26話 初、冒険者ギルド
「ハァ…、やっと入れた」
まさかここまで時間が掛かるとは予想していなかった。これから先もこうなるのかと不安を感じずにはいられない。再び溜息を吐くと、ガーティとザーフィァが顔を擦りつけて甘えてくる。
『お疲れ様、イサギ。ごめんなさい、あんな人間の相手なんてさせてしまって…』
『俺も…、イサギを守れなかった。俺が居たせいでイサギに迷惑を掛けた……。ごめんなさい』
グリグリと顔を押し付けて謝り続ける2人(2匹…?)を宥め、今回は仕方なかったと話を終わらせる。さっきから周りの視線が気になるので出来れば場所を変えたい。
「今から冒険者ギルドに行きたいんだ。ザーフィァ、乗せてくれ」
『!勿論!』
落ち込んでいたザーフィァの頭を撫でてから乗せてもらい、オスカリウスに貰った街の地図を見ながら歩く。
待ち行く人間に凄い見られるがこの際無視だ、無視。ザーフィァに害がないと知らしめるにはこうして人間を乗せて大人しく歩いているのが一番手っ取り早い。ザーフィァもさっきの流れで大人しくしていれば自分に無害だと理解しており、周りの人間の視線は無いものと考えている。
ガーティは俺の肩で寝てるから特に問題なし。
オスカリウスが教えてくれた場所に近付くにつれ、武装した人間や変わった布を被った人間が増えてきた。恐らく冒険者であろうそいつ等はザーフィァを見て顔を青くし、その後俺を見て驚愕しながら道を譲る。俺はモーセか。
『イサギ、あそこか?』
「あぁ、そうだ。あそこで間違いない」
辿り着いた場所には4階建ての中々立派な建造物が建っていた。街のデカさを考えるとこれぐらいが妥当なのか。
オスカリウスの話だとギルドマスターに紹介状を見せれば良いと言われている。
「俺は中に入るが、ザーフィァはどうする?」
『一緒に決まっている。イサギの傍じゃなきゃ嫌だ』
「ハハッ、そうか…」
街に入ってからザーフィァの懐きっぷりが増して思わず乾いた笑いが出る。俺がヘマして怪我でもさせられた暁には、怪我させた奴死ぬな、絶対。
馬鹿なことを考えないようにしてからギルドの中に入る。中は酒場なのかテーブルと椅子が並び、昼間から酒を飲んで騒いでいる連中ばかり。たまに女の姿も見えるのが意外だった。
この世界の女じゃ戦える奴は戦うんだな。
俺が入った時は何人かがチラリと見るだけだったが、その後ろからザーフィァが入ってきた途端飲んでいた酒を吹き出したり叫んだりと一気に騒がしくなる。女達も悲鳴を上げて奥に引っ込んじまったし…。
「デュ、デュラン・ユニコーン!?何で街に…!?」
「気を付けろ!あの角以上に魔法が厄介な魔獣だ!!遠距離から攻撃すりゃぁ…ッ」
「馬鹿言え!軍隊をたった1頭で滅ぼす魔獣だぞ!?俺達のランクじゃとても敵わねぇ!」
おーおー、喧しいなぁこいつら。大人しくしてりゃザーフィァなんて毛色の違うただのユニコーンじゃねぇかよ。
俺が説明しようと口を開くよりも先に、奥のデカい扉が開いた。中から出てきたのは奥に引っ込んだ女と筋肉質で顎鬚が渋い巨漢の2人。
ひょっとして、この男…。
「俺はこの冒険者ギルドのギルドマスター、ガスパルだ。デュラン・ユニコーン連れた男ってのはお前か、色男」
やっぱり、ギルドマスターだったか。本人から来てくれたのは有難い。
身長180越えの俺よりもデカいとなると相当デカいな、このオッサン。おまけに筋肉が凄いし、顔は年齢を感じるが他はその辺のチンピラよりずっと強そうだ。これがギルドマスターなのか…。
「オスカリウスと言う男の紹介で来た。冒険者の登録をしたい。あと後ろのデュラン・ユニコーンは俺の従魔だ」
「ほぉー、あのデュラン・ユニコーンを手懐けるたぁ大した腕だと思ったが、力づくじゃねぇのか」
「必要なら話すが、ここは落ち着かねぇ。別の場所はねぇのか?」
「おぉ、俺の部屋で話そうや。登録もそこで済ませちまえばいいだろ」
ガスパルに案内されて俺とザーフィァは2階へ続く階段を上り、ある一室に入る。壁には年期の入った斧や大剣が丁寧に飾られ、いつの日かの栄光を輝かせている。
ソファに座った俺の前でガスパルはオスカリウスの紹介状を読み、ニヤニヤと楽しそうに笑いながら話を始める。
「成程な、あの高慢ちきに絡まれたか。そりゃ災難だったな」
「絶対思ってないだろ…」
「ダッハハハ!悪かった、そう怒るんじゃねぇよ色男。あの男は偉そうな態度だが実際は成金の家の三男でな、大した地位に就けねぇからって自棄になってるんだよ。まぁ、それ抜きに考えてもいきなりデュラン・ユニコーンは心臓に悪かっただろうな!」
豪快に口を開けて笑うガスパルに呆れ、話が進まないのは困るので俺から切り出す。
「いいから本題だ。冒険者の登録だが、一体何をすればいい?」
「あぁ、それなら今準備させている。っと、丁度来たな」
ドアをノックする音にガスパルが答えると、受付で怯えていた女達の1人が妙な水晶玉を持って立っていた。俺とガスパルの間のテーブルに置かれた水晶玉は半透明の水色で、特に変わった所はない。
「よーし、そんじゃあ色男。サクッとやってくれ」
「説明されなきゃ分からねぇんだよ、この筋肉野郎がッ」
「ダッハッハッハ!そうか、そいつぁスマンな!」
何か、このオッサンと話すだけで労力を削がれてる気が…。




