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男装ホストの異世界旅行記  作者: エルモ
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55話 また上がった

 ゴブリンの集落を爆破するのは諦めたが、もう1つの討伐依頼にあったウォーグと呼ばれるデカい狼の魔獣を探さないといけない。

 薬草の方は鮮度が良ければいつでも買い取りすると聞いたので俺の収納スキルにしまっておく。これで劣化の心配はない。


 休憩は俺もバルトロもそこまで腹が減っていないので、簡単でザーフィァが満足するだろうポトフを作った。グレートスプリングラビットを入れるとまた旨味が出て身体に沁み渡る。

 アリヴィンに肉はまだ早いと思い、小さくしたジャガイモだけ食べさせてみた。意外とモリモリ食べるので本人が満足するまであげてから寝かせた。こんだけ食えればすぐにデカくなるだろう。

 バルトロは体格に見合う量を食べるので作る側としては見ていて気持ちが良い。そんなバルトロに食後の紅茶を淹れていると、依頼にあるウォーグについて話し始めた。



「ウォーグは基本森の中に生息しているが、ひょっとしたらトロールを恐れて森から出ているかもしれない」

「森を出たとしても、山超えたこっち側に居るとは限らねぇだろ」

「実はそうでもないんだ」

「あ?」



 どうやらグバの森を越えたこの草原の先には馬や羊を育てる地域があり、そこを新しい餌場に狙って群れで大移動しているかもしれないとバルトロは推測する。それが事実ならかなりヤバい話になる。

 元を辿ればアリヴィンを攫ってアビスサーペントに食い殺された盗賊の所為だが、それに間接的だが関わっている身としては聞き流せない。

 依頼の対象ではあるし、行こうとしてた街から遠ざかったのならもう諦める方が早い。



「バルトロ、現在地ってこの地図で分かるか?」

「そうだな…。イサギ殿が言っていた森がここなら、今俺達が居るのはこの辺りだ。ここから行ける街は…この地図には載っていないが、パイザだな」

「どんな街だ?」

「長閑で織物が有名な街だ。だが最近は徴兵で働き手が居なくなり、街の維持が困難だと報告にあった。そこにウォーグの群れに襲われるなんて目も当てられない事態になる。こんな形ではあるが、俺も王族の端くれとして国民の力になりたい」



 バルトロの実力は定かじゃねぇが、弱くはねぇだろ。仮にも騎士団団長なんだし、初級冒険者の依頼ぐらいならまず問題ない。

 俺の依頼が片付いてバルトロは国民への償い…あまり綺麗なモンじゃねぇが、一石二鳥って奴か。



「そうなりゃ、俺達の目的地はパイザに変更だな。食料もつといいが…」

「パイザに向かう途中にも小さな村ならあるだろう。そこで調達すれば良いんじゃないか?」

「そうか。パイザに冒険者ギルドってあるのか?」

「王都に比べれば小さいが、"街"と呼ばれる場所には大抵ギルドはあるぞ」

「なら問題ねぇな。休憩したらザーフィァに乗って行くぞ」

「ま、またあの走りか…」

「慣れろ。人間慣れれば案外生きていける」

「はぁ…」



 バルトロの重い溜息もスルーし、寝ているアリヴィンを胡坐を掻いた足の上に乗せる。ぐっすり眠っているのを見計らい、アリヴィンに鑑定を使う。



「"鑑定"」



【名前:アリヴィン

 年齢:1日

 性別:♂

 称号:『炎の支配者』

 体力:4(+2)

 魔力:17

 攻撃力:6

 防御力:3

 瞬発力:3(+2) 】



 今の所異常なし、体力と瞬発力が若干上がったか?まだ生まれて1日だとそんなモンなのかもしれない。

 かく言う俺はどうなっているのか、スマホで確認しておく。



【 名前:イサギ・ミエニシ

  年齢:26

  称号:『異世界人』『魅惑の麗人』

  職業:調教師(テイマー)

  体力:220(+65)

  魔力:390/400(+80)

  攻撃力:179(+60)

  防御力:125

  瞬発力:200(+84)

  運:∞


  スキル:用心棒 料理人 酒豪 従魔 鑑定 収納 俊足 鉄躯

  特殊スキル:蠱惑 叡智の扉

  従魔:ケット・シー デュラン・ユニコーン ベビー・フェニックス】



 お、職業の欄が表示されてる。これかなり正確だな。

 そんでまた数値がおかしな上がり方してやがる…。上がった数値が大きいのはやっぱ魔力だな。練習したのもあるが、昨夜何回か使ったお蔭で伸びている。けど今朝魔法を2回使ったから少し減ってるな…。こういう表示の仕方もあるのか。どれだけ使ったかが一目で分かるのは便利だ。



「イサギ殿、それは?」

「ん?あぁ、スマホ。俺が居た世界での連絡手段で、この世界に来てからは俺自身の情報が載ってる」

「これが、連絡手段?一体どうやって?」

「説明すると長いが、これと同じ物を持ってる人間なら大抵どこに居ても連絡出来る。時間も関係なく」

「そんな道具が…!?」

「あの餓鬼共は持ってなかったのか?」



 あんな遊び盛りの餓鬼共なんか典型的なスマホ依存症者だろ。

 俺もまぁ仕事に影響あるから2台持ちではあるが、ゲームや写真をアップする為のSNSは入れていない。因みに今持ってるのはプライベート用で、今頃家に置いてある仕事用のスマホには鬼みてぇな数の通知が入っているだろうな。恐ろしくて見たくねぇ…。


 口元に手を当てて記憶を辿ったバルトロはそれらしい発言をやはり耳にしていた。



「そう言えば、"デンパ"だの"ワイファイ"だのが無いと嘆いていたな」



 何で異世界に電波とWi-Fiがあると思ってんだよ…。あいつら本当に馬鹿だな。関わらなくて正解だった、マジで。



「イサギ殿の"スマホ"とやらは彼等の物と違うのか?」

「いや、同じだと思うが…俺に魔法なんかが使えるようになったのと同じ原理がこれにも働いたのかもしれねぇな」

「特殊な力……要観察、としか判断出来ないな」

「それで十分だろ」



 駄弁りながら紅茶を飲み干し、アリヴィンが起きた所で出発する。今度は爆走しないよう軽く注意してからザーフィァにパイザの方角に向かって走ってもらう。時速100kmって確かこんな感じだったな。



『すごいすごーい!ママ、すごーい!』

「落ちんじゃねぇぞ、アリヴィン!」

『はーい!』



 フードに入れたアリヴィンはこの高速揺り籠が気に入ったようだ。

 将来は大物か…。…いや、フェニックスの時点で既に大物だったわ……。

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