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露出狂(秋名)

「はっちゃん」


全校集会を終え、他の生徒たちでガヤガヤと騒がしい廊下を歩いていると、後ろから話しかけられた。


「はっちゃん、今日ヒマ? 遊ばない?」


咲ちゃんだ。最近よく学校の近くにあるアニメショップに誘われる。私もアニメは見る方だけど、咲ちゃんほどガチじゃない。


「うーん、悪いけどパス、今日早く帰ってこいって親に言われてるからさ」

「まさか露出狂で? はっちゃんの最寄駅だよね?」


先ほどの全校集会の内容は「露出狂が出没するから気をつけましょう」だった。しかも場所はうちの家の近くの駅。

まあ、うちの近所じゃ有名な噂だったから、私からしてみれば今さらな話だったけど。


「まあ、そんなところかな……」


そんな露出狂対策として、うちの町内会で「見回り」を行うことが決まった……らしい。

今朝、一方的に母親からそう言われ、なぜか私がその見回り役になってしまったのだ。


まあ、消去法的に私になるしかないのだけど。お父さんは見回りの時間までには仕事から帰ってこられないだろうし、お母さんは夕飯を作ったりとか家事をしなければならない。兄の卓巳は論外。あれは変態に悪戯されてしまう立場だ。


「あ、そういえばさ、その露出狂ってやっぱり女の人なのかな?」

「え? なんでそんなこと聞くの?」

「いや、もし男の人だったら……とか考えない?」


咲ちゃんが少しニヤついている。

咲ちゃんの気持ちは分からなくもない。確かに男の露出狂なんていれば、むしろこちらから喜んで見に行くだろう。見てほしい向こうと見たいこちらのWINWINな関係になれる。


「咲ちゃん、AV見すぎ」

「そ、そんなことないよ、本当にいるかもしれないじゃん」


だが、そんな奇特な男性は存在しない。いたとしてもAVの中だけだ。


「じゃあ、咲ちゃん、今日の夜うちに来てよ、露出狂対策に見回りとかいうのやらされるらしいからさ、一緒に男の露出狂探そう?」

「それは……パスかな……」


ほらやっぱり。咲ちゃんも男の露出狂なんていないってわかっているんだ。




学校から家に帰り、夕食を食べながらテレビを見る。普段はこのままお風呂に入って部屋に戻るのだけど、今日の私はここから一仕事ある。


「発子、そろそろ」

「はーい……」


お母さんに声をかけられ、部屋着から適当な服に着替えると、玄関でサンダルを履いた。


「あなた、サンダルで行くつもり?」

「うん」

「走ったりしたら危ないわよ、普段履いている靴にしときなさい」

「面倒くさーい」


まあ、本当に露出狂を見つければ走って捕まえなければならないかもしれないが、そんな都合よく露出狂なんて見つけっこない。


「じゃあ行ってきまーす」

「会長さんの言う事はよく聞くのよ、危なくなったらすぐに人を呼びなさい」

「はいはい」


母親が口うるさく言うのを軽く聞き流す。危ない事なんて滅多に起きないし。




家を出て、公民館に行くと、すでに近所のおばさんやお姉さんたちが集まっていた。


「こんばんは~」

「ああ、秋名さんのところの……ちょっと待ってね、割り当て決めるから」


軽く人だかりになっているところに声をかけると、町内会長の初老に入ったおじさんが反応した。何やらリストみたいなものを持っている。


「じゃあ、秋名さんは駅周辺をお願い」

「見回りってとりあえず変な人を探せばいいんですよね?」

「いや、言っちゃうと歩き回るだけでいいよ、何かあったら危ないしね」


それは見回りなのか? とも思ったけど、まあ適当にやればいいのかな。


それからしばらくしてから、町内会長が諸注意と見回り時間をみんなに伝え、集まった近所の人々は見回り場所に向かうことになった。


駅前は表通りこそ明るいが、裏道に入ると結構暗くなる。日が落ちるのが遅くなったとはいえ、もう7時を回ると街灯か店の明りが必要になってくる。


「やっぱりいるとしたらこういう暗いところだよねえ」


見つかるとは思ってないし、町内会長さんも探さなくてもいい的な事を言っていたが、それでも見つけられるのならば見つけた方がいい。明日以降、咲ちゃん達に自慢できるし。


私が雑居ビルの間を歩いていると、前を歩く人影を見つけた。


こんなところを歩くとは怪しい、もしや……という疑いが湧いて出た。

しかし、すぐにその疑いは消えた。

この特徴的な後姿に心当たりがあったのだ。


「玉城先輩?」


声をかけた人物がゆっくりと振り返る。


見覚えのある怖い顔。こんな夜道で見かけたら、それこそ気の弱い人なら逃げてしまうかもしれない。


「やっぱり先輩だ、後姿を見かけてもしやって思ったんですよね」


まあ、私は逃げたりなんかしないけど。

先輩の後姿は一目見るだけでもすごく印象に残る。普通の人よりも頭一つ大きくて、肩幅も広い。こんな体格をしていて、さらにうちの学校の制服を着ているとあれば、玉城先輩以外ありえない。


「先輩何やってるんですか? こんなところで」


先輩は電車通学をしていて、ここの駅も通るのだが、ここは先輩の下車駅ではない。

わざわざ途中下車して、しかもこんな薄暗い道を歩いているなんてどういうことなのだろう?


「……そういうお前こそ、なんでここにいるんだ?」


暗がりでよく見えないが、なんとなく先輩は顔がこわばっている気がする。


「私は見回りです」

「なんでお前がそんなことするんだ?」

「ここ私の地元ですし」

「地元? ……ああ、そういえばそうだったな」


先輩が顎に手を当てて頷いた。

まあ、何か用事があってここにきたのだろうけど、こんな暗いところを男一人で歩くなんて先輩も不用心だ。


「先輩も気を付けてくださいよ、この辺り変態が出没するらしいんで」

「そ、そうか……」

「なんか露出狂がいるらしいんですよね……て、そうか、先輩も今日の集会出てましたよね? なら知ってますよね?」

「あ、ああ……」


先輩は良い身体してるし、露出狂も標的にしかねない。


ふと、先輩のカバンから、見覚えのあるキャラクターが顔を出していることに気が付いた。


「あ、それ『モッモー』じゃないですか?」

「え?」


ピンクのデフォルメされた牛、『モッモー』。深夜アニメ『魔法少年マジカルミルク』に出てくるマスコットキャラだ。深夜アニメらしく、少年たちのお色気たっぷりなシーンが多いので、私も時々見ている。


「こ、これか? さっきゲーセンで取ってきたんだ」

「あー、ゲーセン行ってたんですね」


この駅の近くにゲームセンターがある。どうやら先輩は、そこに行ってUFOキャッチャーをやっていたらしい。


「そ、そうだ、ゲーセンに行っていたんだ、地元になくてな……」


先輩の地元のゲームセンターには『モッモー』のぬいぐるみは置いてないってことなのかな?

というか、先輩はわざわざそのぬいぐるみを手に入れるためだけに途中で降りたのか。


「先輩、深夜アニメ見るんじゃないですか、前は見ないとか言っていたのに」

「深夜アニメ?」

「……あ、気付かずに取ったパターンですか、何でもないです」


どうやら、地元にないというのはゲームセンターそのものの事だったらしい。うちの地元よりも栄えているのに珍しい。


「……そのアニメ、いつやってるんだ?」

「え? 金曜の午前1時ですけど」

「今度見てみよう……」


なんと、先輩が深夜アニメに興味を持ってしまった。さすがにあのアニメを見たら引くと思うけど。


「とりあえず先輩、一緒に駅まで帰りましょう」


アニメの事は置いておくとして、今は先輩の身の安全の方が重要だ。


「道ならわかる、一人で帰れるぞ」

「じゃなくて、先輩が一人だから危ないんです」

「……? どういうことだ?」


先輩はまったくピンと来ていない。まあピンときてたらそもそもこんな時間にこんな場所を歩いてないか。


「だから、ここで露出狂が出るんですってば、先輩が一人だと危ないでしょ?」

「……そういうことか」


先輩はようやく気が付いたらしい。自分がどれほど危険な事をしていたのかを。


「先輩は女に対してガード緩いですからね~」


まったくヤレヤレだ。こんな危なっかしい先輩を持つと苦労する。


「まあ、でも? 私がいれば大丈夫です、私が先輩を変態から守ってあげますから」

「ほう、誰が誰を守るって?」

「だから私が先輩をっ!?」


急に足が地面から離れた。

浮遊感。

そして脇の下が押さえつけられている感覚。


一瞬、混乱したが、すぐに「先輩に持ち上げられている」ということに気が付いた。


「ちょっ!? ちょっと何するんですか!?」

「お前が生意気な事をいうからだ」


先輩的には私が何か生意気なことを言ったらしいけど、私はまったく自覚がない。


というか、それどころじゃない。


抱っこやおんぶといえば女子たちの夢。男の筋肉を直に感じることができる強烈なスキンシップだ。特に先輩のような巨漢男子に持ち上げられるなんて滅多にされることじゃない。というか一生されない女子の方が多い気がする。


「ふ、ふおぉぉ……」

「ふん、わかったか、秋名?」

「わかりました! 先輩、すごいです!」

「わかればいい」


先輩が私を下した。


「……え? 止めちゃうんですか?」


せっかく持ち上げてくれたのに、すぐに下されてしまった……できればあと数分はやってほしかったのに。


「俺はアトラクションじゃない、ほら駅まで行くぞ、送ってやる」

「だから、送ってあげるのは私なんですってば」


先輩の気まぐれサービスがすぐに終わってしまったのは残念だけど、こんな暗がりにいつもいるわけにはいかない。

先輩が歩きだしたので、私は先導すべく早足で追い越そうとした。


しかし、先輩はすぐに足が止めた。


「先輩、どうしたんですか?」

「いや……」


先輩が顔を横に向け、何かを注視している。


私もそちらを見ようとしたが、なぜか先輩が隠すように自身の巨体で壁を作った。


「せんぱーい、何かあるんですかー?」


先輩の身体からなんとか覗きこもうと頑張るが、先輩は後ろ手で私を抑え込む。


「……秋名」

「はい?」

「この世界だと露出狂ってのは女がやるもんじゃないのか?」

「この世界?」


変な例え方だが、意味は分からなくもない。


「……いや、まあ普通は女じゃないですかね、男が露出狂なんてそんなのAVの中だけしか……」


そこまで言って、自分の失言に気が付いた。


「……あ、私は別にそういうエッチなビデオを見たことなんかなくて咲ちゃんが……」


ここで親友の名前を出すのは心苦しいが、嘘は言っていない。


しかし、先ほどから先輩の反応が少し変だ。なぜいきなり男の露出狂の話をし出したのだろう。


……まさか、先輩が見ているものは、AVの中にしかいないと思っていた例のアレ、すなわち……


「せ、先輩? まさか、そこにいるんですか? 露出狂が? 男の?」

「……」


先輩は返事をしない。

それはすなわち、肯定の証だ。


「ちょ、ちょっと見せてもらえませんかね! 私、町内会の見回りなので一応確認しなくちゃいけないんですよ! 本当に! 下心とか一切ないですから!」

「お前は見るな、そしてそこにいろ」


99%下心丸出しで何とか覗きこもうとしたが、先輩の迫力ある声に制止された。


「先輩? なんか、いつもより声にドスが効いてる気がしますけど……」


正直ビビった。

先輩は静かに怒るタイプだ。

この声からして結構腹を立てているらしい。


先輩が私を抑えていた手を放した。


まさか見せてくれるのか……? と思ったが、


「待てコラァ!」


まるでヤクザのような声を上げて横道に向けて走りだした。


「せ、せんぱーい……」


ぐんぐんと遠くなる背中に、私は声をかける事しかできなかった。




先輩が男の露出狂(と思われる人物)を追いかけてしまったので、私は一人になってしまった。


どうしよう、先輩はここにいろって言ってたけど、ずっとここにいるのも何だし……とりあえず、誰かを呼びに行った方がいいのかな。


ふと、視線を感じた。


「……?」


後ろを振り向くと、女物のトレンチコートを着て、帽子を目深にかぶった人物が、立っていた。


一目見て「いかにも」な格好をしていると思った。


まさか、この人……


トレンチコートの人物が前を開いた。


途端に目に入ってくる視覚の暴力。


私は吐き気を催した。なんで女の股間なんて見なくちゃならないんだ。


女はにやりと笑うと、前を戻して、走り去る。


「……この! 待て!」


私は気持ち悪さをこらえながら女の後を追う。


まさか本当に出るとは思わなかったが、とにかく、想定していた通り、捕まえてやらないといけない。この街には今、玉城先輩がいるのだ。万が一にでも、先輩があの変態の犠牲になってしまったら……考えたくもない。先輩は私が守る!


しかし、私と露出狂の追いかけっこは三分ほどで終わった。

私がサンダルを履いていたことが原因で。


全力疾走をしていた結果、サンダルがあさっての方向にすっぽ抜けてしまい、さらにそのままコンクリートを素足で思いっきり踏みしめてしまったのだ。


「いった!」


勢いは急には殺せない。止まろうとすると、コンクリートをより強く踏みしめねばならず、結果として、私は足の裏を擦り剥いてしまった。


「あーもう最悪……」


こんなことならお母さんの言うとおり普段の靴を履いてくればよかった。

しかし、今さら後悔しても遅い。私は飛んでいってしまったサンダルを片足ケンケンで拾いに行き、履いた。


当然ながら、もうあの露出狂変態女は影も形もない。


本当に最悪だ、足が痛いのを我慢しながら、とりあえず明るいところまで歩く。


ちょうどゲームセンターの近くまで来たところで、私の携帯が鳴った。


こんな時に何だ、とムカムカしながら着信を見たが、そこに書かれた名前を見て、すぐにそのむかつきは収まった。

『玉城先輩』と表示されていたからだ。


「もしもし……」

『秋名、すまん、あの変態野郎を取り逃がした』


先輩も追っていた露出狂を取り逃がしてしまったらしい。


『合流したいんだが、あの場所にいるか?』

「いえ、ちょっと……移動してますかね」


女の露出狂を追ったせいで、先輩と別れたあの場所からはだいぶ離れてしまっている。


『そうか、どこにいる?』

「えっとですねー……あいたたた……」


答えようとしたが、足の裏がひりついた。


『……どうした?』

「いや、ちょっと足の裏を擦りむいちゃいまして……」

『なんでだ?』

「こっちにも露出狂が出たんですよ」

『なんだと!?』


まさか露出狂が二人もいるとは私も思わなかった。いつからうちの街は変態の巣窟になってしまったのだろう。


「それで追いかけたんですけど、その時にサンダル飛ばしちゃって……」


本当に間抜けな事をしてしまった。今日お風呂にはいれればいいけど。


『……すぐにそっちに行く、今どこにいる?』

「ゲームセンターの近く……ですね」

『すぐに行くからな、動くなよ』

「は、はい……」


先輩の言葉には有無言わせない迫力があった。私が返事をすると同時に電話が切れる


「……ふう」


ゲームセンターの近くの地面に座り込む。ちょっと汚いけど、立っているのがつらいから仕方ない。


露出狂を取り逃がした上に怪我をしてしまう、という最悪の展開だが、このまま今日を終える、というのも癪である。『転んでもただで起きない』が私の座右の銘なのだ。


とりあえず先輩が来てくれるようだが、ここは一つ先輩に甘えてみようか。

さすがに先輩も怪我人をむげにはできまい。怪我で歩けないことを理由に、先輩に抱きつき、それでもって家まで送ってもらう、なんてどうだろう。

どうせならあの時みたいに抱っこしてもらうとかが最高なんだけど、そこまで高望みはできないから、上手い感じに言いくるめて肩を貸してもらうくらいがまだ現実的かもしれない。


私がどう言えば先輩を丸め込めるかを思案していると、


「秋名」

「あ、先輩」


玉城先輩が到着した。

走ってきたのか、少し息を切らせている。


「足大丈夫か?」

「うーん、大丈夫じゃないかもですね~」


なるべく自然な感じで同情を買うように言ってみた。


「……というわけでちょっと肩を……」

「見せてみろ」

「え?」


先輩はこちらの話を聞かず、私の足を持つと、そのまま持ち上げて足の裏を見始めた。

なんだか、異性に足の裏を見られるのは恥ずかしい。

先輩はどんな顔をして見ているのだろう?


チラリと見ると、先輩は真剣というか、神妙な顔をして私の足の裏をじっと見ていた。


「……先輩? 顔恐いですよ?」

「もとからだ」

「いや、それとは別に恐いというかですね……」


そこまで真剣になるような怪我じゃないと思う。ちょっと擦り剥いただけだし。


「歩くのは無理そうか?」

「一人で歩くのは無理そうですね~、ここはひとまず先輩の協力を得てですね、こう抱きつく感じで肩を貸していただけると……」


うれしいんですけどー、という言葉が続かなかった。

先輩が後ろを向いて屈んだからだ。


「……先輩? それは……」

「乗れ」

「え、いや、乗れって……え?」

「おんぶしてお前を家まで運ぶ、乗れ」

「えーー!? マ、マジですか?」


まさかのおんぶである。肩さえ貸してくれればいいと思っていたのにそのはるか上をいった。

先輩クラスの巨漢におんぶされるというのは、それこそ漫画やらアニメやらにしかない出来事だ。男性の大きな背中を身体で感じ、逞しい腕でガッチリと足をホールドされる感覚は、一度は体験したいものだ。

なによりも、おんぶというのは「男に大切にされている」という証しでもあり、深い関係でもなければされない。いうなれば、これ以上にないリア充アピールである。


「嫌か? それならタクシーを呼ぶ」

「い、嫌なわけないじゃないですか! というか、タクシーを呼ぶようなすごい怪我じゃないですよ!」


おんぶが嫌だなんてとんでもない。

それにこの怪我だって我慢すれば歩くこともできる程度のものだ。


「タクシーか俺におぶられるか、どっちだ?」

「お、おんぶでお願いします!」


迷いようのない選択肢である。おそらく、こんな幸運はもう巡ってこない可能性が高い。

私はすぐさま先輩の背中に覆いかぶさった。


「落ちないようにしろよ」

「は、はい……あの、腕とか首に回してオッケーですか?」

「ああ、大丈夫だ」


お言葉に甘えてやらせてもらった。

なんだか本当に恋人になったみたいだ。


「ふおぉぉー……!」


興奮と感動が声として出てしまった。


「秋名、お前の家がわからない、案内してくれ」

「え? あ、はい! 了解です! とりあえず駅から少し離れるんですけど」

「わかった、こっちだな?」


しかもこのまま私の家まで運んでくれるという。

近所の人々に自慢しつつ、さらには家について家族に紹介……は止めておこう。私の家族を見せるのはちょっと恥ずかしい。特に兄は見せられたものじゃない。


「お前のうちまではどれくらい歩く?」

「すぐですよ、すぐ!」

「そうか」

「……先輩、私、重くないですか?」

「軽いな、近所の猫だってもっと重い気がするぞ」


足を怪我して本当によかった。というか、これは明らかに釣り合わないレベルのお釣りが来ている気がする。明日死ぬかも。


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