3話 人になる
異形主人公の小説みたいなタイトルになってる、、
高校からの友人で、市役所務めのやつから言われた言葉がある。
「人として認めてもらう前に、人間として認めてもらえ。」
さっぱり意味は分からなかったのだが、曰く、
「住民票もない奴は人間じゃない」、だとか。
前から危ない思考の持ち主だとは聞いていたのだが、あの時ほど知人に対して寒気がした日はない。
国会議事堂前でデモやったり、SNSでは周辺国の批判ばっか書き込んだり。
社会科教師を目指していた身としては、考え方の1つとして重宝していた。
異世界へ行くと聞いて、人ならざる者として扱われるのは嫌なわけだ。
身の安全が最重要。1度死んでるんだし。
そんな訳で、町に着くなり役所に直行したんだが。
「自由すぎるだろ……」
内装は大したことないが、広さはまぁまぁある。
おおよそ、テニスコート2面くらいだろうか。
そして部屋の両側に受付がある。
数個置いてあるテーブルと椅子は、どちらかと言うと左寄りになっている。
ということは、バーか喫茶店かその辺だろう。
(ビールとかあればいいけどなぁ)
比較的テーブルの少ない、右の受付に向いながらそう願っていた。
受付のフラクトゥール(女性であってほしかった)に言われるがまま、サクサクと出来上がっていった。
フラク(そう呼べと本人から)に討伐とか冒険はしないのか聞いたが、怪我して以来、生産職に転職したのだそうな。
昔からそういう方が好きだったらしい。
そう言えば、気になったのが1つ。
住民票を作る時、予め術式が書かれた板に血を垂らすため、エラーや文字化けはまずありえない。
にもか関わらず、出来上がった羊皮紙には「PYAL」の文字があった。
薄かったのでフラクは気付いてたなかったが。
というかそもそも、こちらと元の世界は文字が違うので、こちらの世界の魔法で出来たのもにアルファベットが入るのはありえない。
それより、理屈云々より「PYAL」がなんなのかが気になる。
死ぬ前にSNSで誰かが言っていたが、何かの略称だろうか。
検索出来ないって不便なんだな。
アルファベットである以上、考えていても進展はない。
「にしても12歳か。あの女神に似てるって事は、あいつも12歳なのか?」
(まぁ神に年齢があるのかさえ知ったことではない。)
所持金がなく、町では何も出来なかったので、そのまま家に帰ったのだが、帰りは迷わなかった。
それでも3時間近く歩いたから、結構この森は深いんだろう。
それに、町に行く途中、リンゴらしきものがなっている木がいくつかあった。
町まで距離がある以上、当分は果実生活になりそうだ。
2018/01/23文章を変更