表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ゴブリンガールはガチャを引く!  作者: 仲良しおじさん
メインクエスト【課金地獄に落ちる!】編
12/251

第11話 ゴブリンガールは生贄に捧げられる!

挿絵(By みてみん)



 『ショートレッグス』を名乗るドワーフのギャング団。

 そのカシラを務めてるのはドンフーという男。

 パイナップルの葉っぱみたいなフザけた髪型が目印だ。


 こいつの指示でアタイとジョニーは手足を縛られ目隠しをされて荷馬車に放り込まれた。

 そのまま5~6人のドワーフたちも荷台に乗り込み、中はむせ返るような息苦しさになった。


「アタイらをどこに連れてく気ですか……?」

「見逃してくだせえ。ほんの出来心だったんです」

「出来心で銀行を襲いエルフを電気攻めにしたってのか? それが本当なら正気じゃねえな」

「おっしゃる通り、アタイらはちょっぴり正気を失っただけの心優しいモンスターなんですぅ」

「お前らが何者かなんてどうでもいいんだよ。しでかしたことの落とし前をつけてもらうだけだ」


 ガタガタと荷馬車が揺れる。

 どうやら移動が始まったらしいが、行き先の見当なんて付くはずもない。


「エルフの野郎が鼻につくってのは分かるぜ。だが相手が悪かったな。エルフ中央銀行の守衛業は俺様ドンフーのシマだからよ」


 ドンフーは葉巻に火をつけたらしい。

 焦げ臭くて妙に甘ったるい香りが充満する。

 ドワーフの奴らが好んで吸うマンドラゴラの葉巻だね。

 まったく悪趣味な匂いだよ。


「ドワーフってのはチビでガサツで泥臭い種族だってのは世間一般のイメージだ。それが何世紀も前からこびりついちまってて、エルフが就けるような小綺麗な職なんぞ回って来やしねえ。俺らの出番は汚れ仕事のときだけよ」

「気持ちはわかります。アタイもゴブリンってだけで偏見の目で見られ……」

「ああん!? ゴブリンなんぞと一緒にすんじゃねえや! 喧嘩売ってんのか?」

「ヒエエ……!」

「あの銀行の金は俺らの金でもある。それを盗もうとしたんだ。本来なら臓器を抜き取るくらいするとこだが、残念ながらゴブリンの質の悪い肝臓なんぞは買い手が付かねえ。スケルトンにはそもそも内臓すら無えしな!」

「ふひひ、すんません……」

「だがそんなお前らにも役に立てる仕事がひとつだけある。着いたぞ、降りろ」


 荷馬車が止まり、アタイらは目隠しを外される。

 降り立ったのはなにやら陰気臭い洞窟の入り口。

 ドワーフどもに引っ張られ、アタイたちは薄暗い穴の中へと入っていく。



~ワイバーンの巣窟(探索推奨レベル53)~


「この洞穴は凶暴なワイバーンの巣だ。毎年この時期になると気性が荒くなって近くの村で暴れるんだとよ。それを治めるために村人たちは生贄を探してる」

「生贄!? それってまさか……!」

「察しがいいな。お前らのことだよ!」


 アタイとジョニーは泣き叫ぶ!


「あんまりだ! 人権侵害だ!」

「どうしてこんな危険な洞窟が放置されてんだよ! 魔獣退治は勇者の仕事でしょ!? あいつらサボりかましてんですか!」

「知っての通りここら一帯はまだ序盤のフィールド。対してこのクエストは難易度が頭一つ抜けて高いんだ。駆け出しの勇者はひとまず素通りしちまうが、中堅勇者に成長する頃にはずっと先のフィールドに進んじまってる。そういうワケで見逃されがちなクエストってのが所々にあるんだよ」

「だったら勇者の代わりにあんたらが退治してやってくださいよ!」

「ビジネスってのが分かってねえな。倒しちまえば一回分の報酬でおしまいだが、毎年生贄を調達すりゃその都度村から褒美が出る。それにお前らみたいな子悪党は掃いて捨てるほど現れるしな」


 こいつら、これでも血が通ってんのかい!?

 エルフほど冷酷な種族はいないと思ってたけど訂正するよ!

 人を人とも思わない、汚らわしい野蛮族のドワーフめ!


「ようし! 俺たちは引き上げるぞ! これでひと仕事完了だ!」

「待ってぇ! アタイらを置いてかないでえ!」


 泣きすがるアタイをドンフーが蹴り飛ばす。


「ジタバタすんなら手足を切り落としちまうぞ! そっちの方が翼竜の魔獣も喰らいつきやすいだろうしなあ!」

「ええい、泣き落としは通用しないみたいだね! こうなったらあんたらも道連れにしてやるよ!」


 アタイとジョニーはカバンに残っているガチャアイテムを手当たり次第に投げつける。

 といってもただのガラクタだ。

 当てたところで1ダメージも入らない。


「クッソ! ジョニー、何かマシなアイテムはないのかい!?」

「このクラッカーって武器には火薬が入ってるらしいぜ!」

「重火器のたぐいかい? 貸しな!」



~クラッカー(使用推奨レベル3)~

 円錐形の紙容器に取り付けられた紐を引くと、火薬が弾けて音が鳴るパーティーグッズ。

 紙吹雪が飛び出す華やかな演出は大盛り上がり間違いなし。



 アタイはクラッカーの先をドワーフたちに向けて紐をつまむ。


「動くな! 動くとこいつがドカンだよ!」

「バカか? そんな子供のオモチャみてえなもんで何する気だよ?」

「それはアタイにもわからない。わかる頃にはすべてが終わった後だよ!」


 アタイは勢いよく紐を引き抜いた!


 パァン!


 銃声に似た乾いた音が洞窟中に響く……!

 予想外の大きな音に驚き、皆が一斉に構えを取った。


 ……気付くと、アタイの手からは色とりどりの紙クズが噴射されていた。

 それはまるで吹雪のように飛び出し、ゆっくりと舞う花びらのように美しく空間を彩った。

 火薬の香りが鼻腔をくすぐり、わけもなく童心に返るようだった。


「キレイだね……」


 ほんの少しワガママを言うとしたら、今が何かを祝福する場であったなら良かったのにと思う。

 みんながニコニコと笑顔で、クラッカーを鳴らし合い、ロウソクに灯る火を吹き消す。

 そうしてホールケーキを切り分けて、シャンメリーを飲んで。

 そういう一日であれば良かったのになんて、そんなことを思ったんだ……。


「ゴルァア!」


 ドンフーはアタイとジョニーをどつき回した。


 ――――とそのとき、何かの異常が起きて洞窟全体に地響きが鳴った。


「この揺れは一体なんだ!?」

「ヤバいですぜボス! 今のクラッカーの音でワイバーンが目覚めたらしい!」


 ドワーフたちは一様に青ざめる。


「しくじったな! 起こしちまったか! 寝起きが悪いってんで有名だぜ、この洞窟の主はよお……!」




 つ・づ・く


★★★★★★★★


 次回予告!


 レベル53のワイバーンに手も足も出ないアタイたち!

 こうなったら封印されし禁じ手を使うしかない!

 そう、『ガチャ』を回すのさ!

 安心しな、この状況でこそ主人公補正ってやつの出番のはずだ!

 きっと奇跡が起きてSSRとかが出ちゃったりとかしちゃうんでしょう!?


【第12話 ゴブリンガールは運に見放される!】

 ぜってぇ見てくれよな!



挿絵(By みてみん)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ