37話 香草&地図をゲット
街の中でもザーフィァはやはり目立つが、もうすっかり慣れたのかザーフィァは普通に俺の買い物に付き合ってくれる。あまりに視線がしつこいとガーティが鋭い目で相手を追い返す。
俺の従魔は本当逞しい。
『イサギ、何を買うんだ?』
「食材は絶対だな。次の街までの地図があれば欲しいし…、あとギガントファングボアの毛皮もなめさねぇと」
『あら、毛皮をなめすぐらいなら私が魔法でやっておくわよ?』
「………そうか、じゃあ宿に戻ったら頼むわ」
『フフッ、喜んで』
機嫌良く微笑むガーティだが…もうお前の魔法の域について行けねぇ……。何で魔法で毛皮をなめせるんだよ…。聞いたところで答えにならねぇんだろうけど。
まぁこれで毛皮をなめすのに余計な時間を掛ける必要がなくなった。実際どれくらい掛かるかなんて知らねぇからな、宿を延長するのは面倒だ。あの宿の青年もザーフィァにビビってるから、あんまり長居するのも可哀想だし。
「そうなると…あと何が必要か。ザーフィァとガーティの結界は雨風も凌げるのか?」
『勿論よ』
『敵に見つからないように幻覚を見せることも出来るぞ』
「じゃあテント要らねぇな。他には……灯りも暖も焚き火で賄えるが、料理にはちょっと向かねぇんだよな。その辺をリストにある店から探すか」
『あぁ、あの人間のね。別になくても困らないでしょう?』
「いや、折角作らせといて"使わなかった"は流石にねぇだろ」
『優しいわね、イサギは』
どこが、とも聞けずに俺は小さく息を吐いてからリストにある店に向かう。
結論、火は自分の魔法で何とかしようということになった。
行く店行く店似たようなモンしか置いておらず、しかも馬鹿みたいに高い。"魔道具"と呼ばれる道具でコンロに似た道具があったが、今の俺の財布じゃ少々痛い。しかも口が小さくて大量の料理をするのには不便に思える。だから買うのは諦めた。
そこでガーティに、俺に火の魔法の使い方を教えてくれないかと聞いてみたところアッサリOK貰った。ザーフィァは誰かに何かを教えるというのが未知の領域らしく、怖くてとても出来ないと断られた。まぁ難しいことではあるから、安易な気持ちで受けてほしくないので大丈夫だと伝えてこの話は終わった。
今思えば俺、使える魔法っつったら"治癒"ぐらいだわ。早めに魔法覚えよう…。
「食料はこれでいいか。手頃な香草も手に入ったし」
『それ、何だ?』
「アリオだと。俺が思うにこれはニンニクだな」
『美味いのか?』
「料理したらな」
他にもラズマリーン、キンザ、イングヴェアー、ティミアン、フィノッキオと色々あったが、これ全部薬草の店で手に入ったんだよな…。
この世界じゃまだ香草の使い方は薬ぐらいか。料理に使えば幅が広がるのに、もったいないな。
「あとは地図か。これは商業ギルドだな」
『旅をしながら商売をする人も居るものね』
「あぁ。さっさと済ませて宿で休もう」
『分かった』
待ち行く人(基本女ばっか)に道を尋ねて歩いて行き、商業ギルドに着く頃には日は真上に昇っていた。
商業ギルドの外観は冒険者ギルドと変わらなかったが、中に入れば雰囲気の違いは歴然だ。無作法に酒を飲む冒険者とは違い、商売の交渉や鑑定をしている人間しかおらず、喧騒なんてものはない。
ザーフィァを見て一瞬怯えを見せられたが、ザーフィァが大人しく俺の傍を歩くのを見て敵意がないと納得してくれた。どこに行ってもこれは仕方ないか。
近くに来たギルドの職員の女に地図を購入したい旨を伝えると、すぐに取って来てくれた。割と簡単に手に入るモンだな。
「今現在の最新の情報を元に作られた地図はこちらになります」
「…ここからシスネロスに向かうんだが、その方角に街はあるか?」
「シスネロス王国ですと、歩いて10日程の所にヘーベという街があります。しかし、道中に魔獣が多く、馬車は出ていません」
「分かった。この地図を貰う。幾らだ?」
「は、はい。銀貨2枚と銅貨1枚です」
言われた金額を支払い、ギルドを後にする。長居したら陰からこっちを見ている他の女職員達に囲まれそうだったというのが大きな要因だが。
『次の街はへーべね。どんな街なのかしら』
「歩いて10日の距離ってのがどれ程のモンか分からねぇな…。最悪ザーフィァに飛ばしてもらうけど、大丈夫か?」
『問題無いぞ。寧ろ俺はその方が嬉しい』
「フッ、そうか」
尻尾を振って喜びを表現するザーフィァの顔を撫でながら宿に戻る。今日はもうやること殆ど終わらせたし、残りはガーティに毛皮なめしてもらうだけ。
俺達は寄り道せずに真っ直ぐ宿に戻った。




