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天聴

『大学校二年生の時に、私、件の東京支社に遊びに行ったんです。そこで彼のことを発見して、兄から経緯を聞いたんです。

 東京支社のビルに入って、一階のロビーをエレベータ乗り場に向けて歩いていたら、はるか遠くのガラス壁の外側から、こちらに向けて土下座している人がいたんです。

 その時は、遠すぎて「人間がこちらに向けて土下座している」って分からなかったんですが、次の日も同じ場所で土下座していて、私、エレベーターに乗ってから、隣にいた兄に聞いたんです。「さっきガラス壁の向こうの外からこっちに向けて土下座している人、いなかった?」って。

 そしたら、こともなげに兄が言いました。

「あ、気付いた? ウチの奴隷。日本人で、もともとお前のファンだったんだけど、お前が大学に入って廃人みたいになっちゃったから、拾ってやったの。黙ってよく働くいいやつだよ」

 私、衝撃的で。。。というのも、今と違って日本人の奴隷は珍しい存在だったので、「日本すご」って思ったんです。事細かに兄にその「奴隷クン」のことを聞きました』


――それが名コンビ「ジョンファと忠犬シロ」の誕生秘話のスタートなんですね。


『そうです。ようやくスタートです。

 彼はその日、私の目に触れたことをスタッフさんの誰かから聞かされたのでしょう。ツイッターに上げた文章が残っています。。。

「赤心から発した私めの滅私奉公の行ひは、本日遂にかたじけなくも天聴に達せられた。恐懼」

 ほとんどミシマです(笑)。日本語に詳しい女性のスタッフさんに説明してもらって、「天聴」が、天子―日本では大公―のお耳に達した、って意味とか、聞いて笑っちゃいました。どこまで本気なんだろう、って』


――(笑)。どこまでも本気なんでしょう。


『(笑)』


――ところでジョンファさんはその時なぜ日本にいらしていたんですか。お忍びでいらしていたようですが。


『お忍び、というわけでもないですが(照)。実はここからが話の本題で、私、当時「現代性依存症」にすごく興味があったんです。興味があったというか、大学で専門的に勉強しようとしていました。ちょうど一般教養課程から、専門課程に進む時期でしたから。

「現代性依存症」というのは、ほぼ、「ネット依存」か「ゲーム依存」です。

 その中でも私の興味は「ゲーム依存」のほうでした』


『ゲーム依存はおそろしい病気です。詳しい説明はここでは省きますが、我が韓国でも被害者が多く、一連の研究と、それに基づく対策―主に利用規制ですが―がなされることで、我が国は「ゲーム依存対策先進国」でもありました。

 一方で日本は、ゲーム依存に対する対策と理解が我が国よりも遅れていました。

 そこに目を付けたのが、我が韓国政府です。

 当時はもちろん一般には明らかにされていませんでしたが、政府は水面下で「韓日版アヘン戦争プロジェクト」構想を練っていました。女権帝国はこの時すでに明確に大公国併合を「夢想」から「構想」に格上げしていました。つまり近い将来、日本を併合するために、19世紀中葉の中国―当時は清―に対する大英帝国の戦略を模倣しようとし、「近い将来」の具体的な期間を20年に設定していました。この期間設定は前倒しして達成されることになりますが』


――女権暦21年 韓倭併合。


『そうです。10年強の短縮成功です。

 とにかく当時、「韓日版アヘン戦争プロジェクト」で、「現代版アヘン」となりうる産業が模索されていました。通信機器・インターネット産業・SNSプラットフォーム・K-POPカルチャーなどが、軍事産業のような国策として、潤沢な予算を付けられ、産学官一体の研究構想が膨らんでいたのです。

 もちろん政府の真の目的―大公国の近い将来の併合―は極秘ですが、倍増した膨大な国家予算に支えられて、大学が急にこの分野の研究に力を入れだしたのは、ちょっと考えれば誰でも気付いたはずです。

 少なくとも、大学の「空気」が、確実に変わりました。

 その空気は当時ソウル帝国大学校の社会科学大学政治外交学部の学生だった私には、ぴんぴん感じられました。

 キャンパス全体に、学究的気運が盛り上がっていて、教授も学生もみんな肩と胸を膨らませて、鼻の穴を広げてる感じです。自分の出来る範囲で、この国策に奉じようと、研究・勉強に勤しんでいました。国策の押しつけが大学の自由な気風を損なう、みたいな、空気の読めないことをいう人は、教授にも学生にも殆どいませんでした。

 当時みんなの心の奥底にあった「日本を屈服させたい」という韓国人としての想いが、女権帝国の国策―極秘であったにも関わらず―と共鳴したのです』


『「現代版アヘン」というのは、本家の三角貿易と同じで、必要な条件は3つです。①相手国から金を巻き上げられる(面白いほどに売れる) ②国家主導で、比較的簡単に作ることができる ③あくまで民間による商業的通常貿易の形態を取る。

 そして出来れば④相手国の民力を弱体化させる まで出来たら、120点です』


『私の「日本で活動していた元アイドルで、一部のコアなファンからは神のごとく崇められていた」という大学入学前の経歴は、もちろん仲間の学生も、教授たちも知っていました。

 そして、私自身、この経歴を活かしたい、と強く希望していました。

 そして二年生の夏学期に履修した「現代性依存症概論」というゲーム依存などを扱った授業に、私はピンときました。ビビビッときました。「これだ」と思いました。ちなみにこの授業で提出した私のレポートが、こっそり政府高官に「参考資料」として輪読されていたと、後になって知りました。もちろん単位の評価は最高ランクの「A+」でした』


『そのレポートの8割までは、まじめな話をビッシリ書いたんです。けど、それだけだとつまらないと思って、最後に、「私のアイドル時代のファンが、韓国産ゲームの依存症にするのに向いているかもしれない。そこから広げていけるんじゃないか」って書いたんです。

 いま読んでも、けっこう「面白い」レポートになってます。ここに要約版があるので、どうぞ。読んでみてください』

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