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男装ホストの異世界旅行記  作者: エルモ
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35話 初バレ

 大金を収納スキルで仕舞ってからグスタフに商業ギルドがどこにあるのかを尋ねた。商業ギルドと聞いてグスタフは首を傾げて眉間に皺を寄せる。

 傍目から見たら俺がカツアゲされてるって思われるかもしれない。それぐらいオッサンの顔は厳つさに加えて凶悪になった。



「ぁあ?商業ギルドだぁ?何しに行くんだ?」

「ザーフィァに付ける鞍を買おうと思ってるんだ。今付けてるのは、ここに来る途中で倒した盗賊の馬が使ってたモンだから、綺麗じゃねぇんだ」

「あぁ、成程な。だったら良い革製品作る店、知ってるぜ」

「革製品?」



 グスタフは着ていた作業用の服を脱ぎ、壁に掛けてあった上着に腕を通す。



「つっても、一見お断りの店だからな。俺が案内するぜ」

「いいのか?仕事」

「朝帰りしようとしてただけで、今日は非番だ。それに、デュラン・ユニコーンに鞍を付けるなんざ聞いたことがねぇよ。それに立ち会えるってんなら行くだろう」



 というわけで、グスタフのオッサンに案内された俺とガーティ達は、1軒のいかにも老舗って感じの店に着いた。

 道中オッサンが子供に逃げられてるのを見たのは致し方ないと思う。俺も言えた立場じゃねぇが…眉間の皺が酷ぇんだよ、オッサン。



「ここだ。ちょっくら話してくるから、ここで待ってろ」

「あぁ」



 グスタフに言われて店の外で待ちながらガーティを肩に乗せて顎を掻き、ザーフィァの首を撫でていると、オッサンが店から顔だけ出した。



「おい、入っていいぞ。従魔も一緒にな」



 グスタフに促されて入った店は壁に商品を並べるスタイルで、革で出来た鎧から小物まで何でも揃っていた。でも所狭しという訳ではなく、均等な間隔を開けて並べられているのを見ると店のランクがそれなりに高いのが分かる。ガーティは革独特の香りに鼻をヒクつかせるが、ザーフィァは変わらず俺の脇に顔を入れて甘えてくる。ザーフィァは通常運転か…。


 店の奥にあるカウンターには、小柄だが筋骨隆々な爺さんが眼光鋭くして俺を見る。俺も爺さんから目を離さず見つめて立っていると、爺さんはニヤリと金色の犬歯を見せて笑った。



「しししっ、面白い客だってからどんな奴かと思えば…偉い別嬪じゃねェか、()()()()

「ッ!!」



 …今、この爺さん……何て言った?"嬢ちゃん"?俺の性別…分かったのか!?見ただけでか!?

 "女みたいな顔した男"とは、過去に何度か言われたことがあるが…。はっきりと"女"だと言われたのはもう久しいことだ。高校生までは辛うじて制服で分かるって感じだったから。私服じゃ胸見てから俺が女だって気付かれるのが常だ。


 俺が呆然と固まってる中、グスタフだけは首を傾げて何が何だか分かっていない顔を見せた。そりゃそうだろ、オッサンから見りゃこの店の中に女なんて居ないからな。



「は?"嬢ちゃん"?おやっさん、何言って…」

「オメェはまだまだだなァ、グスタフ。そこの男みてェな恰好してんのはれっきとした"嬢ちゃん"だって俺ァ言ってんだよ」

「………何ぃ!?」



 まぁ、驚くよな…。この反応見るの久し振りだわ、本当。

 グスタフは震える指で俺を指さし、固唾を飲んでからその問を口にした。



「お…女、なのか?お前……」

「…まぁ、一応」

「……………………」

「しししっ、衝撃で固まったってか?肝の小せェ野郎だなァ。おい嬢ちゃん、そこのデカブツは放っといて奥に来な。鞍探してんだって?それもデュラン・ユニコーンに付けるんだってなァ!」

「あ、あぁ…」

「しししししし!こりゃイイ!俺が作った鞍がデュラン・ユニコーンの背中に載るたァな!長生きはしてみるモンだぜ!」



 歯の隙間から空気が抜けるような笑い方をする爺さんは、カウンターの奥に入るよう促し、中へと案内した。グスタフのオッサンのことは本当に放置する気らしいので、俺も何もせずついて行く。

 店の奥は工房になっていて、作業途中なのか色々な道具が使いかけで置かれていた。使い込んでるが埃臭さはなく、手入れが行き届いているのが素人でも分かる。


 爺さんは工房の更に奥にある部屋に入って鞍を探しながら、俺に色々と話しかけてくる。職人は気難しい人だと思っていたが、この爺さんは話好きなようだ。



「しししっ、グスタフの野郎が尋ねるから何かと思えば、"デュラン・ユニコーンに付けれる鞍が欲しい"なんて言われた時ァたまげたさ!あの"狂乱の一角"に乗ろうって奴が居るんだからな。どんな剛腕が出てくるかと想像したが、珍しい髪と目をした嬢ちゃんだったとは…。人生、何が起きるか分かったモンじゃねェなァ」

「………どうして分かった?俺が女だって…」



 自慢でも何でもなく、俺はこういう恰好をして"女"だと気付かれた試しが今までなかった。高校卒業してからは本当に気付かれなかった。自分で言って初めて周りが気付く、というのが日常になっていた。

 私服で女子トイレに入ったら痴漢に間違われて警察呼ばれたのは本当に悔しかった…。婦警に裸見せてやっと誤解が解けたかと思えば、「今度からは紛らわしい恰好は控えて下さい」なんて言われた時は名誉棄損で訴えようかと思ったわ。今思い出しても腹立たしい…ッ。



「何だ何だァ?美人が台無しな顔してんじゃねェよ。従魔に心配させてんのは関心しねェなァ」



 爺さんの言葉で、俺はガーティとザーフィァが悲しそうな眼で見ているのに気が付いた。俺の首に顔を擦りつけるガーティを撫で、ザーフィァの額に俺の額を合わせる。



「ッ…悪い、何でもねぇ」

「しししっ、そんなに男に見られるのか?俺から見りゃ極上の女だと思うがなァ。それこそ、俺が若けりゃ狙ってた程にはな!」

「………それは、褒めてるのか?」

「ったりめェだろ。それともアレか?もう男は諦めて女に色目使ってるのか?」

「女はどちらかと言えば嫌いだ…」

「しししっ!そりゃ難儀だなァ!ま、イイ男に巡り合うのを待つのも一興じゃねェか?」



 男と、巡り合う?俺が?



「……考えられないな」

「しししっ、まぁ今はその従魔が傍に居るならいいんじゃねェか?」



 そうだな、今はガーティ達が傍に居てくれたらそれで…。


 ……いや待て、そもそも俺求めてねぇから。

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