1話 あいつの再来?
少し更新遅くなりました。
「やべぇ遅れる!」
今までの習慣のせい(おかげ?)で、凡そ6時には嫌でも目覚める身体になっている。
職に就いてない以上、そんなものはいらないのだが。
慌てて起きたはいいが、景色がいつもと違う。
教師になって収入が安定するのだから、少しくらいいいだろう、と思いながら、住まいは少し贅沢である。
駅の近くではないが、歩けない距離ではないところにあるマンションに住んでいる。
まぁ、今となっては過去形になるのが寂しい。
それでも、苦ではなかった。
1LDKだった。
20代であった自分には贅沢だっただろうか。
寝室は資料の山がいくつもあったが、リビングはそれなりに整理され、綺麗だったはず。
だが今は、そんな事はどうでもいいのだ。
その住み慣れた風景でなく、質素で木目丸出しの家具や壁しか見当たらない。
(そういや、死んだんだっけ。)
落胆しつつも、取り敢えず転生先の住居であろう家を確認すべく、掛け布団をどけ、ベッドから『飛び降りた』。
周囲の変化に気を取られ続けていたが、ここまで来ると流石に気付く。
「え?なんでこんなにベッドデカいん?」
ベッドが異常にデカかった。
成長は高2で止まったのだが、それでも180cmと少しはあったと思う。
そんな自分の身体の1.5倍程の大きさだった。
「いくらなんでもこれは…」
溜め息を混ぜながらそう呟いた時に、やっと気付いた。
やけに声が高い。
まさかと思いつつ、自分の身体を見下げる。
そこにあったのは、肩幅のしっかりした、もう少しでおじさんと呼べる歳にピッタリのお腹周りの、慣れ親しんだ身体ではなかった。
その身体とはまさに正反対。
少し力を加えれば折れてしまうのではないか、とでも思わせるような細い身体が、眼下にはあった。
予想外の展開の連続に叫びたかったが、どうにか落ち着いた。
なんてったって、教師だったのだ。
初任というわけではない。
部活だって、ちゃんと顧問をやっていた。
中高と続けてきたテニス部ではなく、バスケ部に配属?されていた。
勿論、技術はまったくの素人である。
そのため、部員には「落ち着く事」だけを教えてきた。
そうすれば、判断が早く鋭くなるし、普段の力もだせる。
自分が教えているのだから、やらねばなるまいと思ったが、流石に耐えきれないかも知れない。
「幼女…」
そうつぶやいた。
死んだ時ほどではないが、軽く絶望した。
だが、元の身体じゃないのもある程度は納得できる。
あの暴力幼女が「元の身体はズタボロ」とか言ってたのは、多分これだろう。
しかし、そんな事は今はどうでもいい。
幼女だ。自分の身体が幼女化してたのだ。
あの世界では、触れるだけで人生を棒に振るだけの威力のある代物。
それが今は、自分の身体になっている。
「顔は?顔はどうなっている!?」
さっきまでの自分からは想像もできない、意気揚々とそう呟きながら、寝室であろう部屋をでた。
そこもやはり、木目丸出しのものが多い。
だが今は鏡だ。
「どこだ鏡は!洗面所か?あるのか洗面所なんて!」
落ち着けとか言ってたさっきの自分に言ってやりたい。
興奮を抑えないでどうする。
結果が残念なら、興奮するほど後のショックは大きい。
まさにその如くなるのは、今は知る由もない。
10分程探し回り、ようやく終わりを迎える。
それは、壁際のタンスのようなものの中にあった。
「あった!鏡ぃ!!!!!……は?」
目の前にいたのは、あの憎き暴力幼女神。
はっきり言って、絶望だろう。
2度と見たくない顔が、自分の顔として現れたのだから。
もう、どうでもいい。
これ以上のダメージはこころに悪い。
「寝よ。また明日考えるか。」
こうして、昼前にも関わらず、俺(わたし?)はもう1度眠りにつくことにした。