体育祭 騎馬戦(麗)
「へえ、イトコさんの運動会の撮影ですか」
「……ええ、親御さんに頼まれたので」
隣に座っている上田さんが、業務中にもかかわらず話しかけてきた。
本当に最近、この人は私に対して遠慮が無くなってきている気がする。
「いいですね~、私も行きたいなあ」
「……」
来るな! 絶対に来るな!
私は心の中で絶叫しながら無心でキーボードを叩いた。
カメラを買ったあの日から、何に使うのかをしつこく聞かれ続け、根負けした私は仕方なく白状してしまったのだ。
もちろん、全部は話していない。「高校生の男の子の体育祭の様子を撮影するため」なんて口が裂けても言えるわけがないのだ。
彰君の年齢と性別には触れずに、体育祭を運動会と言い換えて伝えている。嘘は言っていない。だって体育祭は高校の運動会だし。嘘を言わない代わりに本当の事を言っていないだけだ。
「やっぱり子供とか欲しいですよねえ……私も結婚したいですけど、島崎さんも結婚願望とかあります?」
「……」
「憧れますよね~幸せな家庭とか~」
「……」
……この人、わざと言ってる?
……私がここに左遷された理由、この人知らなかったっけ?
……社内不倫がばれて左遷されてここにいるんですけど!? 人様の家庭を壊した結果ここにいるんですけど!?
私はもう、無心でキーボードを叩いた。
この人のペースに巻き込まれたら死ぬのはこちらだ。無視するしかない。
「あ、そうだ、脚立持っていきます?」
「……」
「島崎さん、脚立」
「……」
「島崎さん、聞いてますか? 脚立どうしますか?」
「……脚立ってなんですか?」
あまりにもしつこく聞いてくるので、やむを得ず聞き返してしまった。
そもそもなんだ、脚立って。業務に必要な事なのか? 総務全般も私の仕事だが、いま現在、蛍光灯の付け替えが必要な個所なんて、無かったと思うけど。
「撮影する時にいるでしょう、脚立」
「……え?」
「だって、小学生くらいですよね? 脚立とかないと、他の親御さんが壁になって撮れませんよ、きっと」
「……あー……そうかもですね……」
あいまいにして教えた結果、見事に小学生の運動会だと勘違いしているようだ。
「私、実は持ち運べる折り畳み用の脚立を持ってるんです」
「はあ……」
「それ貸しますよ、軽いけど丈夫ですから」
「……いえ、ご迷惑でしょうし、結構ですから……」
「もう、そんな遠慮しないでくださいって! 私と島崎さんの仲じゃないですか!」
私とお前に一体何の関係があるというのだ。良くて同僚以下だと思え。
「それじゃあ明日持ってきますからね、使ってください」
「……」
「あ、お礼は別にいいですから」
「……ありがとうございます」
ここにきて、あいまいに教えた弊害が出てしまった。
この人はきっと100%善意でやっているのだろうけど、私はそれのせいで、わざわざその脚立を会社から持って帰って、さらに体育祭が終わった後、それをまた会社に持ってこないといけなくなった。まるで罰ゲームじゃないか。
「……君達、話してないで仕事してくれないかな?」
上司が何か言っているが、私はずっとキーボードを叩き続けている。上田さんは喋りまくって、手も止まってるけど。
さて、体育祭当日。
私は今日のために買ったカメラをチェックする。バッテリーも十分。
知り合いに会う可能性は限りなく低い。だが念のために帽子とマスクを装着している。体育祭に潜入して男子高生を撮影している女が、島崎麗であるということは、世間様にはバレてはいけない。悪評が広まる速さと怖さは、不倫がバレた時に充分思い知った。
あとは、暑い時のために水分補給のための水と、彰君の差し入れのために用意したお菓子と……
私は上田さんから借りた(強引に渡された)脚立の入ったバッグを見る。
はあ、とため息をついて、私はそのバッグを肩に担いだ。
駅までつくと、スマホで地図を見ながら、彰君の学校まで歩いていく。
校門は解放されており、そこから学校の敷地内に入っていった。初めて来た学校だが、グラウンドに行くことに迷ったりはしない。学校の構造なんてどこも同じようなものだし。
目的のグラウンドにつくと、すでに体育祭は始まっていた。
トラックの外側に生徒たちが座っており、さらにそこから少し離れたところに、親御さんの姿もちらほらと見える。私と同じようにカメラ撮影をしている人や、ブルーシートを敷いて座っている人もいる。
私の高校時代には、あまり親御さんは見に来なかったのだが……この高校では、そこそこ人がいると思う。
……と、観察している場合じゃない。私も早速撮影の準備をしないと。
彰君から体育祭のプログラムをコピーさせてもらったが、彰君の出場する競技は、開会式の次の次だ。モタモタしていられない。
私は二年生の席の後ろの方にいる親御さんたちの中にさりげなく入り、カメラを構えた。
……見えない。
私の身長があまり高くないせいもあるが、生徒席に座っている高校生たちの座高が、意外と高かったのだ。グラウンドで競技をしている生徒たちを上手く撮影できない。
どうする……と一瞬、悩んだが、解決策を肩に担いでいたことを思い出した。
私はバッグを下して脚立をだし、組み立てた。その脚立に乗ってカメラをグラウンドに向けると、少し俯瞰的な絵が撮れて、私の望みどおりのアングルだった。
この状況、正直かなり癪だが、背に腹は代えられない。後で上田さんにも、この脚立は役に立ったと言わなければいけないだろう。
プログラムを確認しながら、脚立に座って彰君の出番を待つ。この競技が終わればすぐに彰君が参加する二年生の二人三脚の番だ。
……うん?
先ほどから、私の前を女の子がちょこまかと歩き回っている。
なんだろう、二年生の席を覗きこんでいるようだが……もしかして、知り合いがいるのだろうか。
「……いないなあ、お姉ちゃん、もしかして適当なこと言った?」
どうやら、この太った少女は姉を探しているようだ。
ふと、その少女がこちらを見た。その瞬間、ギョッとした顔して、小走りでどこかに去っていった。
……なんだったんだろう?
私は小首を傾げた。
しばらくして、二年生の競技である二人三脚が始まった。
私は待ってましたとばかりに脚立に乗って、カメラを構える。決定的瞬間は逃さない。私は順番待ちしている生徒たちの顔をカメラのズーム機能で一人一人確認する。
……見つけた!
やはり頭一つ大きいおかげで見つけるのも簡単だった。
RECボタンを押して、彰君の撮影を始める。
彰君は心ここに非ずといった感じで空を見ていた。何か考え事でもしているのだろうか。彰君の隣には大柄な女子がピッタリとくっついている。何か距離が近いなと思っていたが、どうやらこの二人三脚は男女で組んでいるらしい。
「ちっ」
ごく自然に舌打ちが口から出た。
私はなるべく、その女子が画面に映らないようにしながら、撮影を続けた。
そして、とうとう彰君が走る番となった。待ってました。彰君の勇姿は余すところなく全て映してみせる。
……て、ちょっと待て、なんで彰君が隣の女子の腰に手を回している? そして女子の方も何で彰君の腰に手を回しているんだ? ちょっと馴れ馴れしすぎないか? そんなに仲の良い関係なのか、この二人は……
「……ちっ!」
さっきより大き目の舌打ちが出てしまった。あの女子生徒、何者かは知らないが、彰君に馴れ馴れしくするなど十年早い。彰君の腰を抱く女は私のはずなのだ。
パンッ!
ピストルが鳴ると同時に彰君たちが走り出す。
私は彰君にズームアップした。なるべく画面を彰君で満たす。隙あらば隣にいる大柄の女子がフレームインしてくるから、本当に鬱陶しい。しかも彰君は左側。つまりトラックのイン側にいるのだ。走っていくうちに彰君の姿が大柄な女子に隠れていく。
撮り逃がしてなるものか!
私は脚立から飛び降りると、彰君と並走しながら彰君の姿を撮影した。
二人三脚をしているとはいえ、彰君は速い。
そして、こっちは帽子にマスク、カメラ片手という重装備だ。並走するにもすぐに限界がきて、コーナー手前で私は走り疲れて止まってしまった。
後はカメラのズーム機能だけで彰君を追う。チョイチョイ隣の女子が映ってしまったが、それはもう仕方ない。あとで編集で切ろう。最近のカメラはパソコンを使わなくても映像のトリミングなどが出来る。私はこの日のためにカメラの使い方をマスターしたのだ。
私は乱れた呼吸を整えながら、ホームの脚立へと戻った。
脚立に座りながらプログラムを確認する。
次に彰君が参加するのは騎馬戦だ。
騎馬戦……いい。すごくいい。
男たちが筋肉にものをいわせて、争う姿は雄々しくて眼福ものだ。彰君はやっぱり一番上に乗って鉢巻を奪い取る役だろうか。体格の大きい彼ならばきっと素敵な事になるに違いない。
私は期待に胸を躍らせつつ、騎馬戦を待った。
時刻は昼前。私は立ち上がり、脚立に乗ると、カメラを構えた。
午前の部最後の競技、それが騎馬戦だ。
グラウンドの両端で、男子がそれぞれ白組と紅組に分かれている。アニメとか漫画とかだと、上半身裸になってやったりするのだけど、さすがにそんなことはしなかった。
私は白組の男子を一人一人撮影しながら、丹念に彰君を探す。
……いた!
ギャル男みたいな男子と何か話している。仲の良い友人だろうか。彰君は真面目な男の子だけど、交友関係は広いみたいだ。
ちょっとしてから、彰君が跪いた。さらに彰君の後ろに二人の男子が来て、彰君の肩に手を置く。そして、さきほどのギャル男がその腕にまたがった。
どうやら、彰君は上に乗る人ではなく、馬役らしい。彰君の勇姿をこのカメラにおさめたかったのだけど、それは無理そうだ。
私は少しテンションを下げながらも、彰君をズームして画面いっぱいに映し出す。
『これより騎馬戦を行います、白組、紅組は並んでください』
アナウンスが放送されると、騎馬が完成した彰君たちは、白線の前に並んだ。他の騎馬たちも前に並ぶ。相対する紅組の方も同じように並んでいた。
『騎馬戦のルールの説明をします、制限時間までに敵の大将の鉢巻を取るか、制限時間終了時に多くの騎馬を残していた方が勝ちです』
大将というのは、おそらく真ん中に陣取っている、堂々とした四角い顔の男子だろう。紅組の方は、逆にシュッとした男子が大将のようだ。
『制限時間は五分、それでは始めます』
パンッ!
ピストルが鳴った。それと同時に白組の騎馬がほぼ全員突撃をした。突撃していないのは彰君たちの騎馬くらいだ。
グラウンドの各所で鉢巻の取りあいが始まる。しかし、彰君の騎馬だけは戦闘が起きていない。
彰君の姿を長く撮影し続けられることはいいことのだが、せっかくの騎馬戦なんだし、もっと積極的に動いて欲しいと思う。個人的に彰君がもみくちゃにされる姿が見たいのだ。
そんな私の願望とは裏腹に、彰君たちの騎馬は一向に戦いをしない。彰君たちが積極的に行かないのもあるが、敵の紅組の騎馬たちも、彰君の騎馬を避けている感じだ。
カメラのズーム機能で避けている紅組の騎馬の子たちの顔を確認してみたが、みんな一様に彰君の顔を確認した瞬間に目を背けている。多分、みんな彰君の強面に驚いて怖がっているのだ。私は慣れているけど、初めての人は怖いだろう。
しばらくそのような状態だが続いたが、
パンッ! パンッ!
と、今度はピストルが二回鳴る音がした。
何事だと思い、カメラをズームダウンさせると、白組大将と紅組大将の騎馬が崩れている。どうやら勝敗がついたらしい。彰君にしか注目していなかったから気付かなかった。
『ただいまの結果を発表します、白組と紅組の大将が一騎打ちになり、同時に騎馬から落ちたため、いま現在残っている騎馬の数で勝敗を決めます』
同士討ちか、そういうこともあるだろう。
結局、彰君は一戦もせずに終わってしまった。もっと見ごたえある映像を撮りたかったのだけど……しかたない、この思いは午後のプログラムの応援合戦に持ち越しだ。
『一旦全員騎馬を崩してください、そして、まだ鉢巻が残っていて競技中に騎馬を崩していない騎馬の騎手だけ、その場に立って下さい、それ以外の人はみんな座って下さい』
アナウンスの指示通り、騎馬が解体され、その場に数人の男子が立った。
立っている数は……あれ? 同じじゃないか?
両方とも立っている人数は四人だ。
グラウンドの中にいる男子たちを含め、生徒たちがざわつき始める。この場合、どうするんだろう。引き分けになるのか、それとも再試合か……
『えー……残っている数も同数でした……今回の試合は引き分け、そしてまた再試合を行います』
歓声が上がった。
彰君は歓声こそ上げなかったけど、右腕でガッツポーズしている。
『ただし、再試合は騎馬の数を減らします、大将を合わせた五騎で競技を行ってください』
アナウンスの指示のもと、一旦、両組がグラウンドの両端に戻っていく。
また彰君が参加するチャンスはあるだろうか。彰君の騎馬は一番最後まで生き残った騎馬だし、可能性は十分ある。
諦めていた『騎馬戦の撮れ高』が手に入るかもしれない。
白組陣営の様子をズームアップで撮影する。何やらかなり話しこんでいるようだ。紅組の様子をチラリと見れば、すでに向こう側は五騎の騎馬の選出を終え、騎馬も組み終えて、陣営を区切る白線の前に立っていた。
白組大将の四角い顔の少年が、テント前まで走っていく。
そして何やらテントの前にいるマイクを握っている生徒と話すと、また白陣営の方に戻っていった。
『白組大将の遠藤君の要望により、白組の大将を二年の玉城君に変更します』
マイクを握っていた生徒が、スピーカーを通してそう宣言した。
玉城……? 玉城って、やっぱり彰君のこと? 二年生で白組、彰君以外の玉城姓がいるのなら……いや、そんなよくある苗字でもない。ということはやっぱり……
アナウンスに観客席の生徒たちがざわつく中、白組が騎馬を組んだ。
真ん中にいるのは彰君だ。
なんということだ、まさか彰君が大将に大抜擢された。こんなことがあるだろうか。もしかしたら神様が私の願いを聞き届けてくれたのかもしれない。
私は彰君に向かって、可能な限りズームアップした。その表情は緊張で強張っているように見える。ただでさえ怖い顔がさらに厳めしいものになっていた。
絶対にこのフレームから彰君を外すわけにはいかなくなった。五分間に全神経を集中させる。
パンッ!
ピストルが鳴った。
しかし、彰君は動かない。どっしりと構えている。
そんな彰君に、紅組の走り込んできた一騎が相対した。
とうとう勝負が始まるか、あの雄々しい男同士の戦いが……そう思ったが、なかなか始まらない。明らかに紅組の騎馬が彰君を警戒して近づけないでいる。
彰君が強そうなのはわかるが、ここは思い切っていって欲しい。それでもって、軽く彰君の体操服を引っ張ってもらって、ちょっと胸元あたりを露出してもらえれば、個人的には最高なんだけど。
しばらく見合っている様子だったが、さらにそこに紅組から二騎が加わった。三対一、彰君が囲まれる形になってしまったのだ。彰君の大ピンチである。
負けないで、彰君! ……あと、出来ればもみくちゃにされて!
私は願った。さきほど神が私の願いを叶えたように、今回も願いをかなえてくれると信じて。
果たして、紅組の三騎が一斉に彰君に襲いかかった。
右の騎馬が彰君に掴みかかる。しかし、彰君はその騎馬の腕を掴んで止めると、そのまま思い切り引っ張った。右の騎手がバランスを崩す。いいぞ、彰君、その調子。
正面の騎馬と左の騎馬が同時に彰君に襲いかかる。左の騎手が彰君の胸ぐらを掴みかけたが、その手は空を切った。惜しい。もう少し頑張ってくれれば彰君の体操服を掴めたのに……じゃなくて、良かった、危うく彰君が掴まれるところだった。
そこへバランスを立て直した右の騎馬が参戦し、一気に乱戦状態になった。
左右の騎馬が彰君の両腕をつかんで引っ張るが、逆に彰君がそれを引っ張り返す。さらには正面の騎馬が彰君の体操服を掴んだ。逃れようとする彰君、しかし正面の騎馬は彰君の体操服を引っ張る。
私はその瞬間に、ボタンがへこむ勢いでズームボタンを押した。彰君の鎖骨から胸筋あたりまでが露出するその決定的瞬間をカメラに無事収めた。
「よし!」
撮りたい絵が撮れたので、思わず声に出てしまった。
正面の騎馬の彼は大変素晴らしい働きをした。今日のMVPは君だ。
そこから私は三人の男たちにもみくちゃにされる彰君をとにかく撮影し続けた。
永遠に続いてほしいとさえ思ったが、無情にも、一分ほどでこの攻防は終わってしまった。
パンッ! パンッ!
ピストルが二回鳴る。
二回鳴らすということは、騎馬戦終了の合図だ。
彰君の鉢巻は取られていない。
ということは……
『紅組大将の鉢巻が取られました、白組の勝利です』
このアナウンスで、白組の生徒たちが湧いた。
周りの歓声に比べて、彰君は静かなものだ。おそらくは激戦で疲れていたのだろう。しかし、右腕で小さくガッツポーズをしているところは撮り逃さなかった。
騎馬を下され、歩く彰君。
その彰君が体操服の裾を持つと、それで顔の汗をぬぐった
瞬間、チラリと見える彰君のおへそ。
「よっし!」
それが撮れた瞬間、思わず声に出してしまった。
男子高生の何気ないへそチラ……こんな至高のチラリズムをゲットできるなんて、なんてラッキーなのだろう。最後に素晴らしいものをくれて、ありがとう、彰君。
私は満足してカメラのスイッチを切った。
「すみませんが……」
「はい?」
声をかけられたので、隣に目を向けると、ジャージ姿の、見るからに体育教師が、眉をひそめながら立っていた。
「……先ほどから、カメラで生徒たちを撮っていたようですが、ご家族の方ですか?」
「え、と……家族ではないんですけど、親戚の子を撮っていて……」
「ちょっとカメラの映像、確認させてもらっていいですか?」
「え!?」
体育教師の目が明らかに不審者を見るそれだ。
確かに今の私は、帽子にマスクをつけて、カメラを撮影している。傍から見れば、不審者そのものだ。
「ちょ、ちょっと、それは……」
「何でできないんですか?」
「いや、出来なくはないんですけど……」
映しているのは親戚の子である彰君だから、「親戚の子を映している」というのは事実だ……しかし、不自然なズームをしてしまっているから、『誤解』を与えかねない。特に最後らへんは、私の歓喜の声が入っちゃってるし。
「そうですか、それなら……ちょっと来て頂けますか?」
「え? え?」
「いいから来てください」
「ま、待って、ち、違うんです……」
私は腕を体育教師に掴まれると、まるで犯罪者のように、連行されてしまった。