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ゴブリンガールはガチャを引く!  作者: 仲良しおじさん
シーズンクエスト【雪合戦する!】編
110/251

第109話 ゴブリンガールはスノーガールと出会う!

挿絵(By みてみん)



~深雪の銀嶺(ぎんれい)ヨルドートル(探索推奨レベル55)~


 地面や木々をすっぽりと覆い隠すぶ厚い雪化粧。

 冬の到来がすべてを銀白色の世界へと塗り替えてしまったみたい。

 太陽の光をことさらに反射して目が眩むほどに輝いて見える。


 そんな広大な雪山の中をアタイたちお馴染み3人は途方に暮れながら歩いていた。

 山の麓から中腹に至るこの場所まで、どれだけの時間をがむしゃらに登り続けたのだろう。


 こんなに辛い思いをしている理由はただひとつ。

 おわかりの通り、クエストに参加するためだ。


「今回のは以前のトーナメント戦みたく、参加者全員で優勝を競い合うたぐいのクエストらしいけど……」

「ドンフーの旦那からはこの辺りにある山小屋を目指せと言われただけで、詳細は一切不明だぜ」

「いつもながら扱いが適当すぎるンだわ」


 気温は当然のように氷点下。

 底冷えするほどの冷気に足先だけでなく体中がかじかんでいる。

 あまりの過酷さに流した涙でさえもそのうちに凍りだした。


「目的地にたどり着く前に凍え死んじまうね! ええい、こなったらガチャを回すよ!」


 暖房グッズでも出てくれればまだ一抹の希望を抱けるからね!


「ああ、そう……」

「お好きに……」


 ジョニーとスラモンはもはやガチャに興味を失っているが、そんなのはいつものことだね!

 今に見ていな!

 今度こそは、今度こそはSSRだっ!


 アタイのタップで虹色に輝くスマホ。

 その光の中から現れたモノは……!?



~除湿剤(使用推奨レベル4)~

 水分を吸収する顆粒の入った袋状の生活用品。

 湿気の多いタンスやクローゼット、または食品類の保管場所に設置する。



 ……なんか、惜しい!

 見た目はどことなくカイロに近しく感じないこともないのに!

 生活消耗品というカテゴリも合ってるしね!

 でもこんな雪まみれの場所じゃあいくら除湿してもキリがないっての!


「………」


 ジョニーとスラモンはチラリと横目でクズアイテムを確認すると、そのまま無表情で歩を進める。

 ふん、こいつらも慣れてきたもんだねえ。


 そうこうしていると視界の先にポツンと佇む一件の山小屋が見えてきた。


「ついにたどり着いたね……」

「あれがクエストの受注場所か……」

「ていうかこれからクエストやるだけの体力残ってないンだわ……」


 まあしかし、小屋さえ見つけちまえば遭難&凍死という最悪の事態は避けられそうだよ。

 やっと人工物を見つけられたという嬉しさからアタイたちの歩くペースも自然に早まった。


 ――――と、そこでアタイは何かにつまずいて前のめりに転んでしまう。


「いってぇ!」


 誰だよこんなところに障害物を捨ててったのは!

 アタイは起き上がりざまに振り返る。

 そして足をかけた原因のものを目の当たりにし、思わず絶句した。


「ヒエッ……!?」


 なんとそこには目を閉じて横たわったまま、体の半分が雪に埋もれている女がいたのだ!


「ウワーッ!」

「し、しししし死体!」

「唐突なホラー!」


 どこぞの名探偵が活躍するアニメよりも急な展開だよ!?


「う~ん……」


 氷漬け女はまだ息があるらしく、か細い声でうめきを上げた。


「おいあんた! 無事かい? ちゃんと生きてんのか?」

「もう……ダメ……。すごく眠くって……」

「アカン! ここで眠るとアカンパターンのやつや!」


 アタイたちは女の頬をひっぱたきながら必死に声を掛ける。

 そして大慌てで体を掘り起こし、ヒーコラ騒ぎながらなんとか山小屋まで引きずっていった。


 小屋の中は簡素な造りだったが、幸いなことに中央に大きな暖炉があった。

 一刻も早く火を点けねばならない。

 でも薪やマッチがどこにしまってあるのかわからないね!


 いつまでもアタフタしているアタイたち3人を尻目に、女がヨロヨロと立ち上がった。


「ありがとう……。ここまで来ればもう大丈夫よ……」


 そう言って緩慢ながら慣れた手つきで戸棚から道具を取り出し、簡単に火を起こしてしまった。


「あれえ? あんた、この小屋の勝手がわかるみたいだね?」

「ええ。だって管理人だもの……」


 えっそうなん?


「おまけにシーズンクエストの発注主でもあるの……。はあ、眠たい……」


 この女がクエスト主!?

 なんだいなんだい、なんか予想してなかった展開だね!


 女はふわりと裾の広がったスカートと厚手のポンチョを身に着け、そこから覗く肌や髪の毛は色素が薄い。

 大きな瞳は瞼を半分ほど下げていて、依然として眠たげだ。

 そのどこか無機的な横顔は儚げな美少女という表現がしっくりくる。


「私はシャーノン。よろしくね……」

「まあ、よろしくだけどさあ」

「なんで管理人のあんたが小屋の外で死にかけてたんだ?」

「ああ、あれね……」


 ポンチョ女はあくび交じりに事の顛末を語る。


「辺鄙な山奥にずっと独りきり。クエストを発注しても誰も来る気配もないし、眠たくなってきたから、じゃあ冬眠でもしようかしらと……」

「冬眠て!」

「雪に埋もれて春までじっとしてようと思ったのに、掘った穴が浅かったみたいね……。ちょっと体がはみ出しちゃった……」


 はみ出しちゃった、なんて可愛らしい言葉で片付けようとしてんじゃないよ!

 アタイらにとってはトラウマ級の光景だったんだよ!


「というかわざわざ雪に潜らなくてもこの小屋で寝てればいいだろ!」

「あら、知らないのね……。雪の中って案外暖かいのよ……。断熱性に優れていて。それに小屋にいるなら休みなく薪をくべていないといけないじゃない。思いきり惰眠をむさぼれないわ……」


 火の番をするのも惜しんでまで眠りたいとは、なんとも無気力な女だね!


「ところであなたたち……。何をしにこんなところまで?」


 シャーノンは怪訝な表情でアタイたちを見比べる。


「あんたのクエストに参加するためだよ!」

「あら、そう……。今シーズン初のお客さんだわ……。まあ、詳しいことは明日にしましょう。私はもう眠るから……」


 そう言うと暖炉の前に横になり、秒で寝息を立て始めた。


 まだ寝るの!?

 人様を呼び込んどいてこの体たらく!

 こっちは命の恩人だってのにさ!

 こんな女の発注するクエストなんてアタイはもう不安しか感じないよ!




 つ・づ・く


★★★★★★★★


 次回予告!


 アタイたちに一歩遅れて続々と集結したクエスト参加者。

 でも結局どこかで見たことのある顔ぶれになっちまったよ!

 ひとまずこのメンツで明日まで時間を潰すことになったのだが……。

 シャーノンがこんな僻地に勇者たちを集めた理由、クエスト開催の目的ってなんなんだろう?

 そして徐々に気付き始める違和感……。

 この山小屋、何かがおかしい――!


【第110話 ゴブリンガールはサスペンスする!】

 真実はいつもひとつ!



挿絵(By みてみん)

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