新たな契約
奴隷商の元に戻って気付く、嫁さんが実体化したままではマズイので。
「おーぃ、実体化解除しとかないとマズイんじゃね?会話も念話にしとこうか。」
そう声を掛けると実体化を解除して念話で返事が来た。
『そうしておかねばならないか、私を見たら驚かれるだろうしのぅ。』
嫁さんが俺を英雄にしたいらしいので設定をどうするのか問いかける。
『ところで嫁さんよ俺のこの世界での強さを設定しないとなぁどの程度まで力使って良いんだ?取り合えずこいつらに捕まる程度にしとくか?弱過ぎて涙出そうになるけど・・・』
『あ・・・忘れてた・・・。』
『オイオイ、俺が本気出したらこの星一瞬で掌握できるぞ。』
暫し黙っていた嫁さんが。
『婿殿は何でも出来るのであろう?今し方使い魔からの報告で父上殿がいつの間にか入れ替わっていたと言われたし、どうだろう陰で何をやってもバレなければ良し、敵との対立は常にギリギリで勝つのが良いと思う努力してる風に見えれば民衆を味方に付けられるであろう。』
『んなもんは洗脳すれば・・・』
『コラコラ!それこそ一瞬で掌握してしまうではないか婿殿には我の理想の婿殿であって欲しいのだ。』
『おお、なんかわかったような気がするよ厨二も驚く程の演技で頑張るか・・・』
そう言い右手に炎を纏わせながら。
『クッ!押さえろ俺の右手!』
『みたいな・・・?』
『・・・何だそれは?頭オカシイと思われるような言動も困るぞ。』
『ですよねぇ・・・その辺は控えるようにするよ。』
嫁さんの理想ってどんなだと考えてる時ふと疑問が浮かぶ。
『そういやぁ嫁さんの使い魔が親父が入れ替わってたのに良く気付いたなどうやったんだ?』
ダイソン君が下手打ったのか?そう考えてると。
『ああ、いつの間にか父上殿が死んでもおかしくないくらいに弱っているし急に饒舌に話し出したそうだ。』
・・・何となく状況が見えて来た・・・『あいつ等また笑いに走ってるな・・・』そう呟いて放って置く事にして話を切る。
『さてこいつらどうする?このまま起きるの待ってるのも面倒だし起こすか。』
『待て婿殿、今回の転生に従い新たなスキルと使命が与えられたはず、確認してはもらえぬかのぅ。』
そう言われてから気付く。
『そういやぁ前の天使が言ってたな、天界の願いを聞けって・・・それで嫁さんの所に送られたんだったな、嫁さんが超絶美人な俺好み過ぎて舞い上がってしまったしその上色々有り過ぎて忘れてた。』
そう言ってから自分のスキルを確認してみると新たなスキルが有ったので嫁さんに聞いてみる。
『星に願いをってスキルが有るんだが発動の仕方も条件も分からん、どういうスキルか知ってる?』
暫し間が空いてから嫁さんが唸りながら話し出した。
『我にも良く分からん、そのスキルは婿殿専用でオリジン様のオリジナルだと思う、婿殿はオリジン様と知り合いなのであろう?聞いてみた方が良いと思うぞ。』
ナルホドと思いながらオリジンに念話を飛ばす。
『オーイジジイ、聞こえる?まぁ聞こえねぇ訳ねぇだろうから聞くけど新しいスキルの使い方教えてくれ』
少し間を置いてからジジイの声が響く。
『あれ?対のスキルをペトラルカに与えたはずだが・・・あ奴忘れておるな・・・まぁペトラルカの対のスキルを発動させれば全てわかるぞい。』
聞いた事の無い名前に疑念がわく。
『ちょっ、ちょっと待て・・・ペトラルカって誰?』
『あ・・・ゴホン!メメントに・・・』
『遅い!!嫁さんの事か???』
『チッ、マズイのぉ聞かなかった事にしておいてくれ頼む。』
『貸し一つな、じゃあ後は嫁さんに聞いてみるよ。』
ジジイのウッカリ発言に対して対価を取りつけておく、そして嫁さんの名前に関しては嫁さんが自ら話すまで封印、それからスキルに関してはオリジンが言ってた事を嫁さんにたいして問いかける。
『ジジイが嫁さんと対となすスキルだから嫁さんが発動させれば嫁さんは即座に理解するはずって言ってたぞ。』
そう言ったら嫁さんが固まった・・・暫し待ってると再起動して頭を押さえながら溜息を吐きスキルについて話し出した。
『[魂の演武、終焉の禊]という二つで一つのスキルが私に与えられた・・・魂の演武は常に探知が発動したままで相手を見つけ出す、魂の演武の願いを叶えるのが婿殿の[星に願いを]だ・・・こちらに来て婿殿が奴隷商と会話してる間にアクティブ探知で契約が結ばれたのだ・・・終焉の禊は契約完了と共に魂が私の元に迎えられるのだが・・・契約された時には知らなかったが最初の契約者は婿殿の父君、義父様だった・・・。』
嫁さんの言葉が沁み込んで来る、会った事は無いがこの星においての父親だジワジワと怒りが湧いてくる。
『婿殿・・・。』
俺に呟くように声を掛けた嫁さんを見ると今にも泣きそうな悲しげな表情をしていた『何故』そう思った時俺自身の瞳から涙が零れ落ちて居る事に気付く・・・。
『どうして知らないはずの父親に対して涙が出るんだろう・・・。』
『婿殿はオリジン様から何も聞いてはおらんのだな・・・こちらで育った婿殿の器としての彼の魂は転生を繰り返した婿殿の世界の残滓を集めた魂、元は婿殿の魂だから入れ替わったのではないのだ『融合』させたのだ・・・今も魂の記憶は残っているその影響で悲しみを覚えたのだろう・・・。』
そう嫁さんに言われて思い出す。
「そうか・・・これが家族への思い、忘れていた感情か・・・ああ・・・ダメだ・・・悲しみ、苦しみ、怒りと憎しみ・・・全てが膨らんで破裂しそうだ・・・なぁ・・・俺の家族とそれに付随する全ての人間を助けたらこの星滅ぼして良いか?」
念話すら忘れて言葉にだして出来るはずが無い事を嫁さんに聞いた俺に嫁さんはゆっくりとこちらを向いて悲しみを湛えたままの瞳で精一杯の笑顔を向けていた、それを見た俺は。
「美人が台無しだな、世界一美人の嫁さんにそんな顔をさせる俺は最低な男だな・・・。」
そう呟いた俺に何か話しかけようとした嫁さんの動きが止まる。
「くっ、新たな契約?魂の演武は一度に一つのはずだが・・・関連者なら必ずしもそうでは無いのか・・・すまない婿殿新たな契約者が現れたのだが・・・今結ばれた契約者は婿殿の母君様・・・義母様だ・・・何という事、こんな残酷な事をする人間共なら私が星事滅ぼしても誰も困らないのでは・・・。」
嫁さんの言葉で心臓を鷲掴みにされたように息が出来なくなり胸元を抑えながら蹲る母親も生きていたが・・・契約する程苦しみを受けていた事が悲しくそしてそれに対し憤る・・・少しだけ落ち着きを取り戻し立ち上がる様子を見ていた嫁さんが俺に語り出す。
「婿殿、星に願いをを発動させるか?自分ではどうにも出来ぬと諦め色んな思いが膨らんで大いなる絶望を見た魂が反応するのだ、私が魂の演武で契約を交わした者の全ての願いと思いを婿殿の魂に刻むと発動する・・・それが『星に願いを』だ・・・どうする?選ぶのは婿殿だ。」
「契約するとかより『親の願い』は子供が叶えるものだろう?なら契約しなけりゃ親不孝になるじゃないか。」
そう空を仰ぎながら応えると『ならば』と嫁さんが俺の胸に手を当てて何かを呟き始めたが聞き取れないので静かに待つと・・・。
「契約者の魂に安寧を星に被害者の思いと願いを刻め!」
『星に願いを!』
「これが俺の両親の思い・・・か・・・。」
俺の胸に両親の思いと願いが刻まれた瞬間俺の頭に両親が生きて来た全ての思い出が入って来た・・・そして胸に刻まれた刻印を掻き毟る自分が居たのだった。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「グァァァッ!何だ!何が起こった!!胸が苦しい!!!」
星に願いをが発動しコウダイの胸に紋章が浮かび上がったのと時を同じくして複数の男女の魂に『神罰の紋章』が刻まれたのだった。