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デパートにて(加咲)

夢のようだ。玉城先輩と触れ合っているなんて。

デブで根暗な私は男子とまともに話したことがない。デブネタをいじられがてら時々男子との会話の輪に入ることはあっても、男子が私の事を認識した時間なんて一秒も無いだろう。

その私が、男子の腕に抱きつける日がこようとは。


はっちゃんに背中を押され、ダメ元で今度の土曜日遊びませんか、と先輩にラインを送ったのが三日前。

送った後に「うざがられたらどうしよう……」と後悔し、ラインのコメントを削除する方法を検索し始めた瞬間に、先輩から「いいぞ」という返信がきたのだ。

それから、私は浮足立った。

まずはっちゃんに連絡し、どうすればいいのか指示を仰いだ。

結局、心がフワフワしてはっちゃんのアドバイスがまともに聞けなかったので、「とりあえず、はっちゃんも来て」とはっちゃんを誘ったのだ。

それから服選びも大変だった。

先輩の隣を歩く以上、醜い姿はさらしたくない。しかし、今さらダイエットなんて無理だ。一五年間増える一方だったこの「太み」を三日で減らすのは不可能である。ならば、少しでも見栄えよくする、という方向でこの脂肪を誤魔化すことにした。

それには妹の力を借りた。我が家は遺伝的にデブの家系なので、妹もデブだが、妹は私と違って明るいデブなのだ。社交的で、一応何回か男友達とも遊んだ経験があることから、妹のアドバイスはそれなりに参考になった。

あとはデート……先輩はデートじゃないと思っているだろうが、私はこれをデートとして換算するつもりだ、だって今後一生デートなんてする機会無いだろうし……で失敗しないコツをネットで検索し、当日に備えた。


さて当日になったのだが、先輩と腕を組む、という最大にして最高の目的は果たせたので、正直もう満足している。「先輩の腕の感触」という素晴らしい思い出だけを残して家に帰ってもいいくらいだ。

そういえば、どこかで聞いたことがある、「男性の二の腕の硬さは、その男性のアソコの硬さと同じ」だって……

これが先輩のアソコの硬さなのか!

揉みたい。揉みほぐしたい。でもさすがに露骨に揉んだら先輩怒るだろうし、どうしよう……

とりあえず、先輩の腕に胸を押し付けて、胸にこの腕の硬さを覚えさせよう。無駄に出っ張っているせいで、胸が腕に当たってしまうのは不可抗力……先輩もそう思ってくれるはずだ。ごく自然な姿勢で先輩の腕の硬さがわかる。このデカいだけの脂肪の塊が初めて役に立つ時が来た。まさか自分がデブであることを感謝する日がこようとは!


「先輩、これなんてどうですか?」

「うん? ああ……いいんじゃないか」

「先輩さっきからそればっかりですよ」

「……そうか?」


先輩の服を見るということで、デパートのメンズコーナーまでやってた。さっきからはっちゃんがいろんな服を先輩に見せているが、先輩はどこか上の空だ。


「先輩がちゃんと相手してくれないなら勝手にすっごいコーディネートしちゃいますからね」

「……勘弁してくれ」

「ダメですー! えーと、これとこれと……」


はっちゃんは先輩に似合いそうな服を次々と見つくろう。いつもの先輩ならチョップか何かして止めるところだが、やっぱり今日の先輩はちょっと変だ。静かにはっちゃんの暴走を見守っている。

私はというと、先輩がはっちゃんに気を取られている間に、胸を腕に押し付ける作業をより入念に続けている。ついでに先輩の手を撫でてみたりした。

かなり大胆な行動だが、先輩はまったくこちらを見ず、さらにははっちゃんの方すら見ず、なぜか天井を見ているので、私のやっていることに気付いてすらいないだろう。


「先輩、すごい良いの見つけちゃいました……て、どこ見てるんですか?」

「……」

「天井に何かあるんですか?」

「……このフロアに蛍光灯が何本あるか数えてた」

「はあ」


先輩は不思議な事をしているが、それは私にとっては好都合だ。ここまでやって蛍光灯なんか気にしてるのなら、きっともっと大胆な事をしても大丈夫だ。

そう思うと、なんだかムラムラしてきた。普段ははっちゃんのセクハラを見て歯噛みしているが、私だって先輩にセクハラしたいのだ。

先輩の指に自分の指を絡める。恋人つなぎ、憧れていたのだ。先輩の大きくてごつごつした指は男子特有の力強さを感じる。この指でアソコをいじられたら最高に気持ちいいだろう。

ふと顔を上げると、先輩の横顔……というか耳があった。美味しそうな耳だ。甘噛みしたいが口が届かない。仕方なく軽く息を吹きかけるだけで我慢する。


「先輩、やっぱりですね、先輩はもっと露出を……先輩?」

「……」

「先輩? 先輩ってば!」

「……えあ!?」

「何ボケッとしてるんですか? もしかして調子悪いんですか?」

「そんなこと……いや、あるな、悪いが腹の調子がちょっと……」

「え、大丈夫ですか? ……帰りますか?」

「いや、トイレに行けばスッキリすると思う……加咲」

「は、はい!?」


どうにかして先輩の手を股間に押し付けられないか悪戦苦闘している時に、いきなり話しかけられたものだから驚いて声が裏返ってしまった。ちょっと恥ずかしい。


「トイレに行きたいんだが、手を離してくれないか?」

「あ、わかりました……」


名残惜しいが仕方ない。なんだったら先輩のトイレの中までついて行って先輩の排泄のお手伝いをしたいところだけど、さすがにそんなことやったら変態認定されちゃうだろうから大人しくしておこう。


先輩はお腹の調子が悪いらしく、もぞもぞとした妙な歩き方でデパートのトイレに向かって行った。先輩が戻ってきたら、今度はどんなセクハラをしようか。


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