1話 トモダチ
「はーい。席について山田君!」
「わかったよ、チッ」
超難関高校に合格して二ヶ月がたった。自分にはまだ友達ができない。
超難関高校といったら普通眼鏡にガリ勉の集まりだと思ったがそうでもない。
主観的に考えすぎた。
休み時間になるとよく山田が声をかけてくる
「よぉ! 葵、また本読んでんの好きだなー」
「葵って静かだよね、影薄すぎ」
笑い声がクラスに飛び交う
女子はいつもそうだ、陰口しか言わない、
本人の前では畏まってるくせに、勇気すらない奴は草でも生やしてろ。
いつも僕はそう思っている。
いや、待てよ
僕も勇気のカケラなんか何一つないじゃないか。
僕は好きで本を読んでるんじゃない、人と関わりたくないからだ、なんていうと嘘。
真の自分はトモダチが欲しいんだ。
自分を絞めてそう思わないようにしてるだけだ。
孤独を愛す者なんてそう存在しない。
孤独になりたくてなってるんじゃない。
イチバンユウキガナイノハボクダ
そう思った瞬間
ガタン
「うわぁぁぁぁ!ごめんなさい!」
水野だ、水野はおっちょこちょいでよくヘマをする。
音楽の授業の時、音楽の先生からリコーダーを買ってくるようにと頼まれたのだが、彼はファゴットを買ってきたり。
今日で転ぶのも二回目だ。
「大丈夫かぁー水野ー」
「本当におっちょこちょいだよね。水野君って」
彼は僕とは違う、彼にはトモダチがいる。
僕は引き続き本を読む。
「水野ー、お前良かったなぁーあのクラス一モテる一条さんに心配してもらってさぁ」
「ごめん...」
そう、一条さんはクラス1モテる美少女。
中間テストでは1位を叩き出したり、スポーツも万能、そして優しい。
完璧な美少女なのだ。
今では他学年にも話題となり、一条さんをナンパしようとする人が多いい。
誰もが思うだろう。彼女と性的関係を持てたらこの世で一番嬉しいことだと。
「葵君、ちょっといい? 話したいことがあるんだけど」
一条さんが僕に話しかけてきた。
これってもしかして....
こ、告白!?
なーんて、大半の男子生徒は下らない妄想をし始めるのだろう。
だが少し期待している自分がいる。
「今日、絶対商店街に足を運ばないでね。
約束だよー」
そうして一条さんは去って行った。
いや....
ちょっとまてぇぇぇい!
意味がわかりません!?なんで商店街に近づいちゃ行けないんですか!?ちゃんと主語言えよ、何勝手にフラグたてたんだよ!?わかんねーだろーが!!
意味が理解できないまま、授業が終わった。