第181話 ゴブリンガールは王様と出会う!
よくわかる!
これまでの簡単あらすじ――☆彡
王国マデランは100年前に転生勇者ゴン太の力を借りて危機を乗り切ったことがあったという。
その出来事もあり、現代の王はゴン太の再来と目されるシブ夫を国に迎え入れようとしていた。
アタイたちは雇われ変態騎士のオズワルドの妨害を受けつつも、ついに王都へと乗り込む。
そしてかつてゴン太の残した暗号『QRコード』を見事読み解き、またひとつ謎を明らかにしたのだったが、そこでやっと王様とのお目通しタイムに至ったのだ。
あらすじ終わり――☆彡
謁見の間に通されたアタイたち。
体育館数個分に相当する吹き抜けの広間は美しい大理石でできており、上を向けばゴージャスなシャンデリア、下を向けばフカフカのレッドカーペット。
その厳かな空気にアタイは居心地が悪くって仕方ない。
ていうかなんでレベル2のゴブリンが王の間にいるの。
今さらだけどこのお話ってめちゃくちゃすぎひん?
まあでもどこで間違ったのかと思い返してみると、もう冒頭から狂ってたとしか思えないけどね。
広間には兵士や代官らがズラリとならんで重々しい沈黙を保っている。
だがしかし、肝心の王様らしき男の姿はどこにも見えない。
その代わりに、玉座には頭に冠を乗せた幼い女児がちょこんと座っていた。
「おうこらクソガキ。どこから迷い込んだんだい。身をわきまえないと首をはねられちまうよ?」
アタイは善意で声を掛けてやった。
イタズラ盛りのガキはどんな場所にでも忍び込みたがるものだが、限度ってものはあるからね。
打ち首にならない内にさっさとお母ちゃんの所に帰んな。
女児に向けてシッシと手で払う仕草をするアタイ。
だがそれを見て周りの男たちが一様に顔を青くした。
「貴様!」
「その非礼、万死に値する!」
兵士たちが一斉に槍をアタイへ突きつける。
ヒイイ!?
アタイが何したっていうの!
「よい。控えよ」
女児の冷ややかな一言を合図に、兵士たちはハハッと頭を下げてアタイから引き下がった。
「余がマデラン王国の領王、ユーリ・アン・パンドールである」
「ええ!?」
隣のオズワルドが咳ばらいをして説明してくれた。
「先代の王が不慮の病によって突然に亡くなられてな。つい昨年のことだ。その後はご息女であるユーリアン様が王位をお継ぎになった」
「ちょっと待ちな!」
「血筋だとか、いろいろなしがらみはあるんでしょうが……」
「それにしたって若すぎだよなぁ。ユーリちゃんは何歳なの?」
「6歳になられる」
ギリ就学児!
ホイ卒(保育園卒)で王に就任とか、こいつの履歴書ロイヤリティーすぎだろ!
ユーリアンは椅子に深く座って手元のワイングラスを掲げた。
すると側近の老代官がピッチャーから暗赤色の液体を注ぐ。
それをチビリと飲んで満足気な顔をする幼女王。
「安ずるな。ぶどうジュースである」
まだお酒飲めないもんね!
かわゆい!
モリ助がフィギュアスケーターのごとき優雅なターンでお辞儀を決める。
「わたくしめは転生者の村井モリ助。あなた様とお国のために喜んでこの身を捧げる所存。ぜひお婿さん候補として検討してみてね☆」
などと言いひんしゅくを買った。
ユーリアンは普通にモリ助をシカトして、
「よくぞ我が国へ参られた、異端の勇者とその付き人たちよ。到着してからのわずかな間にゴン太殿の残した暗号を解いたと聞いた。詳しく話してもらえるか」
その威厳ある物言いは目の前のガキから発せられているとは思えないほど貫禄に満ちている。
確かに話を聞く限り、名ばかりの王ではなく責務を全うする人望厚い君主ではあるらしいけど……。
アタイがあんたくらいの年の頃はでんぐり返しや縄跳びしてるだけで一日が終わってたけどねえ。
生まれが違えばここまで育ちも変わるもんかと感心しちまうよ。
ユーリアンの問いにシブ夫が答えようとしたが、それを遮ってオズワルドが一歩前に出た。
「件の暗号は『QRコード』といい、魔物に関する膨大な知識が記されておりました。それを保存管理する機能こそがゴン太殿の有していたチート能力」
「ふむ。異世界の錯誤物『スマホ』が解析のための鍵であったか」
「ハッ。このオズワルドの閃きと勇者たちの協力の賜物であります」
「よくぞ長年にわたる謎を解き明かした。褒めてつかわす」
「ありがたきお言葉!」
こらてめえケツ顎!
何食わぬ顔で自分の手柄みたいに報告してんじゃないよ!
油断も隙もない奴だね!
アタイは舌打ちしながらオズワルドを睨みつけてやったが、シブ夫はそれを気に留めることもなく深々と頭を下げて発言した。
「コードの中身を紙面に書き出せば有益な資料となるでしょう。ぜひ貴国のためにお役立てください。ですがゴン太の能力の最大の強みは、スマホを活用して場所を選ばず必要な情報をすぐに取り出せる点です」
「把握した。コードが記された巻物はお前たちに譲ろう。好きに使うがよい」
「ありがとうございます」
若き領王の前にひざまずき、再び頭を下げるシブ夫。
だがユーリアンは眼光を鋭くして言葉を続けた。
「ただし条件がある。浜田シブ夫。そなたの力を貸してもらいたいのだ」
「……具体的には、何をすれば?」
「我が国はいずれ雇用した勇者のみからなる新生騎士団を編成するつもりだ。そなたをその中核としたい」
新生騎士団!?
そんな仰々しいもんを作って何をおっぱじめるつもりだい!
「魔王討伐か、他国と戦争をするための兵団でしょうか?」
「否。純粋な領国防衛のための組織である」
「現状でも軍備は十分だと思いますが。国土全域を囲う長壁もあります。それに差し迫った脅威があるわけでもないのでしょう」
「それは違うな。マデランは常に危険と隣り合わせにある。遥か昔から、今この一瞬のあいだにも……」
――――話の途中で突然警報が鳴り響いた。
城内の監視塔に取り付けられている鐘がゴウンゴウンと音を上げているのだ。
伝令兵が大慌てで王の間に駆け込んでくる。
「大変です! 凶暴なグリフォンが再び領空に現れました!」
グリフォン!?
ってあの、ファンタジーもの御用達の大ワシのモンスター?
おいおい、あんなのと小競り合いしてんのかいこの国の連中は!
勘弁してよ(泣)
アタイたちのあいだに緊張が走る!
つ・づ・く
★★★★★★★★
次回予告!
のっけからヤバめの魔獣戦とかふざけんじゃないよメインクエスト!
重いんだよ!
シブ夫ならなんとか撃退できそうだけど、それをやるとますます王様に期待を寄せられちまいそうだし……。
めんどくさいったらありゃしないね!
【第182話 ゴブリンガールは王都防衛する!】
ぜってぇ見てくれよな!




