24話 無駄は嫌いだ
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山の向こうから昇る太陽の光で全員自力で目を覚ます。ミシェルも寝惚けているが毛布からは出られたのが驚きだった。この世界の子供は自立しているんだなと感心させられる。イリヤなんか俺の手伝いにと薪を新しく拾ってきてくれたんだから、将来家庭を持てば良い大黒柱になるだろう。
誰よりも先に起きていた俺は朝食に簡単なサンドウィッチを作った。パンの間には塩コショウで味付けしたチキンとトマト、そしてレチュガと呼ばれるレタスに似た葉野菜を挟んだ。
パンに口の中の水分持っていかれたが、その分トマトとレタスが補ってくれる。マヨネーズがないのが凄く残念だが、こればっかりはどうしようもない。
セザール達は喜んで食べてくれたのが幸いだ。
「よーし、出発するぞ!」
セザールの声に応じて馬車の馬が歩き出す。その後を追って俺を乗せたザーフィァに歩いてもらう。
セザール達に馬車の中で休むよう言われたが、俺が寝こけている間に山賊やら何やらに襲われたら洒落にならんと一蹴した。金払ってもらうんだから、やるからには徹底する。
おまけに、俺の身体は全く疲れを感じない。軽い倦怠感ぐらいはあるだろうと覚悟していたが、杞憂に終わった。全力疾走しても疲れないとかだったら無敵に近いぞ、俺。
ザーフィァを従えている時点で既に色々ヤバいが。
「そうじゃ。イサギさんや、アスクマに着いたら冒険者ギルドに行って登録した方がいい」
「は?何故?」
「お前さんの従魔はあまりにも強すぎる上に希少じゃ。旅をするなら従魔じゃと分かるようにしておかねば厄介じゃろう。おまけに街や国に入るのに、冒険者でないと金が掛かる。従魔の分も払うハメになるくらいなら、冒険者になって免除される方がよっぽど得じゃろう」
無駄な出費か…、確かにそれは避けたい。今の俺は安定した収入なんてないんだから、金の使い過ぎなんて出来ない。
しかし、俺が冒険者?あんな鎧や剣を装備して出歩くってのか?イメージつかねぇな…。
なかなか冒険者になる決心がつかないでいると、ラウは更に詳しい話を聞かせてくれた。
「それにお前さんの従魔であるデュラン・ユニコーンは気性が荒いことで有名じゃ。魔獣を狩ってきては、その毛皮や魔石を取り出すのに一々商業ギルドに解体の依頼してちゃ時間と金が余計に掛かるのじゃ」
「そうなのか?セザールは昨日、商業ギルドに売りに行くのが1番だって言ってたが」
「高値で買ってくれる点では商業ギルドが1番なのは確かじゃ。しかし売る部分を自分で決めることが出来るのは冒険者ギルドに併設されとる解体屋だけじゃ。そこでなら、自分に必要ない部分だけ売りに出すことが可能じゃ」
うわー…、めちゃくちゃ大事じゃねぇかソレ。危ねぇ、危うく商人にカモられるところだったぜ。
俺の説明の仕方が悪かったと考え、セザールが話してくれた内容は別の時に役立てるとしよう。
俺としては、グレートスプリングラビットの肉を食べてみたいので売るのは肉以外だな。収納のスキルを使えば肉が腐る心配はないし、ザーフィァの食欲から考えれば食費が浮くのは有難い。
金は大事だ。イメージ云々はこの際考えずにいこう。何だかんだで面白そうだしな。
「ありがとうな、ラウ。街に着いたら早速登録するわ」
「うむ、それが最善策じゃろう。じゃがその前に、憲兵の元に行かねばならんがな」
「あぁ…、忘れてた」
最後尾を浮かんでいる盗賊共を憲兵に突き出さなきゃいけないという重要な仕事があることをすっかり忘れていた。あいつ等屍みたいな顔になって無言だからそこに存在しないモンだと無意識に脳が認識していた。
多分空腹で死にそうなんだろう。犯罪人にやる飯なんざ持ってないんでな。
長閑な草原を歩き続け、昼前に俺達はアスクマの街に辿り着いた。巨大なレンガの壁は地面から生えた蔦で覆われている。その姿から時間の長さが計り知れる。
セザールの話だと、アスクマの街に入るのには銀貨3枚が必要だと言う。何気に高いな。
セザールの馬車に続いて俺も街に入るための列に並ぶが、周りからの視線が刺さりまくっている。
ザーフィァは視線が気に食わないのか周りに睨みを利かして黙らせる。一方ガーティは我関せずって態度で優雅に俺の肩で寛いで毛並みを整えている。お前はどこの女王だ。
そんな周囲に気にすることもなく列に並んで待っている内に街の入り口が近付いてきた。
門の奥に見える街の様子に意識を向けていると、俺達の番になった、が……。
「止まれ!それ以上街に近付くな!!」
一斉に向けられる槍の刃にセザールも馬車の中のイリヤ達も蒼褪め、ザーフィァとガーティは威嚇をする。面倒なことになったと溜息を吐いていると鎧を来た連中の奥から偉そうな態度の男がやってきた。
歳は大体40~50ってところか。綺麗に整えられた髭と髪型、極めつけは無駄しか詰まってなさそうな見事な贅肉腹。良い家のボンボンなんだろうな。オッサンだけど。
オッサン兵士はジロジロと不躾な目でセザール達を見た後、俺の方を見て目の色を変えた。
と言うか、ザーフィァを見て引く程震え始めた。顔面蒼白、顔には脂汗が垂れて膝は爆笑。これが演技だったらハリウッドスター並みの演技力だと俺は称賛を送る。
「き、貴様!その魔獣が何なのか分かっているのか!?"狂乱の一角"だぞ!!」
「だから?」
「…………は…?…い、ま……何と………?」
頭が真っ白になった人間って顔も白くなるんだなーとか場違いなことを考えていると、オッサンは腰に差していた剣を抜いてこちらに向ける。
後ろでミシェルが小さく泣いている声が聞こえ、俺のフラストレーションが徐々に上がり始めた。
「だから何なんだって聞いてんだよ。俺の従魔に、何か問題でも?」




