16話 青い目
デュラン・ユニコーンが従魔になった…。そんな現実を受け入れられない俺は、何故か盛り上がってるガーティとユニコーンの会話を傍観している。因みに、従魔になったからかユニコーンの言葉が分かる。
このデュラン・ユニコーンを鑑定してみたが、結構強いわ。
【名前:デュラン・ユニコーン
年齢:174歳
性別:♂
称号:『虐殺の一角獣』
体力:274
魔力:590
攻撃力:215
防御力:114
瞬発力:328
スキル:浄化、硬化、威嚇、俊足】
…『虐殺の一角獣』って何だよ。恐ろし過ぎて聞けねぇ。
というか、年齢の桁がおかしい。ユニコーンって長寿な生き物なのか?人間なら2回分は生きてる年数だぞ、これ。数値も色々凄いが何より魔力と瞬発力が半端じゃねぇ。そりゃこんだけ強そうな数値持ってりゃ徹底的にやられるのも頷ける。
スキルは何となく分かるが、一応調べてみた。
まず、"浄化"。これはそのままの意味で、毒にやられてもこのスキルがあれば中和出来る。もともとユニコーンの角には水を浄化したり、病気を治す効果があるらしい。もともとの特性をスキルにするには相当な数を熟さなければいけない、と書かれているが…。人間嫌いなこいつのことだ、水を浄化しまくったんだろうな。
それで、次は"硬化"のスキルな。これも読んで字の如く、全身を硬くすることが出来るスキルだと。なんでもユニコーンは、岩で角を研いで鋭くして戦闘に備えている程獰猛な種族らしく、こいつの場合は角で岩を貫いたり、色んなモンと喧嘩していった内に獲得したと言う。血の気が多いんだな…。
"威嚇"のスキルは少し変わっていて、このスキルを使うと相手を委縮させて攻撃させにくく出来ると言う。その隙に先手を打って勝つ、という訳か。更に、自分より弱い相手だと動きを封じることも出来るらしい。蛇に睨まれた蛙の図を想像してしまったが、ざっくり言えばあんな感じだろう。
これも喧嘩している内に身についたスキルのようだ。
最後は"俊足"。これも説明は簡単で、走る時にこのスキルを使えばとんでもないスピードが出せるようになる。瞬発力の数値が異常に高いのはこのスキルのお蔭か。もし乗れるなら乗ってみたいな…。次の街で乗馬に必要な鞍なんか付けるのも悪くない。本人が許可するなら乗せてもらって移動しよう。
スキルについて色々分かり、一息吐いているとガーティとユニコーンが俺に甘えてくる。喉をゴロゴロ鳴らしながらガーティは俺にさっきまで話していたという会話の内容を教えた。
「は?名前?」
『そうよ。彼、名前を持っていないから、イサギに名付けてほしいんですって』
「いいのか?俺で」
『良いも何も、貴女は言わば、私達の"主"なのよ?主に名付けてもらうのは当然だわ』
『俺も、貴女に付けてほしい。こんな俺を受け入れてくれた、貴女に…』
「……分かった。考えるからちょっと待ってろ」
ユニコーンとガーティは嬉しそうに湖の元まで走り、水を飲んだり湖の中を眺めてはしゃぎだす。
座ったまま空を見上げて、俺はユニコーンに付ける名前を考える。黒い毛の馬を"青毛"と言うし、目が綺麗な青だったから、出来れば"青"に由来する名前が良いな。
青、青…。あの目から連想出来るのはサファイアだから、サファイアを他の呼び方にしてみると…。
「ザーフィァ」
『!!』
心の中で言ったつもりが口に出ていたらしく、ユニコーンは俺の声に反応して顔を上げる。ガーティもそれで気付いて俺の膝の上に乗って甘えてくる。
『決まったの?』
「あぁ、ザーフィァだ。どうだ?」
『素敵な名前ね』
『俺も、気に入った。ザーフィァ…ザーフィァか、うん、良いな』
『ふふ、気に入ってくれたみたいね』
俺が考えた名前を嬉しそうに連呼するユニコーン、もといザーフィァはぐりぐりと俺の顔に自分の鼻先を押し付けて喜びを表現する。角が俺の後ろにある岩をゴリゴリと削っているのが見えたので、これから先、旅を共にするんだから角の扱いには要注意が必要だな。
パラパラ落ちてくる岩の欠片が頑丈さを物語っている。
『旅を始めてこんなに早く仲間が出来るなんて、幸先良いんじゃないかしら?』
「どうだか…。面倒事が待ち構えてるかもしれねぇぞ」
『俺に任せろ。もうヘマなんてしない。イサギには指一本触れさせやしない…』
「気持ちは有難いが、取り敢えずその禍々しいオーラしまえ」
女に見えない女、ケット・シー、デュラン・ユニコーン…なんともおかしな旅の集団が出来たモンだ。
来た道を戻り、向かうは王都と繋がるデカい(であろう)街。
人間嫌いなザーフィァが不安要素だが…何とかするしかない。




