旦那様が焦る
嫁さんから突然の『親父の危機』発言に焦る。
『何それ!俺親父とか知らないけど助けなきゃマズいんじゃないの?』
『焦るでない婿殿、我の僕に死なせぬように指示を出しておる、それより意識の有る者が逃げ出そうとしておる・・・ってか皆泡を吹いてバタバタと・・・相変わらずの行いじゃの婿殿、何をした?』
『ん?あぁ面倒だから『王の威圧』を一瞬だけ発動した、普通に殺気飛ばしたらこいつ等即死しそうに弱そうだしな、じゃあ嫁さんの記憶消し飛ばすかな『記憶操作』っと全消しもつまらんな、アレ見た奴等だけトラウマにしとくか、それよりさぁ念話はもういらねぇだろう、念話だと声がイマイチ良くわからんし俺大好きな嫁さんの生声聞きたいし。』
「そ、そう言われては仕方が無いのう婿殿以外聞いてる者もおらんしな。」
やっぱりな、思った通り好きな男の押しに弱いんだろうなこの嫁さん、後はあの『死神スタイル』ヨイショと押しで何とかならんかグイグイ押してみるかと思いながら話しかける。
「ウオーッ!良い声!素晴らしいぞ!ホント惚れ直しそう!大好き!」
「そこまで褒められると恥ずかし過ぎて声が出せなくなりそうだぞ婿殿。」
「良いの良いの、俺が良いと思ってれば良いのさ、所で質問なんだが実体化するとなんで死神?他は無理なの?俺は普通に天使の時が一番なんだけどね。」
「ああ、あれか、こちらでの実体化には制約が有ってな我は黒翼の死天使だから死神の恰好しか許されておらなんだ、何せ生きとし生けるもの全ての御霊を司り、命の終焉を見届け刈り取る者じゃしな、天使の姿で首狩りをしてる姿はシュール過ぎるし、祈りの場の教会などからクレームの嵐になるしのぅ。」
そりゃ仕方が無いのかと納得しかけたが、ちょっとおかしいぞと思い聞いてみる。
「チョッと気になったんだが、死神の恰好は死天使全てか?他の恰好は許されないのか?」
「ん?死神の姿以外実体化が許されておらんのは我だけじゃ。」
チョッと待て、おかしいぞ何か有るなこれ押しに弱い嫁さんをもうチョッと突いてみるかと思い。
「待て、今の言葉の声の出し方が揺れていたぞ、何があったんだ俺は愛する嫁さんが俺に隠し事をしていない事を望む、何故俺の嫁さんだけが許されないのだ?」
俺は嫁さんとのイチャラブの為には全力で対処する意気込みだ。
「あまり婿殿に知られたく無いのじゃが、昔口説かれた者達の嫁共が嫉妬してのう、旦那を嗾けて制約させられてのう・・・仕方が無いのじゃ。」
「おおっ!見る目が有る奴も居たんだな、嫁さんの良さに気付くとは俺と友達になれそうだな、まぁ嫁さんがここに居るって事は断られたんだろうがな、結婚できなくてガッカリしただろうなぁ。」
「ち、違うのじゃ婿殿誤解を与えたようじゃ、言い寄られたのは愛人になれとか体だけとか・・・」
その瞬間嫁さんが声にならない悲鳴を上げた、俺はいつのまにか世界を崩壊させるほどの殺気を放ったらしい、ヤバイと思い自分で落ち着くのを待った、落ち着いてからも腹の底から湧き上がる怒りを抑えながら嫁さんに決定事項を話す。
「そいつら全て滅ぼしてやる。」
いまだ抑えきれない殺気が漏れ出るまま、天界に飛ぼうとした俺を嫁さんが止める。
「待ってくれ婿殿、無理に決まっているのに本当にやりそうで恐ろしいぞ!」
「何言ってんだ俺は本気だぞ、だいたい嫁さんは知らないだろうが俺はオリジンと飲み友達だぞ。」
「・・・ハ?・・・オリジン様?・・・エ?・・・それって神を創った・・・婿殿冗談じゃ・・・。」
「分かったならサクッと消し飛ばして来るよ、そうすりゃ制約も何も無かった事になるだろう。」
そう言って転移しようとしたらまたまた止められた。
「もう仕方が無い、二日程時間を貰おう、我が行って何とかしてくる、婿殿とオリジン様の話とか言っても良いのであろう。」
「おぅ、ドンドン使え恐れ戦けと俺が言っていたと伝え忘れるなよ、そして無事帰って来てくれよでないと俺が絶望の余りに世界を滅ぼしてしまうからな。」
俺は素晴らしいエールと共に奥様を送り出し、暫し座り込んで周りを見て奴隷商の取引用に使っているこの場所と周辺を探る『街から街道を三キロくらいか』と思いながら今後を考える、そしてとっくに昼を過ぎて腹が減ってる事に気付き食い物を探す。
『あ!ヤベェ、一瞬だけだったが殺気が強かったか?皆殺しになってるな人もいくらか居るし。』
ここの奴らは後半日以上目を覚まさないし暫し離れても良いと思い飛んだ、少しだけ興味も有ったしな何せ死んでない奴が気になったし、では取り合えず周囲に転がってる死体に『蘇生』魔法をかけその後生きてた奴とのご対面、馬車の中には若い女と床に『身代わり人形』が壊れて落ちていた。
『何だ詰まらん。』
馬が居ないと大変そうだなと思い、馬にも蘇生魔法をかけようとして『四頭立てだとぅ贅沢な』三頭だけ蘇生させて一頭はそのままにして蘇生しなかった馬と一緒に転移で街近くの草原に飛び。
『やっぱり街を守る外壁にはそれなりの結界がかけてあったんだな、俺のせいでの死人は出ていないようだし。』
草原の側の川に血が流れるように上に馬を浮かべ血抜きを始める、時間も有るしどうするかと思い、この星で俺が英雄になる事を嫁さんが望んでいた事を思い出した。
『嫁さんが戻るまでに何が有っても良いように準備しとくか。』
そう思ったからには急ぎで必要なモノを準備し始めようとしてどこまでやって良いんだ?と思い爺さんに呼びかける。
『暇潰しにどうせ聞いてるんだろう?この星で色々やらなきゃならんらしいが、どこまでやって良いんだ?』
『サスガ良く分かっておる、神達の尻拭いなんだから星の改変だろうと許そう消されるより良いし、とにかく消し飛ばさん限りは何でも有で良いぞ面白そうじゃしな。』
『おおっ、そこまで許してくれるなら俺の宇宙船呼んで良いのか?』
『あれか?ミニ太陽の?』
『そうそう、あれちゃんと俺の科学技術で造った宇宙船で外郭形成してるから隙間も無いし隠蔽も完璧だ、まぁこの星よりデカイのが笑えるがこの星の近くに呼び寄せとくと色々と便利だ。』
『それこそ面白そうじゃ好きなだけやるが良い。』
『あ、話変わるけど俺の嫁さんが神共に制約を掛けられてたらしくて、俺が消し飛ばしに行こうとしたら自分で何とかするって言い出してな、何かあったら護ってくれ。』
『承知しておる。』
全てに了解を得てからダイソン球・・・おっと間違い、ダイソン君に呼びかけるのだった。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「ええぃ!お前達は何をしておる!命の恩人でもあるというに見失うとは情けない!探せ絶対に探し出せ!」
あれだけの色男を見逃すなど有り得ないと声を荒げる。
「し、しかし姫様我等も蘇生してすぐでしたし姫様の安否確認が最優先でしたし、しかもあの男・・・。」
「何じゃ!何か有るのか騎士団長、ふん!何者でも構わぬ!急ぎ探し出し我の前に連れてまいれ!命令じゃ!」
馬車から顔を出して喚き散らす女の声が遠くまで響いていた。