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元社会科教師の異世界転生記  作者: 給湯温泉
少年遭遇編
8/19

6話 君に惚れることは無い

思ったよりもすらすらと書けたのでやっちゃいました。

本話からフィーユの一人称が「私」になりますのでご注意を。

少年が目覚める事はなかった。

いや、そう言うと語弊があるかも知れないので、きちんと言おう。

少年が(3日間)目覚める事はなかった。

ひどい熱だったが、ここまでになるとは思ってはいなかったのが事実だ。

正直、すっと起きて、家に返せだの泣き喚くだろうと覚悟していた。



少年は昼前に起きた。

いわゆる「記憶喪失」というやつだ。

「自分が誰だか分かるか?」のテンプレに反応したかったのだから。

いい加減、少年と呼び疲れたフィーユは、仮名ではあるがヴァレツトと名付けた。

あくまで記憶が戻るまでだが。

こうして、記憶喪失少年ヴァレツト育成ゲームが始まった。

(人を育てるのをゲームと称するのはどうかと思うが。。。)



「がすばーなーってなんだ?」

「んー…簡単に言えば凄くちっちゃいドラゴン?」

「は?ドラゴンは皆大きいのばかりだぞ?」

(もう面倒臭い)


教え子にそこそこの問題児はいたのだが、こいつは彼らの比ではない。

昨日の今日だぞ?

あんなに純粋無垢そうな、敬語もたじたじの可愛らしかった少年はどこへ!?

そう叫びたくなったのは黙っておこう。


しかしそんな生意気小僧でも、魔法を覚える速度は早かった。

イメージを持たせるため、周りの木に飛び火しないよう、上空に向かって軽く魔法を放った。

消化器程度の威力だったが、ヴァレツトは、

「…うわぁ……」

と、関心だか呆れだか分からない言葉を発していた。

「さて、君にもこれをやってもらおう。最終的にあれくらい出来ればいいから、まずはこんなもん。」

と言って、指先に小さな火を灯した。

「イメージするのは…」

ここまで言いかけたのだが、遅かった。

こいつ見ただけでやりやがった。

「へへぇん。どんなもんよ!」

人差し指を左右に倒しながらドヤ顔をしてきた。

よし、あとで殴ろう。


ヴァレツトの修行は続いた。

ロウソク程度だった火も、フィーユが最初見せたくらいに大きくなった。

修行期間中はりんごが主食だったのだが、町とは反対側に、栗やら柿やらがなっていたので、多少は大丈夫だった。はず。




修行を初めてから、多分2年たった。

フィーユより小さかったヴァレツトも、今では測るまでもない。

「デカくなったなヴァル。おっさんかよ。」

「おっさんとは失礼ですね師匠(せんせい)。まだまだ15歳ですよ。」

何が1番嬉しいって、あの生意気小僧がやっと敬語を使ってくれるようになった事だ。

少し出掛けた先で魔物と戦って、助太刀したら逆に倒してしまった。

それも一瞬で。丸焦げに。

結構苦戦していた彼にとって、フィーユは恐ろしかったのかも知れない。

それ以来、ずっと敬語を使っている。

呼び方も「師匠(せんせい)」。

師匠よりも先生の方が呼びやすいんだとか。

まぁその話はどうでもいい。

とにかく、改心してくれたのが1番嬉しい。

それだけだ。


ヴァレツトは肉体も鍛えていた。

それも、中3男子にはやりすぎな程に。

師匠が少女のままなのが頼りなかったのか。

まぁ確かに?

ずっと135cm(目測)だし?

なんで成長しないんだよって思ってたし?

そりゃ魔法が使えてても頼りないよな。。。

…気分おちるからこの話はやめよう。


こうして、ヴァレツトの育成ゲームは華やかに終わりを告げる。はずだった。




それは、前兆もなく、突然やって来た。

「ドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドド」

始めは小さな揺れだつたのだか、次第に大きくなっていった。

3.11の大地震も熊本地震も大して被害がなく、ましてや淡路だって記憶に残っていないくらい昔に経験したフィーユにとって、地震とは、「身近にあるが被害は出ない災害」程度の認識だった。

地震に怯え、テーブルの下に潜り込んだヴァレツトをよそに、おやつのりんごを剥いていた。

だが、そこは地震大国日本出身。

台所の火を思い出し、止めに行こうと向かったのだが。

グラッ

「危ないっ!」

「ひあぁっ!?」

自分でも分からないような悲鳴をあげて、前へ吹き飛ばされた。

すると、間髪入れず

ガシャァンッ

食器類が大量に入っていた棚が真後ろで倒れた。

「あ、ありがとう…」

「気を付けてくださいよ。早々に外に避難していればこんな事にはならないで済んだんですから。」

「は、はい。。。」

まるで親子。

傍から見ればそうだったに違いない。


思ったよりも長く続いているので、2人は外に出た。

家の前は少し広間になっているので、木が倒れて来ようが家が倒壊しようが危険はない。

幾度と無く地震を経験しているフィーユでも、立っていられない程の地震は、恐怖心が芽生える。

プルプルと小刻みに震えるフィーユを、ヴァレツトは隣に座り、肩を抱いた。

ガキの癖に私を(たぶら)かす気か!と衝動的には叫びたくなったが、今はそんな気も起きない。

こんなにも心地良いと思った日は、こちらに来てまだ1度もない。

そのため、すっかり安心してしまったのだろう。

この瞬間の自分をフィーユが許す日は、きっと来ない。

フィーユ×ヴァレツトはありません。

作者がゆるさないので。


次話は早ければ今週中に載せれそうです。

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