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寓話2

――彼のようにどっぷりとハマっている男性ファンを目の当たりにすると、つくづく思います。『よくもまぁ、これほど完璧に手なずけたなぁ』って。感心しちゃいます。


『はい、手なずけちゃいました』と、ジョンファが照れながら言った。


『もっと褒めてください(笑)。けどホントの話、ここまで手なずけるの、けっこう大変だったんですよ。もちろん私だけの力ではないですが。。。

 彼は特殊な例です。さすがに、ここまできれいにハマった奴は珍しいのですが、けど、彼の周りには数千人のコアな一軍ファンがいて、さらにその周りには数万人の、貢献度は少し落ちますが、層の厚い二軍ファンがいます。さらにその周りには、明確なファン活動はしていなくても、K-POPに好意的な潜在的ファンが、おそらく数十万・数百万はいるでしょう。

 徐々に大きくなっていく、同心円の輪を思い浮かべて下さい。その中心・ど真ん中・一丁目一番地に、彼が居ます(笑)』


――K-POPは当時日本において、年間3,500億帝国ウォンを超える利益を我が国にもたらす巨大産業になっていました。さらに数値に表せない、我が国に対する日本人一般のイメージの向上と警戒心レベルの低下を含めると、その効果は絶大と言えます。


『はい。彼らには感謝しないといけないですね(笑)。こんなに見境なく韓国のことを好きになってくれてありがと、って』


――(笑)。彼に至っては「好きになった」では済まないくらいですね。その後、日本は、ジョンファさんも一時所属していたアイドルグループWHIPsの後輩たち若手の草刈り場になっていきます。


『なんだか西部開拓時代みたいですね。古き佳きアメリカ。ゴールドラッシュ、フロンティアスピリット、マニュフェストディステニー…』


――素敵な話です。その先頭にジョンファさんがいたと。


『私は幸運だったのでしょう。そしてスタッフさん含め、たくさんの良い仲間に巡り合えました。もしその役回りを担うことが出来ていたと言えるなら、それは幸運に依るところが大きいでしょう』


――ご謙遜(笑)


『いちおう、ね(笑)。むしろ、日本人が不幸だったと言ったほうがいいかも知れませんね。

 彼らにしたら、何の因果で外国の「草刈り場」にならなきゃいけないんだ?って感じじゃないですか。気付いた時にはもう遅い、ですけど(笑)。草刈り場であり、漁場であり、生け簀であり、牧場であり、狩場です。我々韓国人の』


――ジョンファさんからこのお話を伺うと、同じ韓国人として、何と言うか、「スカッ」としますね。胸に心地いいです。


『そこがいちばん大事なところです。経済効果といった実利の部分もさることながら、彼らの存在が私たち韓国人=女権帝国臣民の「自信」に繋がったんです。彼らは犠牲者というより、私たちの「強さ」を身をもって証明してくれた、生き証人でもあるのです。

 彼らのお陰です。ここでもう一度、あの従順で忠誠心溢るる「彼」の話に戻りますが、当時、日本の国籍を捨てて韓国人になりたいって、本気で考えていたみたいです。彼だけじゃなく、我が国の永住権欲しさに死ぬ気で頑張ってる子がたくさんいるって聞きました。微笑ましい限りです。

 彼らにとって残念なのは、当時、日本は二重国籍を認めていなかったし、そもそも日本側がクリアしても、女権帝国の永住権獲得のハードルはすごく高かったから、彼らには韓国人になることなんか、どう転んでも無理だったと思いますが』


――国籍遺棄運動の輪がどんどん広がっていったんですね(笑)


『そんなところですね(笑)。

 当時、コアな一軍ファンは、国籍だけじゃなく、私たちのためなら何でも捨てる感じでしたよ。お金はもちろん差し出します。国籍離脱と並んで、自己破産申請が彼らのブームだったんです(笑)』


――この年、一年間で5,000人がK-POP依存で自己破産していて、さらにその数はぐんぐん増加傾向にありました。未だ「日本大公国」という国があって、戦争も始まる前のこの時期に、この数です。


『…おそろしい数字ですね』


――ですね(笑)


◆◆◆

――ここからは、先ほどから何度か話に登場している「彼」ことハシバ・ヒデシロウくんとのこれまでの経緯(いきさつ)について聞きたいのですが、まず、彼との出会いはいつ頃のことだったんですか?


『…実は私も彼との出会いについては、ずいぶん昔のことで忘れてしまっていたのですが、このことについては逆にネットに詳しく書いてありました。それで私も思い出したくらいです。

 一番最初は、まだ私がWHIPsの現役メンバーだった高校生の時ですね。

 当時やってたネット配信番組で、「日本人のイタいファンのお宅訪問」っていう企画があって、それでミリと一緒に彼の家に行ってきたんです。生放送のロケなんですけど、韓国のファン向けのネット番組だったからかなり攻めた内容になっていました。

 詳しい話はネットに書いてあるので割愛しますが、彼、「ご本人登場」みたいになったときに嬉しすぎて腰抜かして動けなくなっちゃって…。最終的に、私とミリの目の前で、お漏らししちゃったんです。嬉しすぎて』


――前からですか?つまり小さいほう?


『前からです。「うれション」ですね。彼、自分の家なのに(笑)。床も一面ビショビショで。

 けっこう当時としては衝撃的で、韓国のファンのみんながネットで拡散してくれたんですよ。

 そのあと私、受験で活動休止してたんですけど、そのとき勝手に『お百度参り×100』とか言って、願掛けで日本全国の神社を回り始めたんです。「ジョンファ様が志望大学に合格しますように」って。その一部始終も、今でもネットで見ることが出来るんです』


――ジョンファさんが受験勉強していらっしゃる時、そのことは知っていたんですか?つまり日本のどこかのファンが自分の大学受験合格を願って願掛け苦行してる、って。


『知りませんでした。当時は勉強に手いっぱいで、SNSとか見てる暇が無かったし、見ていたとしても日本人の知らないファンの動向まではフォローできなかったでしょうね』


――(笑)。効果はあったんでしょうか。


『さぁ、どうなんでしょう(笑)。けど、結果、私はソウル大学校に現役合格できたので、結果オーライ、って感じですか? 少なくとも彼は死ぬほど喜んだらしいですよ、私の合格発表をネットで知って』


『私は晴れて大学生になれて、日本での芸能活動は完全に休止しました。

 大学校一・二年の間は、国内での最小限の女優業として、たまに舞台に立ったり、レッスンは受けていましたけど、基本、普通の大学生でしたから、日本人のファンの目に触れることは皆無だったはずです』


――この時期、つまりジョンファさんが大学生で日本向けの芸能活動をほぼ休止されていたころ、日本のファンは「天の岩戸」だって嘆いていたらしいですよ。日本神話に、太陽の神さまで最高神の女神が岩戸の中に隠れちゃって、「世界が闇につつまれて昼夜の区別が無くなった」みたいな伝説で、それと同じだ、って。


『なるほど。つまり私をその最高神と重ね合わせてるんですね。彼らなら、やりかねないな(笑)』


――熱狂的なファンにとっては、「昼夜の区別も無くなる」くらいの大打撃(ショック)、だったのでしょう。この時期ハシバ・ヒデシロウはどうしていたか、ご存知ですか。


『はい、やはり後で知りました。ネットで知ったのではなく、事務所の東京支社のスタッフさんから聞いたんですが…なんと、彼、そこでビル清掃 兼 事務所スタッフのパシリみたいなことをやっていたらしいんです』


――何ですか、それ?


『ちょっと私もよく分からなくて。何度も訊いて、やっと理解できました。

 実は私の兄が事務所の幹部社員で、当時東京支社だったんです。営業部長、だったかな。

 彼が一枚噛んだらしくって、当時私の活動休止で廃人状態だったヒデシロウくんを、半ば騙して、半ば自主的に、事務所ビルに入っていた清掃会社の社員にしちゃったんです。さらに空いた時間に事務所のスタッフさんたちが公然とパシリとして使っていたらしいんです。

 パシリっていうか、なんか、、、床の雑巾掛けとか、靴磨きとかさせていたみたいなんです。

 下僕?奴隷?ですね』


――つまり、ジョンファさんの芸能活動という精神的な支柱が失われて不安定になっていたファンを、上手に誘って、ちょっぴり騙して、奴隷にしちゃったってことですね。


『そういう感じですね』

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