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男装ホストの異世界旅行記  作者: エルモ
30/72

27話 登録

 笑い続けるガスパルにいい加減キレるとやっと真面目になって説明する。ギルドマスターじゃなきゃ殴ってたぞ。…あと少しで殴りそうだったが。



「この魔法水晶に触れるだけで良い。これでソイツの体力や魔力なんかの数値を測り、見合う職を選ぶんだ」

「へぇ…。"鑑定"とはまた違うのか?」

「"鑑定"は対象が限定されていないだろう?これは人間や亜人限定だからな」

「あぁ、成程」

「物は試しだ。触ってみろ」



 言われるまま水晶に手を置くと、水晶が白く光り、中に文字が浮かび上がった。

 剣士、格闘士、砲手、槍使い、暗殺者(アサシン)調教師(テイマー)、魔術師、魔法剣士…。何か知らんが色々出てきた。


 どうすればいいのか尋ねようとガスパルの顔を見ると、顎が外れてるんじゃないかってぐらい大口開けて驚いている。どうした、オッサン。

 我に返ったガスパルは髪を撫でて乾いた笑いを零す。



「いやぁ~、ギルドマスターになって色んな奴見てきたが、ここまで職に恵まれた奴は初めてだな。色男、お前相当強いな!デュラン・ユニコーンを従わせるだけはある!」

「勝手に納得されても困る。これだけ職があるのはそんなに珍しいのか?」

「あぁ、俺の知る中じゃ初めてだ。職から見るに魔法が長けてるみてぇだな。数値は幾つだ?」

「320」

「ブフッ!!」

「きったね!!」



 聞かれた質問に答えればガスパルは口にしていた紅茶を吹き出しやがった。咄嗟に避けたから被害ないけど、もし被ってたらって思うと引く。

 雑に口元を拭ったガスパルにわなわなと指をさされる。



「さ、さんびゃくにじゅう…ッ!?そんな数値で今まで無名だったのか!?"通り名"を持っていてもおかしくないぞ!」

「"通り名"?」



 トロイメラで自分の魔力の数値が異常なのは知ったが、"通り名"は知らない。ガスパルにその辺の事を尋ねるついでに、自分が辺鄙な田舎の出(という設定)であることを説明した。

 俺の出自を知ってガスパルも合点がいったのか落ち着きを取り戻した。



「そうかそうか。そうだよなぁ、お前さんみたいな色男をその辺の噂好きの女冒険者が知らねぇ筈ねぇもんな!こいつは失礼した!」

「いや…」



 褒められてるんだろうけど、全く嬉しくも何ともねぇ…。



「"通り名"ってのは何かしら功績のある奴に付けられる別称だ。知名度が高い程実力があると言える。俺の場合は"双豪のガスパル"って呼ばれてたんだ。あの飾ってある剣と斧で戦うのが俺のスタイルだったからそう呼ばれていた」

「成程…」

「にしても、相当のド田舎から来たんだな!今時"通り名"を知らない奴なんて居ないと思っていたんだが…まぁ、そういうこともあるよな」



 大口開けて笑うガスパルに罪悪感と不安を覚える。このギルド、潰れないといいが…。


 ガスパルが笑っている内に俺は職を選ぶ。

 前の世界に居た頃に経験している喧嘩の技術を活かせるのは剣士か格闘士。槍使いは…出来なくはないだろうが向かない気がするから無し。暗殺者も無し。別に暗殺とかしたくねぇから、俺。

 そうなると残りは魔法系だな。まぁ魔力の数値から考えて当然としか言えない。その中でも俺に合いそうな職は……。



「……調教師か魔術師だよな、俺の場合」

「そうだな。お前さんは既に魔獣を従わせているから、目指すなら調教師が良いと思うぞ。強い魔獣を従わせれば戦闘じゃ有利だし、何よりこの国は今魔術師を掻き集めているからな。なるなら調教師がオススメだ」



 最後の方にコソッと耳打ちしてくれた情報はかなり有難い。もし今魔術師になってこの容姿を嗅ぎつけた妙な女連中に根も葉もない噂でも流されたら王都(トロイメラ)に逆戻りだ。

 誰がするか、そんな真似。


 ガスパルの忠告とガーティの『仲間が増えれば楽しいわ』という言葉に押され、結果俺は調教師になることを選んだ。

 魔法剣士もあったが、話を聞くと剣に魔法を付与して戦う高度な職らしく、俺に出来る気がしないと思い、選ばなかった。


 残りの手順は全てガスパルに任せ、あっという間に最後の仕上げになった。



「待たせたな、最後にこのプレートに血を垂らしてくれ。あぁ、数滴で十分だからな」



 差し出されたのは鉄色の小さなカードみたいなプレートと、裁縫に使う針だった。説明通りに人差し指に針を刺して血をプレートに垂らす。

 するとプレートに血が染み込み、綺麗になくなった。一体何が起きたのかと驚いていると、今度はプレートに文字が浮かび上がった。俺の知らない文字だが、不思議と読めるのにはもう驚かない。刻まれたのは俺の名前だった。



「"イサギ・ミエニシ"か。これでお前も晴れて冒険者だ!宜しくな、色男!」

「名前分かってもその呼び方続けるのかよ。まぁいいけど…」



 掌で鈍く光りを反射させるプレートに刻まれた自分の名前。それが、俺とこの世界を繋ぐ印に思えた。

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