めぐる季節と逆さまの虹
楽しい時間はあっという間に過ぎ、また別れの秋がやってきました。
リスさんは「もういじわるしないよ」と言って虹色のタネを渡します。
それを受け取ってコマドリさんはちょっと申し訳なさそうにしています。
「ボクはみんなに謝らなくちゃいけないことがあるんだ」
コマドリさんが話を切り出します。
なんのことかわからず、森のどうぶつたちは互いに顔を見合わせます。
「実を言うと、みんなに「虹色のタネを拾いにこの森に来ている」って言ってたけど、あれはウソだったんだ」
その言葉に森のどうぶつたちは驚きます。
「ボクはヘタクソなボクの歌を褒めてくれるみんなに、歌を褒めてもらうために毎年やって来てたんだ。ただの自己満足のためだったんだんだよ」
手渡された虹色のタネに視線を落としてコマドリさんが告白します。
「だから去年、タネがなくなっても困っていなかったんだ。なのでリスさん、去年のいたずらのことを気にする必要はないよ」
下を向いたまま、コマドリさんは言葉を続けます。
「ずっとウソをついていて、ごめんね」
消え入りそうな声で言って、森のどうぶつ達に背中を向けました。
「さようなら」
そう言って、コマドリさんは羽を広げます。
「ねえ、来年も一緒に歌おうね!」
飛び立とうとしているコマドリさんの背中に、リスさんが声をかけます。
その言葉に驚いて、コマドリさんの羽が止まります。
「いまはヘタクソだけど、来年に会う時はもっと上手くなってるからさ」
これはアライグマさんの声だ。
「どうして? ボクは自分の自己満足のためだけにここに来てたんだよ。ボクはみんなからもらってばかりだった」
背中を向けたまま、コマドリさんが言います。
「ワタシたちもコマドリさんからいっぱいもらってましたよ。毎年きれいな歌を聞かせてもらっていましたし、今年なんてワタシ達のための歌のプレゼントをもらいました」
キツネさんの優しい声。
「ボクたちのために、素晴らしい歌を作ってくれてありがとう」
リスさんが言うと、森のどうぶつたちみんなが口を揃えて「ありがとう!」と言った。
コマドリさんは黙って羽ばたき始めます。
みんなの言葉が嬉しくて、目から涙が溢れて言葉が出せませんでした。
「来年はもっと難しい歌をつくってくるから、みんな練習しておいてね!」
泣いているのを気づかれないように、飛び立つ瞬間に大きな声で言いました。
「うん! いっぱい練習しとくね!」
森のどうぶつたちの声を背に、コマドリさんは南の空へ飛んで行きました。
☆☆☆
冷たい風が吹く冬。
灰色の雲が空を覆い、今にも雪が降り出しそうなそんな日に、森のどうぶつ達は「ドングリの池」の前に集まっていました。
どうぶつ達の手には、それぞれ一粒ずつのドングリがありました。
リスさんの手元には、一番綺麗なドングリが
キツネさんの手元には、一番美味しそうなドングリが
アライグマさんの手元には、一番大きなドングリが
クマさんの手元には、一番丸いドングリが
雪が降る前にみんなで願い事をしようと、集まったのです。
どうぶつ達の願い事はみんな同じでした。
「「「「もっと歌がうまくなりますように!」」」」
そう言って、どうぶつ達はドングリを池に投げ入れました。
さてさて、今年のどうぶつ達の願い事はかなうのでしょうか?
☆☆☆
春がやってきました。
去年は初めての歌作りに遅くなってしまったので、早めに出発したコマドリさん。
はるか遠くの逆さまになった虹を目指して飛んでいます。
また森のどうぶつ達と会えると思うと楽しみで仕方ありません。
森の近くまで来た時、風に乗って小さな音が聞こえてきました。
コマドリさんは目を閉じて、その音に耳を傾けます。
それは去年おしえた、どうぶつ達の歌でした。
どうぶつ達はコマドリさんの到着が待ちきれなくて歌い始めたようです。
ピィ ピィピィ ピィ ピィ ピィ♪
かすかに聞こえる歌声に合わせてコマドリさんも歌います。
もう虹を見なくても、目を閉じたままでも森の位置がわかります。
ピィ ピィピィ ピィ ピィ ピィ♪
だんだん近くなる歌声に、コマドリさんの声も大きくなります。
あと少しでみんなに会える。
コマドリさんはつぶっていた目を開きます。
そこには逆さまな虹
それはまるでどうぶつ達の歌を聴いて、空が微笑んでいるかのようでした。
おしまい。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。




