By みてみん)


「思ったとおり! チュートリアルイベントすら発生してないから戦闘コマンドもまともに扱えないみたいだねえ! アタイのダメージも有効なようだ!」

「もうやめて!」

「うるせえ! もう一度転生しちまえ!」


 一方的な殴る蹴るの乱れ打ち。

 それがどれだけ続いただろうか。

 いつしかシブ夫は気を失っていた。


 いやあ、弱者をいたぶるってのは快感ですなあ!

 ホクホク顔のアタイ。


 ふと気づくと横たわるシブ夫の脇になにやら見慣れないモノが落ちていた。


「手のひらサイズの平べったい箱……?」


 それを拾い上げたとき、指がスイッチに触れたらしい。

 パッと液晶画面が光り輝いた。


「なんだコレ……!?」


 流れ出す騒がしい電子音と画面に浮かび上がる文字。


【ガチャを回してみよう! 初回ボーナスで単発ガチャ1回無料!】


 ガチャ?

 はて、ガチャとは一体……?




 つ・づ・く


★★★★★★★★


 次回予告!


 ひょんなことから無抵抗の新参勇者をフルボッコにしてしまった自由奔放なアタイ!

 だけど困ったゾ!

 こいつの持ってた見慣れない電子機器、スマートフォンっていうらしいんだけど……!?

 使いこなすにはもっと情報が必要みたい!

 よーし、いっちょやったるか!


【第2話 ゴブリンガールは拷問する!】

 ぜってぇ見てくれよな!



挿絵(By みてみん)


 読んでいただきありがとうございます!

 Twitterでも活動中!

 「ゴブリンガール」検索でヒットします。

 https://twitter.com/GoblinGirlGacha

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― 新着の感想 ―
[良い点] 小説を読んでるはずなのに、まるでギャグ漫画を読んでいるような………それくらいに、挿絵のクオリティも高いです! 挿絵を脇役ではなく、主役に近い形で使うというのは………なかなか革命的な作品だ…
[気になる点] レベル2ってのが悲しい定めゴブ…… 無料ガチャに全ての望みをかけるゴブ、ゴブ子ッ! [一言] 我々はゴブリンだぞ!
[良い点] 既成概念を初っ端から色々壊してて、「面白い」の一言です。 キャラ、呟きの方で見てはいましたが個性がありまくりで、こちらも素晴らしいです(*^^*) [一言] 頑張ってください~応援し…
2022/04/03 10:36 退会済み
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