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男装ホストの異世界旅行記  作者: エルモ
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57話 元王子の困窮

「イサギ殿、やはり今からでも俺は外で野宿を」

「テメェいい加減にしねぇと意識沈めて寝かせんぞゴラ」



 心配されている筈なのにそんな気配を感じられない程暴力的だ…。


 俺、バルトロメウス…いやバルトロは今窮地に立たされている。

 たまたま助けた妊婦の居る村に泊まることになったのだが、そこまでは何ら問題無い。問題なのは泊まる部屋だ。

 何でも村長の息子夫婦が寝ていた部屋らしいのだが、夫婦はパイザの街に働きに出た為今は空き部屋になっている。ベッドがそのまま置いてあったのでそれを使ってほしいと言われたのだが…これは駄目だ。元々夫婦で寝ていた部屋と言うだけでも気まずいのに、2人寝れる大きさのベッドが1つでそこに俺とイサギ殿が寝るのは更に気まずい。



「しかし、俺は男でイサギ殿は女性だ。未婚の男女が同じベッドで寝るなんてとても…」

「村長がわざわざ用意してくれたんだから有難く使うのが礼儀だろう。そもそもお前、俺に欲情出来るのか?」

「よくッ!?な、何を!?」

「え、そこまで狼狽えることか…?」



 いきなり何を言い出すのかと思えば、女性とは思えない発言だッ!

 いや、分かり易く動揺した俺にも非がある…。だが、イサギ殿の口から"欲情"なんて単語が出たら驚くのは仕方がないことだろう。俺から言わせれば狼狽えないと思っているイサギ殿の方がおかしい。


 イサギ殿は口が悪い為分かり辛いが、優しく人情味溢れる人だ。怪我を治してもらって全快の俺を何度も気遣ってくれたし、従魔にも愛情をもって接している。妊婦の件だって負担を最小限にした上看病の手伝いも率先してやっていた。その行動に迷いはなく、常日頃から人を助けることに躊躇いを見せない人なのだと俺は新たに知った。


 だからだろうか、イサギ殿が輝いて見えて仕方がないのは…。



「イサギ殿ッ、そのような発言は出来れば控えて頂きたい…!」

「不快か?それなら謝るが」

「いや、そうではなく…」

「?」



 まるで何も分かっていないのか首を傾げるイサギ殿に頭が痛くなる。


 今は男装しているが、それでも俺はイサギ殿を1人の女性として十分魅力ある方だと思っている。

 中性的な顔立ちは独特の雰囲気があり、他に埋もれない稀少な存在だと言える。普段の言動は荒いが、ふとした時の仕草や表情に品があるのも俺は綺麗だと感じた。特に伏し目がちの表情をされた時は正直どぎまぎしている。例え女だと知らなくてもあの色気を前にすれば男は皆生唾を飲み込むことだろう。

 デュラン・ユニコーンに乗っていた時、仕方なく腰に腕を回した時はその細さに衝撃が走った。足や腕だって一般的な女性に比べれば硬いのかもしれないが、俺から見れば十分柔らかく女性らしい身体だった。…身体についてはこれ以上考えないようにしよう。


 兎に角、イサギ殿を女性と意識する要素は十分にある。それなのに一緒のベッドで寝るなど騎士としてあるまじき行為だ。無論、変な気を起こすつもりは毛頭ないが。



「…やはり村長に事情を話そう。きっと理解してくれる筈だ」

「理解されようがされなかろうが俺はどうでもいいが、この先の旅で俺と同衾する機会は割とあると思うぞ」

「…はッ!?」

「いや、旅先の宿で別々に部屋を取れるとは限らねぇだろ。そうなりゃ男装している俺と男のお前を1つの部屋に押し込まれるなんて容易に想像出来るわ」

「し、しかしだな…」

「そんなに嫌なら結界張ってやるから安心しろ、男襲う趣味はねぇから」

「~~~~ッ、…………分かった…」



 もう何も言うまい…。イサギ殿から見れば俺はただの旅の同行者にすぎないのだから…。ここまで言われたのだから気にしない方がイサギ殿の為になると考えるしかない。そう考えないとやっていられないのだ。


 議論の末あっけなく惨敗した俺はベッドの端に座って重い溜息を吐く。イサギ殿と旅をしてから溜息の重さが段違いになったのは気の所為だろうか?

 従魔のベビー・フェニックス…アリヴィンを抱いてベッドに寝転がるイサギ殿は何かを思い出したのか小さく「あ」と零した。



「?」

「別にバルトロに魅力がねぇとかじゃねぇからな。寧ろお前、俺の知る男の中ではかなりイイ男だから」

「……え?」

「頭良いし気が利くしガーティ達にも理解あるし…バルトロは一緒に居て嫌だと思うことがねぇから、一緒のベッドで寝るとか抵抗ねぇんだよな」

「イ…イサギ殿?」

「それとその"殿"ってのやめろ。お前は今は団長じゃねぇし、俺もそんな偉い存在じゃねぇんだから。俺とお前は対等でいいんだよ」



 そう言って寝ているアリヴィンの頭を撫でて微笑むイサギ殿の顔は本当に綺麗で…ここがベッドなのを都合良く解釈してしまう前に顔を逸らす。


 見られてはいけない、意識してはいけない、気付かれてはいけない。



「………参ったな…」

「あ?何か言ったか?」

「何でもない…」



 この熱の意味を、俺は気付かぬ振りをして見過ごすのだった。

恋愛要素入れてみました。いかがでしょうか…?

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