Do you believe in infinite possibilities?
私は春風に乗せられて、この学校に来たのかもしれない、そんなことを考えながら学校の正門へ立った。
吹き抜ける風がまた心地よくて、本当に勉強頑張ってよかった。
……なんて言ってみる。高校生なんだし、ちょっとくらい大人な表現に憧れちゃうよね。実際はまだ中学生気分だけど。
「んー!今日から高校生活が始まるのかあ!」
私、神谷凛。無事千鳥高校へ合格することが出来ました。それも誰1人落ちることなく、同じ中学の人は全員合格。
お兄ちゃんの力も時々借りて、この1年はとにかく勉強に集中してきました。さようなら、馬鹿だった頃の私。
制服がかわいいからっていう完全に不純な動機だけど、合格すれば何も問題ないよね。事実可愛いわけだし。
「凛ー!こっちでみんなで写真撮ろ!」
そんなことを考えていると、中学の友達の声が聞こえてきました。振り返ってみると同じ中学のメンバーが真新しい制服に身を包んで全員集合。
なんか中学卒業してからまだ一カ月も経ってないのにもう高校生。なんだかフシギな感じ。
「待って!すぐ行く!」
見ると友達のお母さんがカメラを持っています。そして私たちは千鳥高校、入学式の看板をバックに写真をパシャリ。
これも後には思い出のアルバムの1ページになるわけです。しみじみ。
「ねえ凛、クラス発表見た?」
一通り写真を取り終えるとバスケ部の友達、照井望結ちゃんが尋ねてきました。そう言えばこの子めちゃくちゃ頭良かったな……。
「あ、まだ見てなかった。」
門に立っただけで謎の達成感に包まれ、クラスのことをすっかり忘れていました。クラスってかなり大事だと思うのに……千鳥高校生としてそこはどうなのか。
思えばみんな頭良さそうな顔をしています。初めて会うからそう見えるだけかな?
「さすが凛だね。じゃ、私も見てないし一緒に見に行かない?」
「賛成っ!」
そして私は初めて校内へと足を踏み入れます。受験の勝者のみが通れる道、というわけです。ていうかさっきから私詩人の才能あるかも……。
校内は何度か文化祭とかで来たことあったけど、今日からは正式に歩き回れるわけなのです。
「なんかさ、高校生って実感湧かなくない?」
桜舞い散る校内を歩いていると、望結がそう話しかけてきました。
「ね。ここまであっという間だったもんね。」
「中学の3年間もあっという間だったし、この3年間も長いようですぐ終わっちゃうかもよ?」
楽しい時間はすぐ過ぎていく、とよく言うけども、華の高校生活は人生で一度切りしかない。
その限られた時間の中で楽しむなら、勉強も恋愛も、もちろん部活も上手くやりこなさなくっちゃ。お兄ちゃんみたいに退部だけはしたくないなあ、と。
「凛は高校でもバスケ、やるの?」
「もっちろん。逆に聞くけど望結はやらないの?」
「私はバスケはもういいかな……。何か新しいことを始めようって気持ちもあるし。」
「……そっか。それは残念。」
知っている人が1人でもいると心強いってものだけど、そう上手くはいかないよね。入る気がないなら無理に誘ってもかえって迷惑だし。
「……あ、あれじゃない!?」
そんな会話をしていると、大きな人だかりが見えてきました。その奥にはクラス分けの表がずらりと並んでいます。
「ふう……なんかクラス発表って不思議と緊張しない?」
「あ、それ分かるかも。特に今年は知ってる人いるかいないかでだいぶ変わってくるよね。」
人込みをくぐり抜けて、さて刮目。
1組から順番に出席番号10番前後に目をつけて……。
「あ、私名前あった!4組だって!」
「……私も。」
その瞬間、私と望結は目を合わせ、即座にハグ。純粋に嬉しい。嬉しすぎた。
「やった!やったー!!」
そして、今度はクラスのメンバーを縦にずらりと確認。見るからに可愛い名前や、パッと見だと読めない珍しい苗字も。
1番から順番に読んでいって……13番、神谷凛、28番、照井望結、そして、32番、花園……なんて読むんだろう、下の名前。
まあいいか。まずは会ってみるのみ。
私はニコリと笑って、校舎のドアを開きました。
It may possibly go on.




