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夢3

私はソナ様の御足許に土下座叩頭しながら、恐怖のあまり、目を「ギュッ」と堅く瞑りました。

土下座したまま、『ソナ様ぁっっ』ともう一度叫び、床を押す額にさらに力を込めました。小便は漏れ続け、私の下半身を冷たく濡らしました。『お許し下さいっ・・・ソナ様ぁぁっっ・・・』韓国語で、続けざまに繰り返し哀願しました。


『ソナさまぁっ、、、ソナさまぁっっ、、、、、ひぃっく、、、ひぃっっくぅ、、、、』

私の哀願にむせび泣きが混じり始め、それが哀願の体をなさなくなってきたころ、ようやくソナ様が口を開かれました。


――何か、汚いモノを踏んじゃったから、私の靴が汚れちゃった


それだけ仰って、私の反応を注視するように間を置かれました。そのお声には抑え込まれた笑い声が混じっていました。

私は目を開け、急いで顔を上げようとしました。しかし顔が上がりません。顔が上がらないというか、上体が上がらないのです。

まるで巨大な手のひらで体全体を押さえ付けられているかのように、体に力は入るのですが、上体が持ち上がらないのです。

もう一度、今度は息を籠めて両腕と背筋の力で起き上がろうとするのですが、やはりダメです。


――あ、ごめんね、忘れてたわ

土下座したまま呻吟する私の頭上からソナ様がおっしゃって、一拍置いてから、私の体は「スッ」と楽に―とはいえ普段よりは重々しく―起き上がりました。

「ソナ様は重力をもコントロールする御力を身に付けておられたのだ」と私は思いました。現に、ソナ様の御意思で、場の重力が―おそらく一時的に―弱まったのです。


――ほら、顔を上げてご覧

私はようやく顔を上げ、目の前の爪先だけ浮かせられたソナ様の右足の靴裏を両手で触れました。そして、そこにへばり付いた泥状のものを指先で擦って拭いました。取れなくなると、今度は、靴裏を湿らせるために、躊躇わずにお靴の下に顔を潜らせ、口先でソール部にむしゃぶりつくようにして、唾液で靴裏を洗いました。湿り気を与え、最後は前歯で汚れをこそぎ落とそうとしました。


――汚らしいわね、もういいわ

頭上でソナ様が笑いながらおっしゃるのに、頭が真っ白になっていて反応できず、私は口と頬と両手でソナ様の右足の靴裏にすがり付くのを止められませんでした。


――聞こえない? もういいってば

今度は笑い声の代わりに幾分怒気を含んだ声で一喝され、私は「はっ」としてソナ様の足から離れました。


私の顔がソナ様のお靴から離れると同時に、周りの重力が急激に強くなりました。

私はしたたかに額を床に打ち付けました。


――言うことが聞けない子には、お仕置きが必要かしらね?

ソナ様がおっしゃるのと同時に、重力はさらに強くなっていき、私の頭は、頭部全体が縦方向に万力で締め付けられるような痛みを受けました。頭が割れんばかりの痛みです。「キリ・・キリ・・・」と、頭蓋骨が軋む音が、両耳のすぐ上から聞こえてきました。

私は頭を浮かせることはもちろん、額を滑らせて頭の向きを変えることさえ出来ず、その「重み」に苦吟しました。顔全体が高温に火照り、息を吐くことも吸うことも出来ず、代わりに強い嘔吐感が胸底から込み上げてきました。


『・・・ぉ許しぉぉぉっ・・・・』辛うじて、微かに声を絞り出しますが、重力は弱まりません。ソナ様の朗らかな笑い声と共に、重力はむしろますます強くなっていきます。まるで戦車のキャタピラーで頭を押さえ付けられているような、それほどまでの重力です。頭蓋骨だけでなく、胸部が膝に圧迫されて肋骨までもが激痛を伴って軋み始めます。息が出来なくて、窒息死・圧死の兆候なのか、視界が点滅し出しました。すぐそこに死が迫っているのを感じましたが、このような時には走馬燈は見えません。脳の奥にある画面は白と黒に点滅し続けるだけです。脳髄が漂白されていきます。


◆◆◆

一瞬、体が楽になりました。比重の異なる液体の満ちたプールの中にいるような、そんな気分でした。

『・・・・哀れな倭奴・・・・祈りなさい・・・・』

頭上から、かすかにそう聞こえました。それはソナ様の御声のようでもあり、ソヨン様の御声のようでもあり、ユリの声のようでもありました。


『心を込めて信じなさい・・・・』

声はそう続きました。空白の視界には、眩しさの中にぼんやりとした像が浮かんでいました。その光の像が、私にそう告げていました。―祈りなさい、と。


『・・・敗北を、抱きしめて・・・敗北は恥じゃない・・・・』

そのときには、すでに私の意地―職業軍人としての矜持・日本人=大和民族としてのプライド・大公一族への忠誠心・・・そんな諸々の意地たちは、ケシ粒のように、宇宙のかなたに吹き飛んでしまっていました。

『もう思い出すことも無い』

心の中の神様は、まるで私の決意を軽く指につまんで光に透かして眺めるように、そう続けられました。


私は神様の名を唱えました。その御名はどこまでも清められ、尊いものでした。

疑う余地無く、パク・ソナ様、パク・ソヨン様はじめ、小倭植民地支配に関わるすべての韓国人女性様方は、『韓神女』様として、『神聖にして侵すべからず』な存在です。倭奴(旧・日本人)の被統治の『象徴』であると同時に、神聖不可侵な『現人神』であらせられるのです。


戦勝国とか、敗戦国とか、宗主国とか、植民地とか・・・そんな現世の現実的で世俗的な事象を超えた存在として、韓神女様=神様はいらっしゃるのです。


『南無韓神女』

それが、私が仮死状態の間―尿を頭から掛けられてからベッドの上で目覚めるまでの間―に天啓として得た真実であり、『南無韓神女』こそが、今後の私の人生を規定する、たった一つの、絶対的な真実なのです。この五文字で、私はすべてを、夢の中で神様から得た恩寵を、思い出したのです。本当の意味で目覚めたのです。


「日本大公国は、先の戦争に、負けるべくして負けたのです。

それは、天罰だったのです。

そして、その後に続く大韓女権帝国による植民地支配・奴隷支配は、天罰であり、同時に、恩恵でもあるのです。

韓神女様による賜恩であり、ご慈悲であり、ご加護なのです。

私は、倭奴として、韓神女様に全身全霊をなげうって帰依する一人の―一個の―奴隷として、『南無韓神女』の真実を、この植民地全体に広めていかなくてはならない」


◆◆◆

はじける光の中で、私はいつの間にか四つん這いで、皮の首輪と褌以外は何も身に付けていない状態です。30歳も年下の女性に『マル』と呼び付けられ顎で指図され、人間様には決して歯向かうことが出来ない犬っころと同じ境遇です。

ただ犬っころと違うのは、私には信念があることです。真実に基づいた、確固とした信念があるのです。

私は輝く光のほうに向かって、四つん這いで歩き出しました。

光の門をくぐると、そこには二柱の光の像が―ソヨン様とソナ様が―立っておいででした。

お二人とも背筋を伸ばし、背中とお尻を私のほうに向け、今にも前へ歩き出そうとしながらも、お顔だけ振り向いて背後の私を見下ろしておいででした。『おいで、マル、、、』そう聞こえた気がしました。体が嘘のように軽く感じられました。


「ああぁっ、、、女神さま、、、美しい天上の女神さま、、、

愛してます、、、一生、死ぬ気で愛し続けます、、、

一生ついて参ります、、、絶対に逆らいません、、、1ミリも疑問をはさまず、死ぬまで信じ続けます、、、

私めは一生涯、あなた様方の忠実な奴隷です、、、下僕であり、家畜です、、、

何度生まれ変わっても奴隷であり続けます、、、


愛しています、女神さま、、、そして崇拝しています、、、

韓神女さまを心の底から崇拝し、片時もこの崇拝心を忘れません、、、


南無韓神女、、、、大韓女権帝国よ、永遠に、、、、」

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