26・願ってもない頼み事
「はいはい!入って~あ、親は仕事で帰るの遅いから大丈夫だよ」
「何か、緊張しますね・・」
まさか、自分が涼平先輩の部屋に呼ばれる日が来るなんて思いもしなかった。
(拓海は来た事あるのかな?)
靴を脱ぎ前をあるく先輩の背中を見た。
奥のドアの前で立ち止まった。
「ここ、俺の部屋~」
そう言ってドアを開けた。
ドキドキしながら部屋を覗き込んだ。
「あ・・綺麗ですね!」
想像よりも、散らかっていない部屋に思わず言ってしまった。
「ええ?綺麗かな~・・物は多いよ」
そう言ってベッドの縁に座った。
「いえ・・あ!キーボード!」
机の横にキーボードがあるのを見つけた。
「弾けないけどね」
「先輩、凄いですよ・・毎日拓海と朝練しているし・・あっ」
そこで自分がここに呼ばれた、きっかけを思い出した。
「拓海の事・・大丈夫ですか?」
「正直・・結構辛いけどね~・・」
眉を下げながらも笑みを浮かべた。
「俺にお願いって・・何ですか?」
「いやあ・・あのさ~言いにくいんだけどさ~」
今度は困ったように眉を顰めながら頭を掻いた。
「夏休みに入って、直ぐに夏祭りがあるの知ってるよね?」
「ああ・・はい、花火も上がるやつですよね?去年はバスケの遠征で行けなかったんですよ」
でも今年は、遠征も合宿もぶつかっていないようだから・・
「あ!そうだ!港希先輩を誘うって手も!!」
ハッとして顔を上げた。
「うん、それいい作戦だからさ・・そこに俺も付いてって言い?」
「え!?」
どういう事?と首を傾げた。
「拓海は、彼女と一緒に行くからさ・・」
「去年は、先輩と一緒に行ったんですか?」
「そうだよ・・」
そう言って、今度は悲しそうに笑った。
「一緒に行くのは良いですけど・・」
もし、二人に出くわしたら気まずいのではないだろうか
「いやあ・・往生際が悪いとは思うんだけどね・・・それに、俺が誘えば港希も来ると思うしさ」
「セ・・・先輩!!」
(願ってもないことじゃん!)
涼平先輩が一緒なら港希先輩も来てくれるだろう。
「是非お願いします!!」
「良かった・・二人の邪魔はしないように気を付けるからさ」
「邪魔なんてとんでもないですよ!先輩が一緒なら逆に心強いし!」
きっと、俺と二人きりの時より色々喋ってくれそうな気がする
「ああ・・夏休みに会える・・」
嬉しさに小さくガッツポーズをしていると
「圭弥君は・・気にならないのかい?」
「何がですか?」
「港希が好きなんだろ?港希が男である事は気にならないのかな~って思ってさ」
そう言って、目を伏せた。
「気にならないですよ・・だって好きになったものは仕方ないし・・」
拓海にも何度か聞かれたけど・・
「俺・・後悔はしたくないんですよね・・」
俺は、何もしないで諦めるような事はしたくなかった。
「・・港希が、君の気持ちを受け入れるかは分からないよ?」
「はい・・まだ、分からないです。だから、頑張るんですよ!」
港希先輩は俺の気持ちをまだ知らないし、その前に俺の事を何も知らない
勉強ができない事はバレちゃったけど・・
「男だからダメって言われたら・・それまでですけどね」
「まあ・・そこら辺は、大丈夫じゃないかな~・・彼も色々経験豊富だし」
「け・・経験豊富!?」
その言葉にドキッとした。
「先輩・・やっぱり港希先輩は・・その・・経験済みですよね?」
「そうだね~・・ハハ」
(あ・・なんか笑って誤魔化してる・・)
曖昧な返事をする涼平先輩に、内心溜息をついた。
「圭弥君は、素直で良い子だからさ~・・何か、色々心配だな~」
「ええ?それ、どういう意味ですか?」
「港希の日常知ったら、引きそうだもんな」
はあ・・と大きく溜息をついた。
「気になる事ばかり言わないでくれますか?」
「まあ、これは本人の口から聞いたほうが良いよね」
そう言って立ち上がると、両手を伸ばして背伸びをした後に俺を見て言った
「って事で、アルバム見る?」
「見ます!!」




