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男装ホストの異世界旅行記  作者: エルモ
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39話 フィッシュ・アンド・チップス

 フィッシュ・アンド・チップスはイギリス発祥の料理。因みに"チップス"ってのはイギリスで言うフライドポテトのこと。俺としては皮付きのくし切りフライドポテトも好きだが、今回は棒状でいく。



「香草手に入ったし、早速使うか」



 洗ったバタータ(ジャガイモ)の皮を剥いて食べやすい大きさに切り、水を浮かべた容器に浸して余分なデンプンを取る。こうすると中はホクホク、外はカリッとした仕上がりになる。

 本来フィッシュ・アンド・チップスはファストフードに分類される"速さ"が売りの料理だが、折角買えたラズマリーン(ローズマリー)ティミアン(タイム)を使いたいので、今回のチップスは手の込んだハーブ風味と洒落こもう。



アリオ(ニンニク)があると香りが一気に豪勢だよな」



 水にさらしたジャガイモの水気を取り、小麦粉に(まぶ)す。ついでに小麦粉を水で溶かしておいて、そこに切っておいたジャイアントキャットフィッシュの身を入れる。ビールを入れて揚げると衣がサクサクして美味いので今回はビールも入れよう。

 最近ここまで料理に手を入れることがなかったので内心楽しんでいる。やはり料理好きとしては手の込んだ料理に熱中したい。


 けどなー…、欲しい食材がこの国じゃまだ高いんだよな……。卵なんかは全部領主に回っていて、そもそも買える人間が街中に居ないから置かないと店の従業員は言っていた。そりゃ買ってもらえないモンを置く馬鹿なんか居ねぇだろうよ。

 今の俺の財布なら買えなくはねぇが、わざわざ領主の元まで行って「卵くれ」なんて言える訳ねぇし、そもそも会いたくねぇ。絶対厄介事に巻き込まれるだけだ。


 そう思うと、早くこの国を出てシスネロス王国に行きたいモンだ。商業ギルドでの話じゃシスネロス王国は物資が豊富で農作物の種類も他国より抜きん出ていると聞いた。卵を手に入れるならシスネロスが1番安全だと。

 こうなったらザーフィァに頼んで一刻も早くシスネロス王国に入ってもらおう。そうすりゃ俺も安心して暮らせるだろうから。



「だから今は、これで満足しておこう」



 フライパンにジャガイモを入れて、その上に水を拭き取ったハーブと皮付きのニンニクを一欠けら入れる。その上から油を注いで火を点ければ油が弾ける音が聞こえてくる。この音が好きなんだよな、俺。

 揚がったジャガイモとハーブをザルに移して油を切り、塩コショウで味付けすれば完成。

 ハーブとニンニクの香りが堪らないな。


 これだけでも満足しそうだが、メインを忘れたら困る。小麦粉で作った衣に浸しておいた身を、熱してあった油に入れる。その途端に奏でられる油料理ならではのあの軽快な音が心地良い。

 本当は衣は冷蔵庫で冷やしたかったんだが、流石に冷蔵庫まではなかった。俺の収納スキルも冷蔵までは出来ねぇから諦めるしかない。幸い暑い夏の季節じゃなく、程好く涼しい気候だったので大丈夫だろう。

 今後のことを考えて、冷蔵・冷凍の方法を見つけ出そう。


 きつね色に揚がった身も油を切ってから皿に載せて完成。久々の魚料理だから、ガーティは喜びそうだ。ザーフィァもフライドポテト気に入ってるし。



「っし、そろそろ正気に戻ってるか?あいつら」







「おーい、飯出来たぞー」

『待ってたわ。早く頂戴!』

「分かったから、落ち着け。ザーフィァもこっち来な」

『美味そう…』

「ジャイアントキャットフィッシュで作ったフィッシュ・アンド・チップスだ。デカかったから多めに出来たぞ」

『いただきまーす!…ふぁ、はふっ、美味しい!サクサクしてて中はホックホク!あの巨大な魚もイサギの手に掛かれば絶品料理になるのね!』



 いつになくテンションの高いガーティはエメラルド色の瞳を輝かせて食べていく。過大評価されてるが、今のガーティに俺の否定の言葉は恐らく聞こえない。もう無我夢中で食ってるから。

 ザーフィァも最初は鼻で匂いを確認したが、すぐにフライドポテトを食べ始めた。カリカリと口から零れる音が食欲をそそる。



『…美味い!やっぱりこのカリカリしたのは美味いな。前は香りがしなかったが、この香りがするのは本当に美味い』

「魚も食えよ」

『勿論だ。残したりするもんか』



 バクバクと食べていく2人を見ていると俺も段々腹が減ってきたので、自分の分に手を伸ばす。フライドポテトは揚げたてだから外はカリッとしていて、中がイモ特有のホクホク感で堪らない。定期的に食べたくなる美味さだ。

 フライは噛み千切るとサクッと音がして、口の中でも衣を噛む音が聞こえる。中の白身は脂が乗っていて本当に美味い。ビールがいい仕事してくれてるわ。



『美味しい!美味しいわ、イサギ!』

『美味いぞ』

「あぁ、良かったな」



 美味そうに食べてくれる2人を見て、顔の筋肉が緩む。前の世界じゃガーティの言葉なんて分からなかったから、食事は静かなモンだった。

 それが今じゃこんなにも楽しくて仕方がないなんて、あの爺さんの言った通り人生何が起きるか分かったモンじゃねぇな。



「あー、食った」

『大満足よ。太っちゃいそう…』

『ん?ガーティは綺麗だぞ?』

『あら、嬉しい。でもレディは美しさを磨くのが務めよ。街を出たら私も狩りや戦闘に参加するわ』

『分かった。その時は一緒に行こう』

『ありがとう、ザーフィァ』



 うちの従魔は本当に仲が良いな。ザーフィァに関しては発言が男前だ…。



『勿論、イサギも一緒にね?』

「そうだな。俺も魔法覚えねぇと…」

『人目につかない場所に出たら、色んな魔法を教えてあげるわ。それまではまだ、私を頼ってくれる?』

「当然だ。頼りにしてるぜ?ガーティ、ザーフィァ」

『フフ、嬉しい』

『任せてくれ』



 明日は特に予定はないから、冒険者ギルドに行って依頼でも見てくるか。

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