表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
男装ホストの異世界旅行記  作者: エルモ
26/72

23話 眠らない夜

 賑やかな夕食が終われば後は寝るだけで、俺は不寝番を任された。元々夜行性なのもあるし、昼間の戦闘らしい戦闘じゃ体力をそんなに使っていないから身体も辛くない。

 セザール達に再三休むよう言われたが、寝ようと思って寝られる程便利な身体じゃないので丁重に断った。並の人間より体力が優れているのだから、金を貰う以上存分に有効活用しなきゃ意味がない。

 ついでに、今日あった色々なことを調べたいので、寝静まった頃を見計らってスマホを取り出す。大量の通知が溜まっているが、それは後にする。


 まず最初は俺の体力とか魔力について。



【 名前:イサギ・ミエニシ

  年齢:26

  称号:『異世界人』『魅惑の麗人』

  職業:***

  体力:155(+5)

  魔力:320(+20)

  攻撃力:119(+9)

  防御力:125

  瞬発力:116(+8)

  運:∞


  スキル:用心棒 料理人 酒豪 従魔 鑑定 収納

  特殊スキル:蠱惑 叡智の扉

  従魔:ケット・シー デュラン・ユニコーン】



 なんか数値が上がってるんだが…。特に魔力の上がり方が異常だ。何でいきなり20も上がってるんだ?

 ふとここで今日使った魔法を思い出した。治癒(ヒール)はセザールの話じゃ習得するのが困難な魔法で、それを持っている人間は数がかなり少ないらしい。それで魔力が上がったと?俺はゲームの類はしないからよく分からないが、これって経験が数字として加算される仕組みなのか?

 筋トレなんかで鍛えると体力が増えるのと同じ要領で考えると、俺が魔法を使えば使う程魔力が増えることになる。体力の数値が上がっているのも、今日デモン・タランチュラとジャイアントキャットフィッシュを相手にしたことが原因か。攻撃力と瞬発力が上がっているのも、俺が走って攻撃したから。防御力が上がらないのも、今日の俺の戦闘じゃ防御が必要じゃなかったからしなかった。だから数値が上がっていないって訳だ。



「戦闘狂って訳じゃねぇから、そんなに上げる機会無さそうだな」



 それとは別に色々増えてる。まず称号に『魅惑の麗人』とか入っている…。何が原因なんて言うまでも無くこの親父似の顔のことなんだろう。こっちの世界の美的感覚は同じってことで良いのか。ブサイク呼ばわりされるよりはマシだが、どうせなら変に絡まれない普通な生活を送りたいモンだ。無理だろうけど。


 あとはガーティ達のことも載っている。従魔にどういうメリットがあるかは知らないが、ガーティと2人だけっていうのも味気なかったから、正直ザーフィァの存在は有難い。

 けど、これ以上は別に必要じゃないから従魔のスキルの出番はないだろうな。ガーティとザーフィァが居てくれれば俺は十分だ。



『私も、イサギとザーフィァが居てくれればそれで満足よ』

「っ!!ガーティ…、起こしたか?」

『気にしないで。それにしても嬉しいわね、イサギにそんな風に思ってもらえるなんて』

「…思考を読んだのか?」

『ごめんなさい、考え込んでいたイサギが優しい顔をしたから…つい』

「そんな顔してたのか?俺」

『えぇ、凄く優しい顔をしていたわ。私、イサギのその顔が大好きなの。見ているだけで幸せな気分になれるわ』



 気付かなかった…。俺は親父似のこの顔と眉間の皺の癖で周りから怖がられることもあり、俺もそんな顔が癖になっていた。考え込むと余計に皺が増えるから2割増しで怖いと言われたこともある。

 そんな俺が、ガーティの言う優しい顔をしている姿は…正直想像出来ない。そもそも俺ってそんなに笑う人間じゃないと思う。不愛想って言われるのが挨拶代わりみたいなモンだったから。


 そんな男に5歳で求婚したのか、ミシェル……。アラン、今から頑張らねぇとお前の娘が将来変なタイプの男連れてくるぞ。



『何遠い目をしているの?』

「いや、何でもねぇ…。それよりガーティは寝ろよ。明日は早いぞ」

『結界を張ったわ。イサギも一緒に寝ましょうよ』

「不寝番を仰せつかってるから無理だ。静かにしねぇと誰か起きるぞ」

『もう、強情ね。いいわ、明日は馬車の中で休むこと。それから街に着いたらすぐに宿を見つけて休むのよ?いいわね?』

「分かった」



 俺のすぐ横で香箱を組んで寝るガーティの背中を撫でながら頭上に広がる星空を眺めた。星の光だけでここまで明るい夜なんて今まで経験したことがない。都会じゃ街の灯りがうるさくて星なんて一等星がやっとだった。

 それが今、息を忘れる程美しく輝いている星空を眺めることが出来るなんて…人生何が起こるか分かったモンじゃないな。



「…雅樹さん、心配してねぇといいが」



 あの人のことだ、俺の捜索願でも出してるのかもしれないな。大慌てで警察署に駆け込む姿が目に浮かぶ。そんな想像の姿に思いを馳せているうちに、視界が揺れ始めた。

 目を擦ることも出来ないまま、俺は熱いものを頬に流した。俺に向かって無償で微笑んでくれた恩人と、俺を信じて背中を押してくれた実父の姿が目頭を熱くする。



「っ……」



 大丈夫だから、どうか…長生きしてくれ。

後半シリアス入りました…。

シリアス入れると際限ないんですよね……。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ