33・目撃
街灯のない細い路地は、露天からの明かりで微かに見える程度で、気を付けて歩かないと転びそうになる。
「先輩・・本当にこっちですか?」
奥に行けば行くほど暗くなり不安になった。
「女と来ているんだろ?人目を避けるのは自然の流れじゃないか?」
フンっと鼻を鳴らしながら言うと歩く足を速めた。
「人目を避けて・・・何をするんですかね」
「・・ッふ」
(あ・・鼻で笑われた・・)
それから神社の裏手に出た。
そこは木々が生い茂り、人は見えない
ここに拓海がいるとは思えなかったが、もしかして・・と辺りを見渡すと
「いた・・」
ふいに先輩が小さな声で言うと俺の手を引っ張り木の影に隠れた。
「え?」
ドキッとして、その木に張り付く。
(どこ!?)
二人の姿を探そうとキョロキョロしていると
「あそこだ・・」
そう言って、指をさした。
先輩の指が差している方向を目を凝らしてみると
「あっ・・いた」
少し離れた暗闇に二人の姿が見えた。
薄暗かったが、月明かりが差し込み二人の顔が見える。
二人で向かい合って立っている様だが、ここからだと二人の会話が聞こえなかった。
「何・・しているんだろう・・」
「お前・・馬鹿か?男女がする事なんて決まってるだろ」
呆れた感じで眉を顰めていたけど・・でも・・・
「でも・・・そんな感じじゃない気がする・・」
二人は向かい合っているけど二人の間に距離を感じる。
拓海は胸の前で腕を組んでいる感じだし
「暗くて表情までは分からないけど・・」
「はあ・・涼平は、あいつらを見て、何をしたいんだ?」
「涼平先輩は、確認したいんじゃないですか?」
「・・・・・」
「拓海が本当に彼女の事が好きなのか・・とか」
俺の言葉に、先輩がハア・・と溜息をついた時
『だから・・俺は・・』
声を荒げた拓海の声が微かに聞こえた。
その声に緊張が走った。
「喧嘩・・かな・・」
「・・・・・」
二人は向かい合ったまま、会話をしているようだ。
彼女を見ると、今にも泣きだしそうな感じがした。
このまま見ているだけで大丈夫だろうか・・
(いや、出て行ったところで事情も知らない俺が何を言うんだよ・・)
どうすれば良いか、先輩を見ると、先輩の唇に笑みが浮かんだ。
「え?」
「面白くなって来たぞ・・」
そう言って二人の方を見ている。
「お・・面白くないですよ!何言って・・」
ムッと眉を顰めた時、違う声が聞こえてきた。
『へいへい・・なに泣かしちゃってんの~~』
『あ~あ・・大丈夫~?』
ギャハハと下品な笑い声が聞こえ、ドキッとした
見つからないように慎重に木陰から顔を出すと明らかにガラの悪そうな風貌の二人組の男が拓海たちに近づいて行っていた。
「ヤバイ・・先輩!」
拓海は勿論喧嘩なんかした事ないし・・絡まれて喧嘩吹っ掛けられたら大変だ。
「まあ、まだ様子を見よう」
そう言って手を伸ばし俺を制した。
「で・・でも・・」
『彼女、俺と遊ばない?楽しい事しようぜ~』
『あっちに良い感じの場所があるんだよね~・・ほら、行こうよ』
男が彼女の手を掴んだ時、拓海が咄嗟に間に入った。
「止めろよ!」
『ああ?なにいきがってんの?ウケんだけど~』
『女みてーな顔だな~』
ヒャッヒャと馬鹿にしたような声が聞こえ、俺の頭に血が上る。
「っくそ・・俺、いきます!」
こんなの黙って見てられるかよ!
「・・・・・」
何も言わない先輩を押しのけ木陰から飛び出した。
「ふざけんな・・俺達に構うな!」
拓海が声を荒げている。
『ああ?ボコボコにされてーか?』
男の声が低くなった。
「もう!煽るなよ・・」
相手の男は、どう見ても拓海より体格も背も大きかった。
喧嘩に勝てる気はしないから、とりあえず拓海と彼女の手を掴んでこの場を逃げよう。
そう思い、二人の方へ走った。
「止めろ!」
「や・・止めてください!」
彼女が泣きそうな声で言っている。
「おい!お前ら」
「拓海――――!!」
俺が叫ぼうとした時、後ろからさらに大きな声が響いた。
「え?」
驚いて振り返ると、こちらに凄い勢いで近づいてくる人影が見えた。
「あ・・佳弥?」
立ち止まった俺に拓海が気づき声を上げる。
『ああ?なんだ?』
そして、男も俺に気づき眉を顰め俺を睨んできた。
俺も睨み返してやっているとドタドタと走ってくる足音と共に
「お前ら――!俺の拓海に何しやがる――!!」
涼平先輩の声が辺りの木々に反射して夜空に響いた。




