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片思いカンパネラ  作者: 小説/赤月 イラスト/かくりね
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10・ご褒美

 「はあ・・・眠い・・瞼が重い・・・眠い・・」

 「うん、目が開いてないね」

 朝練を終えて教室にきた拓海は机に両手で頬杖をして目を瞑る佳弥を見て笑った。

 「俺さ・・部活推薦だったから、受験の時は作文と面接だけだったんだよね・・」

 目を閉じながら言った。

 「へえ・・そうだったの?」

 この学校は部活にも力を入れているから、珍しい事では無い。

 「そう・・だから、こんなに勉強するの初めてなんだよ・・ふぁ~」

 大きな欠伸をしながら言うと

 「いや、それもどうかと思うけど・・」

 苦笑しながら佳弥の頬を人差し指で突いた。

 「うぐ・・痛い」

 「それで、どうなの、生徒会長との関係は」

 「え?」

 拓海の言葉にドキッとして目を開けた。

 目を細め口元に笑みを浮かべる拓海に、うっと息を飲む。

 「どうって・・勉強を教えてもらっているよ」

 「でも、勉強が目的じゃないだろ?本当の目的は生徒会長とお近づきになって・・」

 そこで言葉を止めて「あれ?」と首を傾げた。

 「お近づきになって、付き合うって事がゴール?」

 「いや、何言ってんだよ!」

 佳弥の顔が一気に赤くなった。

 「もう!痛いってば!」

 頬を突いたままの人差し指を振り払い椅子ごと後ろに下がった。

 「そりゃさ、そりゃ・・付き合いたいけどさ・・でも、先輩ともっと仲良くならないと無理じゃん?」

 「付き合いたい・・んだ」

 肩を竦めながらクスっと小さく笑った。

 「はあ・・そりゃ、好きだからさ・・やっぱり先輩の特別にはなりたいよ」

 窓の外に視線を向けながら言った。

 「特別か・・生徒会長は、佳弥に興味もってくれてる感じ?」

 拓海も窓の外に視線を向ける。

 いつもは、サッカー部が校庭で朝練をしているが試験前だから誰もいない。

 「いや・・呆れている感じだよ」

 肩を落としながら言うと、拓海に視線に戻しながら机に肘をついた。

 「俺の馬鹿さに、呆れているって言うか・・あ、でも呆れている顔もめっちゃカッコいいんだけどね!」

 「うん、その情報はいらない」

 小さく溜息をつく拓海に、聞いてくれよ・・と身を乗り出して話を続けた。

 「先輩が中学の時に使っていた参考書をくれたんだけど、それすらチンプンカンプンなんだよ~」

 泣きそうな顔になりながら言うと今度は頭を抱えて項垂れた。

 コロコロと表情を変える佳弥に苦笑すると、また小さく溜息をついた。

 「でも、70点取らないといけないんでしょ?」

 「うん・・マジ無理そう・・頑張ってはいるけど・・」

 泣きそうな声で言う佳弥に拓海は腕を組み暫く考え込んだ後、あ!声を上げた。

 「ねえ、これをチャンスに変えてみたらどうかな!」

 「え?」

 顔を上げると、拓海がニコッと笑みを浮かべた。

 「70点取れたら、ご褒美として休日デートしてもらうってのはどう?」

 思いもよらない提案に佳弥の表情が変わった。

 「その手があったか!」

 一気に目を輝かせた佳弥に拓海も頷く。

 「それなら、佳弥も頑張れるだろ?」

 「うん、それなら死ぬ気で頑張れる!流石拓海だよ!ありがとう!」

 手を伸ばし拓海の手を強く握りながら叫んだ。

 「佳弥・・声がデカいよ」

 耳を押えながら仰け反った。



 その日の放課後、さっそく港希に話をした。

 「先輩!今度のテストで英語が70点以上だったらご褒美として俺とデートしてくれませんか?」

 「・・・は?」

 佳弥の話を聞いた港希は目を見開いた。

 「何だって?」

 「だから、英語で70点以上取れたら俺とデートして欲しいです!」

 「・・・は?」

 同じことを言った佳弥に今度は眉を顰め凝視した。

 「・・デート?」

 「はい!あ・・デートって言うか、休日に先輩とお買い物・・的な・・」

 (いきなりデートなんて、警戒されちゃうよな・・)

 慌てて言い直した佳弥だったが、港希は眉を顰めたままだった。

 「俺と買い物?」

 「はい!先輩と、もっとお近づきになりたくてって事なんですけど・・」

 言いながら、何だか恥ずかしくなってきた。

 これじゃ、半分告白しているようなものじゃないか?いや、ほぼ告白?

 先輩に引かれるかも・・と急に不安になった。

 これは断わられるかもしれないと、下を向いた時、ップ・・と小さく笑う声が聞こえた。

 ハッとして顔を上げると

 「何を言いだすかと思えば・・」

 港希は肩を揺らして笑っていた。

 (笑ってる・・)

 その笑顔に佳弥の心臓が大きく脈打つ。


 そこで、改めて自覚する。



 (俺・・やっぱり好きだ・・)



 こんなに胸が苦しくなるほど誰かを好きになったのは初めてだった。



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