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企画

『CANDY』と呼ばれた韓国崇拝スマホゲームの、隣国日本での輝かしい成果を、当時女権帝国の民衆は拍手喝采しながら眺めていた。

どこか、くすぐったいような、痒いところに手が届くような、小気味良さの混じった拍手喝采であった。

―わが女権帝国の『妹たち』は、日本でよくやっている・頑張っている―といった国民全体の風潮を、韓国のメディアもやはり敏感に感じ取り、隣国での目下の爆発的蔓延(パンデミック)的な崇韓現象を、『いっしょに楽しもう』と、ほくそ笑んでいた。

まるで桟敷席からの高みの見物、といった趣旨の番組やイベントが、韓国メディアの手で、この時期数多く催され、韓国民に提供された。


韓国公共放送EKBCのアナウンサーとなり、東京支局に赴任していたキム・サラン―かつて東京公国大学在学中にネット配信番組『Whips' Tokyo life』のメーンキャスターとして、小文でも紹介した―が、日本におけるK-popの『猛威』を取材する番組をソウルの本局に提案し、その『ドキュメンタリー』の企画責任者となった。


彼女は、この時期のK-pop狂騒の台風の目であり、『神女』とさえ崇められている韓国人の女性たちが、日本で握手会やハイタッチ会といった『ファンがアイドルと直接触れ合える』イベントを開催してこなかったことを、常々、もったいないと思っていた。

そして、『番組にすると面白いんじゃないか』と思って、企画書を提出した。


「けどね、握手会やらハイタッチ会やらは、日本の既存のアイドルグループが、それこそ『手垢にまみれるほど』やっているでしょう。新鮮味がないし、そもそも我が国の女性タレントは、あの国では『神様』として崇められているんだから、成り立たないんじゃないかしら? 『会いに行けない偶像(アイドル)』だからこそ、カリスマ的に長期間流行しているんでしょう」

企画の概略を説明した後にEKBCの主席プロデューサーにそう言われても、もちろんサランには秘策があって、その胸の内で鮮明な青写真を描いていた。

そして彼女の才能と立場をもってすれば、それを実際の映像として作り上げることは、比較的簡単なことだった。



◆◆◆

東京の沿岸部にある展示・イベント・レセプションのための大型施設内の、最大の収容能力を持つ巨大ホールを貸し切って、そのイベントは開催された。

関東地方はまだ蒸し暑さの残る初秋の日に開催されたにもかかわらず、そのイベントは日本全国から3万8,000人を超えるK-popファン―或いは『中毒者』―が殺到した。


対するタレントはハン・ジョンファやウォン・ミリといった元WHIPSメンバーを含んだ総員7名。

いずれもがネットゲーム『CANDY』の世界における『神女』・『聖女』で、日々哀れな迷えるユーザー諸氏から一日総額数千万円に及ぶ課金を巻き上げている、その精鋭たちであった。7名は、元/現アイドルや、女優、ファッション・モデルとしても活躍している面々であった。


この日、全国各地から集結してきた日本人たちは、まるでひとかけらの角砂糖に群がる黒山の虫ケラだった。

その虫ケラは、ひと粒ひと粒が、無力で、すばしっこいわりに食い意地だけは張っていて、砂糖―それは人間界(虫ケラにとっては想像を超えた存在)でしか精製することのできない、貴重品で、彼らの世界にはありえない甘い物質―を巣に持って帰って後世大事に少しずつ食む。。


虫ケラと違うのは、彼らひと粒ひと粒が、実に有用な対価―参加費・上納金―を持参してくることだった。このイベントの参加費はひとくち5,500円で、中には一人で1,000口を超える『ガチ勢』もいた。


神と人、あるいは人間と虫のように、それぞれの属する世界の隔絶した二者―韓国人女性と日本人ファン―の関係性を、もちろんサランら主催者たちは理解していた。

理解した上で、ほとんど面白半分で、次のような構図を考え出した。



・ 7人の韓国人女性タレントは、会場の壁際に設置された豪勢なカウチ―相撲取りが寝返りをうてるくらい大きい―の上に、正面向きに、脚をゆったりと伸ばした格好で寝そべっている。足には靴を履き、その足はカウチの端から少しだけ突出させる。


・ 会場内の日本人ファンは土下座させ(会場外での行列はその限りではない)、四つん這いで、数珠つなぎのように連なってタレントのいるカウチの足許まで這っていく。


・ ファンは、順番が来たら(つまり永い永い行列待ちの果てに、お目当てのタレント様の前まで辿り着いたら)、カウチに寝そべるタレント様に土下座叩頭してご挨拶した後、その【靴裏】に自らの頭頂部を擦り付ける。


・ その『瞬間』が済んだら、四つん這いのまま後ずさりして、もと来た出入口から退出する。これは、韓国人タレント様に最後までお尻を向けてはいけない、という配慮である。(例えば大公から何かの賞状を受け取った後、受賞者は回れ右せず、大公の方を向いたまま後ずさりする。これと同じことだが、このイベントではさらに、『擦り付け』が終わった後も四つん這いから立ち上がってはいけない)


・ 会場から退出した後は、立ち上がって二本足で歩いてもよい。

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