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俺が部活を辞めた日  作者: 明戸
最終章 On The Rooftop
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47.嘘つき

「1日目お疲れ様ー!」


 開登がそう言って1日目の終わりを告げる。開登がいない間は近藤が仕切っていたが、やはりここは実行委員長の方が雰囲気が出る。


 そして教室内には歓声があがり、クラスメイト1人1人がとても達成感と充実感に溢れている、そんな気がする。


 時刻は17時、今日の校内での活動は完全に終了となり、これからLHRが始まろうとしているところだ。


「お疲れー!」

「この調子で明日も頑張ろー!」

「明日も楽しもー!」


 そしてクラス内には温かい言葉が飛び交う。この流れを見ていると本当に優秀賞を取れるのではないかと思えてくる。


 この学校の文化祭は大きく分けるとアトラクション部門と、食品部門に分かれているわけだが、それぞれに優秀賞が与えられる。


 文化祭中に生徒会室前に投票用の箱が置いてあって、そこの投票と、単純な来客者数の総合で決められるのだが……。


「はい、皆ちゅうもーく!」


 近藤がある紙を持って、大声で皆の気を引く。誰もがその紙に目が行くところだが……。


「何その紙ー?」

「いいか、皆よく聞けよ。この紙には今日の来場者数の合計が書かれている。」


 近藤がそう言うと、ざわついていた教室内が一気に静まる。今日だけでもこのクラスの半分以上の人がシフトとして仕事をしている。いわばその成果が、今日の来場者数なのだ。


「何と……その人数は……。」


 クラスの皆は息を呑んだ。近藤が言葉を溜めているその間、誰も、何も言葉を発しなかった。


 そして近藤は大きく口を開け、大きな声で言い放った。


「214人です!」


 ……が、教室内は静まりかえったままだった。しーんとし続けている教室内で、一番驚いているのは紛れもない、近藤自身だ。


「……って皆さん!?ここ喜ぶところだよ!?」

「嫌だって214人って何か微妙じゃね?パッとしないっていうか……。」


 あたふたする近藤にそう反論したのは開登。それはごもっともだった。214という数値が学校のアトラクション全体の中でもどれくらいの人気なのか、釈然としなかったのもある。


「いや結構来てるよ結構!だからとにかく喜ぼうぜ!?俺だけ盛り上がって馬鹿みたいだし!」

「いやでも実際馬鹿じゃねえか。」


 そしてクラスに笑いが生まれる。こうして見る通り、全体の男女仲は悪くない。


 だけど、俺個人としてだったら良いとは言えない。少なくても今は。


「おっし!じゃあ気を取り直して1日目も終わったことだし写真撮ろうぜ!」


 来栖との一件で自分はもう逃げないと決め込んだ。でも、行動はそれとは正反対。夏のあの日に、微妙に入った花園と菜月との亀裂をまだ直していない。


 そして、来栖と話したあの日、自分の思いを正直に伝えると決めた。それなのに、もう文化祭は1日目が終わってしまっている。


 こんな自分を想像していると、また逃げたくなってくる。部活を辞めたあの日のように。


「あれ?菜月さんと花園さんいなくね?」


 突然、誰かがそう言った。ぼんやりと考えていて、誰の声かは聞き取ることが出来なかった。


 そう言われて、辺りを見渡してみる。確かに、花園と菜月の2人だけいない。そんな馬鹿な事、あるわけがないのだ。


 この時間には教室内にいなければいけない。教室外にいてもやることはないし、もうLHRが始まってしまう。


 ただ、もしかして。そのもしかして、に俺は心当たりがあった。


「あれ?ほんとだ。」

「誰か知ってる?2人の行方。」


 誰かが、探し始める。そしてそれは誰かに移って、誰かへ拡散されていく。しかし、俺はその誰かに聞くまでもなく、足を動かしていた。


「おい修!?」


 そう呼び止める声を尻目に、俺は教室を飛び出た。もし、俺の予想が正しければ……2人を呼び戻してこれるのは俺しかいないから。


 行先は決まっていなかった。本能の赴くままに、独りで探すつもりだった。


 けど、俺は独りではなかった。


「俺も探すぞ、修!」


 思えば、いつも横には開登がいた。そして、今も。


「開登!?いいのかよ実行委員が教室飛び出しちゃっても。」

「バカヤロー、実行委員だからだって。この時間には全員教室内にいなきゃいけないんだ。何としてでも連れ戻すぞ。」


 俺はそれ以上何も言わなかった。ただ、ニコリと笑うだけだった。


 俺らは近くから手当たり次第、探していく。校内の端の端まで。西から東まで全て。近場にいないことが分かると、開登と二手に分かれて、体育館や武道場の方まで行った。


 行ったところは隅々まで探した。けど、結果は虚しかった。


「……いねえ。」


 いなかった。俺は独りでそう呟いた。校内にはいるはず、いるはずなのに……見つからない。


「修、いたか?」


 そんな時、前から開登が姿を現した。もう秋だというのに、俺も開登も、汗をびっしりとかいている。


 俺は黙って首を横に振った。しかし、開登はまだ心当たりがあるようだった。


「これは俺の予想なんだが……もしかすると……。」


 俺はそれを聞くとダッシュで、そこに向かった。ただ1つ、見落としていた。


 ーーーそこに、2人はいる。




「ごめんね、こんな時間に。」


 もう、夏の暑さはそこにはなくて、秋風が私の体に直で当たってきました。空はもう日が暮れ始めています。


 あの時、朱音ちゃんとはぐれて数十分後、朱音ちゃんから短いラインが送られてきました。


 17時に、屋上で。と。


「ううん、いいの。それで、話って?」


 17時には教室に待機していなければなりません。私も、朱音ちゃんもそれを知った上で、今ここにいるのです。


 今、私の目の前にいる朱音ちゃんは、夏が終わってからの朱音ちゃんとは少し違うように感じました。そして、今私達が2人で屋上にいるのには当然、理由があるのです。


 朱音ちゃんはとても真剣な眼差しをしていました。まるで部活に打ち込んでいる時のように。


「私、栞に謝らなくちゃいけないの。」

「……?」

 

 朱音ちゃんは、静かに続けました。


「夏の泊まりの時の夜、私は開登が好きだったって言った。でも、それは嘘、だったの。」


 私は、話の内容に少し驚いた。確かに、小学校の時、入江君が好きだったって言った。あの布団の中で、女2人で恋のことを語り合った。


 でも、そこに嘘をつく理由はないはず……。でも、次の言葉で私の少しの驚きは、大きなものへと変貌した。


「嘘……?」

「そう、嘘。私はあの時、修のことが好きだったの。」

「えっ?」

「そして、それは今も変わらない。」


 突然のことで、頭の整理が追いつかなかった。今まで私の恋を応援してくれていた朱音ちゃんが、神谷君のことが好きって……。


「私は、自分の本心に正直になれずに、関係のない開登を利用してしまったの。」


 でも、朱音ちゃんの言っていることを全て鵜呑みにするなら、これまでのことの全てが辻褄が合う。


 私の恋の応援をするのも、神谷君との接点が生まれるかもしれないから。あの時、私の携帯で神谷君に泊まりに誘ったのも、全部。


 それを今、全て受け止めるのなんて、酷だよ……。


「本当にごめん。」


 それと同時に、朱音ちゃんが、待ち合わせに17時という時刻を指定した理由も分かった。


 これは誰にも聞かれたくない話、だから。


「でも、」


 私が黙っていると、朱音ちゃんは話を続けました。


「私の気持ちは変わらない。」

「……それって、つまり。」


 私は薄々勘づいていた。そして事態は私の一番恐れていた方向へと向かっていくのです。


「私は明日、修に告白する。」

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