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遊園地前編(玉城)

土曜日に投稿出来なさそうなので、今日投稿しちゃいます。

後編に続きます

『遊園地ができるらしいっすよ』


時刻は午後六時。飯を食う前に、リビングでテレビを見ていると、俺のラインにソフト部員の一年の坂口美波からメッセージが飛んできた。


まさか、美波の方から連絡が来るとはな。俺は少し驚きながら返信をする。


『そうなのか、ソフト部連中と一緒に行くのか?』

『その予定っす、それで彰先輩もどうっすか?』

『いいぞ』


これはチャンスだ。

俺は心の中でガッツポーズをした。

美波は俺が可愛がっている後輩の山口君が一目ぼれしている相手だ。もともと二人の仲を取り持つために、俺の方からラインの交換を持ちかけたのだが、体育祭も終わり、こちらから何か働きかけようと思っていた矢先、向こうの方から連絡をしてくれるとは……飛んで火にいる夏のなんとかである。


『こっちからも人を連れてきていいか?』

『え、マジすか?』

『まずかったか?』

『男っすか? 女っすか?』

『男だ』

『一人っすか?』

『一人だな』


もちろん連れて行くのは山口君だ。上手い具合に働きかけてアトラクションで美波と二人きりにしてやろう。


『ならオッケーすよ』

『よし、場所と集合時間を決めよう』


約束事はその場その場で詳細まで決めてしまった方が良い。特にあまり遊んだことのないやつらと複数人で遊ぶときは、時間をおくと調整が難しくなる。


『来週の日曜部活が休みなんで、その日にどうすっか? 場所は「ドリームランド」ってところっす、ネットで検索してほしいっす』

『オッケーだ』


ソフト部が休みなら当然山口君も休みだ。問題なく誘えるだろう。


『じゃあ、ドリームランドの北門の入り口に十時集合でお願いするっす』

『わかった』


俺は最後に美波にメッセージを送ると、すぐに山口君に電話をかけた。


数コールのち、


『はい、もしもし……』


山口君が応答する。


「山口君、朗報だ」

『なんですか? 朗報って……』

「デートだ、美波とな」

『え?』

「場所はドリームランド、日時は来週の日曜日、時刻は北口に十時だ」

『は? ちょっと待って下さい、いろいろと!』

「どうした、何かあったか?」

『いや……その……一気にいろんなことを言われて整理ができません……』

「それもそうだな、すまん、順番に話す……まずはデートが決まった、美波と」

『あ、あの……そもそもなんで僕の知らないところで僕と坂口さんのデートが決まったんですか?』

「正確に話すと、まず美波が俺を遊園地に誘ってきた」

『え!?』


耳をつんざく大声が受話器から聞こえてきた。普段、斜に構えている山口君にしては珍しい反応である。


『……それって……玉城先輩を坂口さんがデートに誘ったってことじゃないですか?』


そして、明らかに不機嫌そうな声色で山口君が続けた。


「いや、それが違うんだ、美波はどうやらソフト部の連中と一緒に行くらしい、多分、花沢と栞の三人組だ、いつもの三人だ」

『……あー、そういうことですか』

「そう、そういうことだ、それでなぜか俺も誘われたんだが、良い機会だ、俺は花沢と栞の相手をするから、その間に山口君は美波とのデートを楽しむと良い」

『……あの、それって、多分……』

「うん? 多分? なんだ?」

『……何でもないです、分かりました、それで場所と時間は?』

「集合場所はドリームランドの北口、そこに来週の日曜日、十時集合だ」

『はい、ドリームランドの北口に十時ですね、わかりました』

「ちゃんと格好良い服を着てくるんだぞ?」

『余計なお世話です……もう切りますね』


山口君から一方的に電話を切られてしまった。もっと先輩後輩の楽しい会話をしたかったのだが。




日曜日、午前九時四十五分 ドリームランド 北口


約束の集合時間より少し早いがちょうどいい時間の電車がなかったので、早めに到着してしまった。北口にはすでに二人の女子が到着している。


「あれ、栞はいないのか?」


俺が声をかけると、二人で話をしていた花沢と美波がこちらを向いた。


「お、おはよう、玉城君」

「彰先輩、おはようございますっす!」

「ああ、おはよう」


どうやら山口君もまだ来ていないらしい。


「栞先輩は、今日は家でゆっくりしたいそうっすよ」

「そうなのか、いつも三人一緒にいるイメージがあったけど」


だが、今回は好都合だ。山口君と美波を一緒にさせるために、俺が引き離さなければいけない人数は少ない方が良い。今回の場合は花沢一人で済ませられそうだ。


「そうなんすね……あ、ちなみになんすけど、奈江先輩のことをどう思いますか?」

「え?」


いきなりなんだその質問は。俺が花沢の方を見ると、花沢が美波の頭を叩いた。


「玉城君、ちょっとごめんね」

「お、おう……」


花沢と美波がこちらに背を向ける。

後姿を見るに、やたらと美波が小刻みに頷いていた。


しばらくして、二人が振り返る。


「なんでもないからね、玉城君」

「そうか?」


そういうことなら別に気にしないが。


俺は改めて花沢たちの格好を見た。

花沢の私服はパンツ姿に半そでのワイシャツというスポーツマンらしいさわやかなものだ。パンツは普通のデニムだが、ワイシャツは淡いピンク色で、やはり花沢はピンク色が好きらしい。


一方で美波はシックというか、地味めなこげ茶のワンピースだ。ワンピースがこれだが、美波という美少女が着るとすごいオシャレな格好に見えてしまうから不思議である。やはり美少女は何を着ても似合う。


「で、玉城君の連れてくる人って誰?」

「あー、もうそろそろ来ると思うんだがな……」


山口君は時間にルーズなタイプではないだろう。辺りを見渡すと、駅の方からトコトコと歩いてくる山口君がいた。


「ああ、来たみたいだ、おーい、山口君、ここだ」

「え? 玉城君の連れって山口……君?」

「そうだ」


山口君はこちらを見ると、歩きから小走りになって、こちらにくる。


「彰先輩、山口君と仲良いんすね」

「まあな」

「そういえば体育祭の借り物競争の時も山口君、彰先輩のところいってたっすね」

「お、よく山口君の事を見てたな」


これはいい傾向だ。

美波の方から山口君を注目していたとあらば、これほど好都合なことはない


「いや山口君っていうか、彰先輩っすね」

「俺か?」

「彰先輩超目立ってたっすよ、自覚なかったっすか?」


いや、体育祭で目立っていた自覚は十分あった。長谷川達からもいろいろ言われたし。

しかし、なるほど、見ていたのは山口君じゃなくて俺だったか……これは少し前途多難だ。


「すみません、お待たせしました」


美波と話しているうちに、山口君が俺たちのもとまで来た。


山口君は膝が少し見えるくらいのハーフパンツに、爽やかな色のワイシャツという格好だ。

格好良く決めてくるように言ったつもりだったが、山口君のファッションはあまり格好良い感じではなかった。どちらかといえば幼い感じである。

まあ、似合ってないわけではないし、これでもいいか。


「よし、これで全員そろったな」

「……渡部部長はいないんですね」

「栞は今日はいないそうだ……まあ、とりあえず遊園地を楽しもうじゃないか」

「オー! ……っす」


俺の呼びかけに応えたのは美波だけだった。山口君は当然のことながら、なぜか花沢も少し表情が硬いように見受けられる。一体どうしたのだろうか。




『新装開園フェア』という横断幕が貼られた入り口を通り抜け、遊園地の中に入る。ちなみに料金は全員個別で払った。せめて山口君の分くらいは払おうとしたのだが、山口君は俺が券売機で入場券を買う前に、さっさと券売機に並んで入場券を買ってしまったのだ。


新装開園と日曜日の合わせ技で、遊園地はかなりの混雑っぷりだった。これは一つのアトラクションに乗るのも一苦労かもしれない。


「何か乗りたいやつはあるか? なかったら、適当に並んでる列が少なそうなやつから行きたいと思うが……」

「はい! 自分、お化け屋敷行きたいっす!」

「え? いきなりお化け屋敷か?」


来て早々にお化け屋敷というのは、なんというか遊園地のセオリーではない気がする。まずはティーカップとかそこら辺のソフトなやつを満喫してからだと思うが。


「別にお化け屋敷はすぐに行かなくてもいいっす! でも絶対行きたいっす!」

「そうか、わかった、お化け屋敷は必ず行こう……花沢はどこかあるか?」

「え? うーんと……じゃあ、ジェットコースターで」


ジョットコースター。やはり遊園地に来たらこれに乗らなければならないだろう。俺も乗りたいとは思っていた。

ジェットコースターはこの遊園地の目玉アトラクションだ……いや、ジェットコースターは大抵の遊園地の目玉アトラクションなのだが、なんでも県内一の速度と移動距離を誇るそうで、入り口でもらったパンフレットとかにもデカデカとジェットコースターの写真が乗せられている。


「よし、ジェットコースターだな、山口君は何に乗りたい?」

「……僕は別に何でもいいです」

「うん、そうか……」


山口君のクールな性格はここではあまり発揮してほしくなかったな。四人でいるのだし、こう、積極的に楽しもう、みたいな空気を出してもらえれば、もっと盛り上がれるのに。

テンションさえ上げてしまえば、ノリで「美波と急接近」的なことも夢ではないはずなのだが。


「……ただ、ジェットコースターもお化け屋敷も人気アトラクションなので、パスだけもらって他のところを周った方が良いと思います」

「パス?」

「知らないんですか? 予約券みたいなものです」


俺はパンフレットを見た。

確かに予約パスというものが存在している。このパスは事前に受け取ることで、パスに書かれている時間帯にそのアトラクションに訪れると、優先的にアトラクション乗れる、というシステムのようだ。


「山口君、よくそんなこと知ってるな」

「……まあ、ちょっと調べたので」

「おー、すごいっすね、山口君」

「……」


美波に褒められて、山口君は少し顔を背けた。どうやら照れているようだ。可愛い反応である。


事前そこまで調べるとは……どうやら分かりにくいが、山口君は山口君なりにテンションを上げているらしい。良い事だ。


俺たちはパスを受け取った。さすが人気遊園地の人気アトラクションということで、まだ十時過ぎなのに、ジェットコースターの予約時間は十二時過ぎ、お化け屋敷の方は十三時だ。

ジェットコースターやお化け屋敷の時間になるまで、あまり人気の無さそうなアトラクションで時間を潰すことにした。



時刻は昼過ぎ。

俺たちは昼を済ませ、ジェットコースターの前まで来た。

パスを持っているおかげでスムーズに入れる……と思ったが、そこでふと立て看板に目が止まり、足を止める。


『ボクのしんちょうよりもちいさいオトモダチはこのアトラクションにはのれないよ!』


看板にはこの遊園地のマスコットが描かれ、その吹き出しにはそう書かれていた。


このジェットコースターには、身長制限があるのだ。


「玉城君、どうしたの?」

「いや、山口君がな……」


山口君は俺たちの中で、一番身長が低い。もしかしたら引っ掛かっている可能性がある。

俺と花沢と美波が山口君を見た。


山口君は俺たちの言わんとするところを察して露骨に顔をしかめる。


「……言っておきますけど、僕はそんなに背が低いわけじゃありませんからね」

「でも念のために測っておいたら?」


花沢の一言に、山口君は、それはもう「大いに気分を害しました」と言う顔をして花沢を睨んだ。


「まあまあ、ちょっと確認っすよ、確認」

「……」


美波から言われ、渋々とその看板の前に立つ。

幸いにも、描かれたマスコットの身長よりも山口君の身長の方が高かった。


「山口君、大丈夫だぞ」

「当たり前じゃないですか、このジェットコースターの身長制限は120cmです、乗れないのは小学校低学年までですから」


山口君が勝ち誇ったように言う。そうか、山口君は事前に色々と調べていたんだったな。


「そうだったのか、ちなみに山口君は身長何センチなんだ?」

「……さあ、乗りましょう」

「山口君、身長は……」

「早く乗りましょう」


俺の質問を無視して、山口君は早足で歩く。どうやら身長の話は山口君的にNGらしい。




パス用の入り口から入り、スタッフに案内され、ジェットコースターの前まで来た。

このジェットコースターは二人が並んで座るオーソドックスなタイプのものだ。

これはラッキー。山口君と美波を隣り合わせてやれば仲良くなれること間違いなしだろう。絶叫系のアトラクションで不安になった隣り合う二人が、安心するために手を重ねる……少しベタだが、十分だ。


「二列で並ぶみたいだ、誰と誰が隣になるかだが……」


俺が三人に問いかけるように言う。

ひとまず三人の意見は聞くが、俺の中では山口君と美波を隣同士にさせる気満々だ。どうにかして理由をつけて実現させてやらねば……


「自分が山口君と隣になるっす」


しかし、思案は不要だったようだ。まさか美波の方から提案してくれるとは。


「そうか、それじゃあ美波と山口君がペアだ、それでいいよな、花沢」

「うん、全然オッケー」


花沢も大きく頷く。

山口君には確認するまでもないだろう、そう思って、山口君の方を向くと、なぜか山口君は美波と花沢を交互に見ながら複雑な表情を浮かべていた。

どうしたんだろう、ここは素直に喜ぶところだと思うのだが。


「山口君、この組み合わせでいいよな?」

「……はい、大丈夫ですけど」


だからなぜ素直に喜ばないんだ山口君……まあでも、パスの一件の時のように、単に喜びが表面に出ていないだけなのかもしれないし、あまり気にしなくてもいいか。


「次のお客様、どうぞ」


スタッフからも促され、俺たちはジェットコースターに乗り込んだ。



席に座り、安全バーが下がる。

ジェットコースターに乗るのは中学生以来だ。絶叫系は苦手ではないが、バンザイしながら満喫できるかと言われるとそうでもない。まあ、大体みんなそんなものだろう。


「た、玉城君……」

「うん?」

「じ、実はその……あたし、ジェットコースターって苦手なの」

「え、マジか?」

「うん……」


これは意外だった。まさか花沢がジェットコースターが苦手だったなんて……そういうことなら、無理に乗らなくてもよかったのに。いや、俺も事前に聞いといてやるべきだったか……

……あれ、待てよ、確かジェットコースターに乗りたいって言ったのは花沢じゃなかったか?


「花沢、でもお前が乗りたいって言ったんだろ?」

「あ……」


なんだその、「しまった」って顔は。


「いや、でもその……定番、じゃない? ジェットコースターって」

「……ああ、そうだな、確かにそれはある」


なるほど、定番だからあの場で提案しておいたわけだ。花沢なりに空気を読んだんだな。

そういうことならば仕方ない。


「どうする花沢、止めておくか? 今ならまだギリギリで間に合うと思うぞ……」


まだ発進していないわけだし、急いでスタッフに言えば安全バーを上げてもらえるはずだ。


「あ、そこまでじゃないから……とりあえず、ちょっと不安なんだよね……」

「なるほどな、わかるぞ、その気持ち」


俺も大体同じような気持ちである。実際ジェットコースターを終えてみれば、きっとまたあのスリルを体験したいと思うのだろうが、その前段階の今は不安な気持ちでいっぱいだ。


「それならさ…………」

「え?」

「な、なんでもない……」


何やらボソボソと言っているが、花沢の声が小さすぎてよく聞こえなかった。


「それでは発進します、みなさん楽しんできてくださいね」


スタッフの女性が笑顔で言うと、ジェットコースターはゆっくりと動き出した。




さすがは名物と言われるだけはある。ジェットコースターを乗り終え、俺はへばるようにベンチ座った。


「いや、すごかったな、あの連続三回転は半端ないぞ」

「そうっすね!」


だが、決して嫌な思いはしていない。むしろが逆だ。もう一度乗ってみたいとさえ思っている。あの爽快感は癖になりそうだ。


「奈江先輩どうだったすか?」

「え、いや、まあ……」


美波に話しかけられるが、花沢の反応はあまりかんばしくない。どうやら俺と違って爽快感は得ていないようである。残念だな。


「……作戦会議っす」

「え?」

「うん?」


いきなり美波が手を上げて主張した。


「作戦会議? ああ、次に行くアトラクションを決めるのか? とりあえずお化け屋敷に……」

「違うっす! 奈江先輩! トイレまでお願いします!」

「わ、わかったから、引っ張らないで……」


美波が花沢の手を引きながらトイレに向かっていく。作戦会議とはトイレに行くことの隠語だったのか? いや、でも大声でトイレって言っちゃってるしな……


まあ、だがこれは好都合だ。こちらとしても山口君と二人きりになりたかった。


「山口君、どうだ、戦果の方は?」

「はい? なんですか、戦果って」

「なんですか、じゃない、せっかく美波と隣り合えたんだ、仲良くなれたんじゃないのか? 手とか握ったりさ」

「ああ……えっと……」


山口君が気まずそうに頭をかく。その反応は……


「……まさか、何もしなかったのか?」

「いや、だって、いきなり手を握るとかそんなハードル高い事できませんって……」

「そんな初対面ってわけじゃないんだし、山口君の方から提案すれば受け入れてもらえるだろう」


この世界での男子高生の価値は高い。余程性格が悪いとか、ブサイクとか、そんなのでなければ、女子から嫌われる、という状況は起きにくい。その点は自信を持っていいはずだ。


「……いや、それは……でも……多分、ですけど、坂口さんは僕の事なんとも思ってないと思いますし……」

「そうかもしれないが、そこを何とかするための今日の遊園地じゃないか、今日をきっかけに仲良くなっていくんだ」

「……」


これだけ言っても、山口君はまだふんきりがつかない様子だ。

仕方ない、ここは仲人役として俺が一肌脱がねば。


「次のお化け屋敷は、一人ずつ入らないといけないタイプか? それとも複数人でいけるタイプ?」

「二人以上じゃないといけないやつですけど……」

「一人じゃなきゃいいってことか?」

「はい……」


ならばよし。それならば俺の狙い通りの事が出来る。


「よし、ペアで入ろう」

「……ペアですか」

「まずは俺と花沢が入る、手をつないで」

「……はい」

「その後に、山口君と美波が手をつないで入ればいい」

「……!」


山口君はたじろいだ。


「で、でも……」

「今さらどうした、男を見せる時だぞ、山口君」

「お、男ですか……」

「そうだ、女っていうのは、自分を引っ張ってくれる男に魅力を感じるのだそうだ」

「そ、そうなんですか?」


いや、知らん。適当に言っただけだ。

だが、いつまでも煮え切らない態度では進むものも進まない。ここは山口君に発破をかけるためにも、適当な事を言わせてもらった。


「あの、ちなみに聞きたいんですが……」

「なんだ?」

「色々とアドバイスをくれるのはありがたいのですが、玉城先輩ってどなたかと付き合ったことはあるんですか?」

「……あ、花沢達が帰ってきたようだぞ、さあ行こうか」

「……」


俺はベンチから立ち上がると、花沢達を出迎えるように歩く。

山口君が白い目をこちらに向けている気がするが、そんな事は気にしない。


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