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俺が部活を辞めた日  作者: 明戸
2章 Children Voice
35/59

34.Children Voice

 ドスン!と大きな音が響き渡りました。


「いったたあ……。」


 入江君と一緒に穴に落ちた私は、その後は急降下というわけでもなく、滑り台を滑るように奥底へとたどり着いてしまったのです。


「大丈夫かい?花園さん。」


 横を見ると入江君も全く同じ状況そうで。でも入江君はガッシリしてるからこういうダメージは少なそうかな。


「う、うん。大丈夫。」


 周りを見ると、水晶のようなきらびやかな物体が壁に埋め込まれていて、部屋を明るく照らしています。


「にしても……ここはどこなんだろうね。」

「分からない。分からないけど、洞窟のようだ。」


 穴に落ちてからここに至るまでが傾斜が緩やかなスロープのようだったから、何とか生きているけども、真っ逆さまだったら今頃どうなっていたことか。


 多分、昔ここがテーマパークだったことが関係しているのかな。これもアトラクションの1つだったとか。だとするなら、出口はあるはずー……。


「進んでみるしかなさそうだね……。」


 水晶の部屋から1本だけ通路が繋がっているのが見えた。落ちてきた経路を逆行するのは不可能そうだから、この道を進んでいくしかなさそう。


「そのようだね。行ってみよう。」


 そして、入江君を先頭に、ゆっくりと暗い道を進んでいくことに決めました。


 電波は悪いけど、圏外にはなっていなかったから、入江君の携帯のライト機能を懐中電灯代わりにして進んでいきます。


「なんかごめんね……。俺のせいでこうなっちゃって。」


 入江君は小さい声で謝罪しましたが、水晶に反射してよく響きます。


「ううん、いいの。こういうのも冒険みたいで楽しいし。」


 あれだけ山の奥は危険と言ったけども、私自身もここまで来るのは初めてだった。入江君も反省しているようだし、責める理由もないでしょ?


「……絶対無事で出よう。」


 

「いってえ……。」


 開登と花園の後を追って、落ちたのはいいけども、落ちた先が一番問題だとは思いもしなかった。急に岩の上に落されるものだから、俺も菜月も尻を強打してしまう。


 とはいえ、その場の勢いで穴に飛び込んだけども、無事でひとまずは無事でよかった。これで底なしとかだったら……と考えると恐ろしい。


「……菜月大丈夫か?」

「あ、うん。大丈夫大丈夫……って痛!」


 そう言って立ち上がろうとするも、菜月は腰を強く打ったみたいで思うように立ち上がることができない。


「参ったな……。打ちどころが悪かったみたいか。」

「これくらい大丈夫だって……。」

「いや無理するなって!悪化されたらこっちも困るしとりあえず安静にしとけ。」


 菜月はやっと分かってくれたのか、黙って頷くと、そこに佇んでいた。


「……ていうか花園と開登はどこに行ったんだろな。」

「分かんない。先行ったのかな。」


 しかし、俺と菜月が意を決して穴に飛び込んだのは、開登と花園が落ちてからすぐだった。行ってしまうことなんてできないはずなのに、この部屋には2人はいない。


 と、なると、穴に落ちてからここに至るまでの間で、道が分岐していたと考えるしかないのか。それすらも可能性は極薄なのだけども。


「……俺も分かんねえ。」


 でもそんなことは今更考えても遅い。今はこの洞窟から脱出することだけを考えよう。


「でも、先行ってたとしたら、私達も早く追いかけなきゃ。そのために自分から飛び込んだんだし、ね。」


 確かにその通りだ。でも、菜月の腰は負傷していて、動くことすらままならない。


「でも、お前体……。」

「だからこんなもの……ってやっぱ無理かあ。」


 そう言って再び菜月は体を起こそうとするも、やはり腰は痛いらしい。


 この状況、八方塞がりというしかない。俺が何もしなければ。


「しょうがねえ。これでいくぞ。」


 俺は尻を菜月に向けて座って、両手を後ろに伸ばす。


「……おんぶするってこと?この歳にもなって。」

「って言ったって、それしか方法がないんだから仕方ない、だろ?」


 すると、いきなり俺の首に後ろから菜月の手が巻かれた。そして、後ろに体重がかかった。菜月は黙っておんぶする案に了承したのだ。


 とても温かった。女子をおんぶして歩くなんて初めてだった。


「自分からおんぶするって言ったんだから、絶対に最後まで私を運ぶのよ。いい?」

 

 全く、昔からこの人はこういう時、素直に表現できないんだよな、と思いつつ、短く返事をした。


「……へいよ。」


 でも、そこもいいんだよな。


 そして菜月の体を両手で支えて、俺は立ち上がった。その時、俺の体は感電したかのようにビビッと震えた。


 やっぱりだ。間違いない。ーーー俺は昔ここに来たことがある。


「……修どうかしたの?」 


 菜月が俺の心の何かを悟ったようだった。部屋からは1本だけ道が開かれていた。その道を歩きながら俺は応答する。


「なあ菜月。突然なんだけども、俺、昔ここに来たことある。そんな気がするんだ。」

「……うそ、私もそんな気がしてたんだけども。」


 !?と、いうことは……。


「じゃあ、俺と菜月は一緒にここに来たことがあるってことか!?」

「というか、私、うっすら覚えてるの。」


 俺は目を見開いた。


「小さい頃、私と開登と修で、ここに来たこと。」


 俺はその言葉で初めて全てを思い出した。8年前のあの夏の日の事。


「……俺も今、思い出した。」 

「実は栞にもこの話言いかけたことあるんだけどね。」

「言いかけた?」

「そう。部活の練習試合で、1番最初に試合消化し終わったから、部室で雑談してたんだけど、その時、栞から小さい頃の修と開登の話が聞きたいって。」


 花園が、そんなことを思っていたのか……。


「でも、先輩に呼ばれちゃって結局最後まで話してないんだけどね。」

「花園には言わない方が正解じゃないのか。この話は。」


「……そうかもね。」



「今日は何して遊ぼっか?」


 その日はいつものように家の周りで集まっていた。2学期の終業式のおかげで、小学校も午前で終わって、午後はぽっかり空いていた。


「サッカーやろーよー。」


 修が持参したサッカーボールを2人に見せる。でも2人はあからさまに嫌そうな顔をして拒否する。


「サッカーは飽きたー!やっぱりテニスだよ!」


 朱音も持参したテニスボールとラケットを2人に見せる。しかし、2人はそれすらも飽きたという顔。


「テニスも飽きたんだよなー。」

「じゃあ何するのよ!」


 何もかも否定されたら、若干苛立ってくるというもの。しかし、開登には考えがあるようだった。


「たまにはさ、ちょっと遠くのとこ行ってみねえ?」

「遠く?」


 2人は声を揃えて言う。


「そうそう。実はさ、電車でちょっと行った先に、でっかい山があるんだ!前ちょっと父さんと行ったんだけど、そこを探検しない?3人で!」


 当時の3人にはそこがとても偉大な場所のように思えた。初めて自分達の殻を破って、外の世界に飛び出していく気持ちがしたのだ。


 冒険という響きもとても心地よかった。


「行く!!」

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