女権
彼女[優生女性]らは、社会的に『勝ち組』となること、あるいは他人に先んじ、人の上に立つ人生を歩むことが、最初から遺伝的に約束されて生まれてくる。身体的能力はじめ、あらゆる遺伝的な優位性がそうさせる。
そして彼女らが成長して、各々の分野で成功し、韓国社会で枢要なポジションを占め、元々持っていた生物学的な能力に加えて、社会的な地位と国民的な羨望を集めるようになる。さらに彼女らは母親となり、娘たちにその果実を確実に継承する。
ある段階から、彼女らは社会の先導者[リーダー]としてみなされ、制度的・あるいは法的にさえ守られ、尊ばれる存在となった。
現在では、優生女性を産むための卵巣手術の実施は、国家の諮問機関である帝国優生医学審議会の下で厳格に審査され、特別な認可が必要となっている。元々この卵巣手術には莫大な手術費用が掛かる上に、倫理面・法律面・特許面でバリアが多いから、この技術が国家によるコントロール下に置かれることはどうしても必要だった。結果として、帝国内で優生女性が多くなりすぎることは無かったし、帝国外の国々には優生女性が殆どいない(旧・日本には一人もいない)のも、こういった理由による。
時を経て、韓国における優生女性は世襲的な社会的階級となり、それは必然的に貴族制度に結実した。社会学者のマックス・ヴェーバーの『カリスマ的支配』の、究極的な形式と言えるかも知れない。彼女らは女権帝国の屋台骨を支える『貴族』となり、『平民』の保護者・監督者となった。
貴族家系においては女子が家督を相続し、男性は結婚すれば妻の家に入る。自然、平民世界も含めて、女尊男卑的風潮が形成され、法的にも女性上位制が謳われることとなった。兄は妹に従属し、夫は妻に、老いては娘に従属することとなった。
現在、大韓女権帝国における、貴族[優生女性]の人口比率はわずか0.02%だが、彼女らが国家の富の約85%を所有している。地方に広大な領地(荘園)を持ち、無数の領民を所有する。あらゆる直接税が免除され、逆に領民に対する地租等の徴収権を持つ。領地における警察権や簡易裁判権さえ認められている。
爵位を持つ貴族家は、植民地・属領を含む帝国国内に、一家平均で220ヘクタールの領地と、150戸・500人の領民を持つ。さらに女権帝国による日本列島領有後、帝国貴族は、一家で300人程度の倭奴を私有することとなる。帝国が発展するにつれ、貴族が領する土地と民・奴隷の数は増えて行った。
貴族の子女は教育面でも優遇される。将来国の指導的立場に就き、あるいは国民から広く尊敬されうる人格が練成されるように、初等教育からエリート学・帝王学を施される。
成人して―場合によっては成人前から―社会に出た後には、国家官僚や軍官僚、あるいは貴族院議員や、農・商・工業経営体のトップとなる。
再びデータを見てみよう。身体的/頭脳的能力比の次は経済力(購買力)を韓日間で比較したデータを考察する。
開戦の前年、日本人の大卒サラリーマンの平均年収は、1年目で約37万5千ウォン(当時のレートで約375万円―ウォン円レートは韓国経済の爆発的発展とウォンの平価切上げ・円の度重なるデノミによって数年のうちに急激なウォン高円安となっていた)、10年目で平均年収は46万ウォン(同460万円)であるが、一方で、韓国人貴族子女が大学卒業後に受け取る給与所得は、月額平均、60万ウォン(同600万円)である。これは年収ではなく月収である。もちろん貴族子女は大学卒業後すぐに企業のトップと同レベルの待遇を受けるため、これほどの差が開いてしまうのであるが、それでも大きすぎる格差といわなければならない。さらにこの時期の日本の平均的サラリーマンが、週休1日・1日12時間労働が当たり前だった一方で、貴族子女は週休3日・1日6時間労働が一般的であった。そのため、先ほどの両者の所得格差を時給で換算すると…
・日本人・大卒1年目…97ウォン/時(965円/時)
・日本人・大卒10年目…118ウォン/時(1183円/時)
・韓国人貴族子女・大卒1年目…5万6千ウォン/時(56万円/時)
つまり、大学を出たばかりの韓国人貴族子女は、同年代の日本人の約577倍の給与を得ていることになる。さらに、彼らが1日12時間、劣悪な環境で過酷に働いて、やっと得られる日給を、たったの74秒で稼ぐことが出来る計算である。当時の日本人の一人頭の人件費は、韓国人貴族女性から見れば、殆ど塵ほどの重さもないほどのものだった。逆に日本人から見れば、韓国およびその社会を支える貴族女性たちは、見上げるだに眩暈がするほどの、圧倒的な高みにある至高の存在であった。絶対に敵わない。比較しようとするだけでも馬鹿げている。敵愾心を持ち、対抗意識を燃やすには差があまりにもありすぎる。
生まれつき抜群の身体能力・頭脳・精神力・そして恵まれた体格と美貌を持ち、社会的に身分が保証され、なおかつ国民の畏敬と愛慕を集める若く美しい女性たちが支配する理想の国。
これが女権帝国の女性上位制・貴族主義の概要である。
そしてみじめな日本国はその踏み台となったのだった。