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教室

「パク・ソナのおもしろお手軽!倭奴矯正教室にようこそ」

妹のソナが急に茶番めかした小芝居を始めたので、ソヨンと、一緒に附いてきたメイドは、そのコメディ風の『ごっこ』に付き合うことになった。どうやらソナが、倭奴を素材にした料理教室の講師役、という設定らしい。ただ、最初に『矯正教室』と言ってしまっているあたりが、リアルでちょっと生々しいな、とソヨンは思った。


妹と歳が近いメイドのほうは早くもノリノリで、「よろしくおねがいしまーす。先生、私、アシスタントです」などとふざけだしている。ソヨンはちょっと笑ってしまった。

その間倭奴の二人は一様に、額を冷たい土の地面に押し付けていた。


「はーい。美人アシスタントのミンちゃんでーす。今日はよろしくねー」ソナが続けた。「さっきミンちゃんには教室で使う道具を準備してきてもらいました」


「まず、お水を使いまーす」言ってソナはいつの間にかメイドに持ってこさせておいた、500ミリリットルのペットボトルを受け取って、「量はこれくらいで良いと思います。そんなに沢山は使いません。普通の水道水でOKでーす」それからソヨンに言った。

「お姉ちゃん…じゃなかった、ソヨンさん、この教室のモットーは何でしたっけ? 覚えてますか?」

「え?」ソヨンは急に話を振られたのでびっくりして聞き返した。

「最初に言ったじゃないですかぁ?」

「あー、、、すみません先生。『おもしろ・お手軽』ってやつですね!」

ソヨンはようやく妹の『茶番』につきあう空気を呑み込んだ。

「ピンポーン! 正解です。面白くってお手軽なのに、効果はテキメン。楽しみながら、倭奴を『お利巧クン』にして、とってもキレイな土下座に矯正できちゃいます」聞いてソヨンはくすくす笑って頷いた。


◆◆◆

「ところで今日の主役の『素材』は生きてます? なんか静かですけど」

三人の足許に土下座していた丸山と77番は、どうしていいか分からず、ただ黙って額を地面に擦り付けていた。メイドが一人ずつ、順番にその脳天を爪先で軽く小突くと、『ビクッ』『ビクッッ』とそれぞれ大振りな反応を示した。

「だいじょうぶです、先生。ちゃんと生きてます」メイドが言った。

「OKです。ちょっと待っててねー」ソヨンとメイドは愉快がって笑った。


「水のほかには、ひも状のものを使います。ひも状のものは倭奴の数だけ準備してください。それほど長くなくてOKです。それから、言い忘れてましたが、この遊びは屋外で楽しんでください。ただしコンクリートの地面はダメです。庭とか花壇とか、土の地面です」

「質問です先生。土はどんな土がいいんですか?」すでにソヨンもこの『ごっこ』を楽しみ始めていた。

「いい質問ですね、ソヨンさん。できれば水はけのよくない、粘土質の土がいいんですが、別にどんな土でもいいですよ」

「てきとうですね、先生」ソヨンは笑って言った。

「はい、『お手軽』が大事ですから。とにかく土の地面と水、ひも状のもの、それから倭奴があればだいじょうぶです! さっそく始めましょう」


◆◆◆

姉とおそろいのガーデニング用のブーツとコートをパジャマの上に着て、夜中に揉め事を起こした2匹の倭奴にケンカの罰を下賜するため、屋敷の庭に降り立ったソナ。

いま足許に土下座している丸山と77番【29歳♂】の正面に立った彼女の胸は、今日何度目かのワクワク感に満ちていた。

無論、『屋敷に飼っている倭奴の土下座が下手だから訓練する』なんて方便に過ぎない。

久々に会う大好きな姉といっしょに楽しく遊ぶ―そのためのオモチャ以上の存在意義が敗戦国民であり奴隷である倭奴どもにあろうはずが無かった。


◆◆◆

「まず肩を抜いて、両腕を後ろ手に固定しまーす」ソナの明るい声。


三人のうち二人の影が地面に土下座する77番の背後に回った―視界には暗い地面しか見えない土下座姿勢の77番は、動く影の気配でしかそれを察知することが出来なかったが、ソナとメイドが彼の後ろに立ち、頭上に立ったままのソヨンと三人で、足許の彼を前後から取り囲んだ。


77番はソナ様のその明るい口調からはおよそかけ離れた怖ろしい内容の言葉を聞いて、「ヒエッ」と、素っ頓狂な声を漏らした―ソナは倭奴が理解できるようにわざとゆっくりとした韓国語で『宣告』した。丸山は黙って震えていた。

そして前後から韓国人女性様に取り囲まれてますます恐怖に陥った。


77番の背後に回ったソナはしゃがんで、怯えて慄く77番の右肩に右手をかけて軽く持ち上げると同時に、左手で肩甲骨の少し下の辺りを押して肩関節を亜脱臼させた。77番は「ギャァッ」と短く悲鳴を上げたが、ソナはそのまま左肩も同じように処理した。両肩を抜くのに30秒とかからなかった。

「これで抜けたの?」ソヨンは妹の手際の良さに、ちょっと驚いて言った。

「亜脱臼だから簡単に戻っちゃうよ。まぁまぁ痛いけどね」

メイドが「先生、こっちもお願いしまーす」と言ったので、ソナは「はいはーい」と今度は丸山の背後に回った。


丸山は右肩にソナの柔らかい手のひらの感触を覚えた。世の中にこれほど柔らかい物質があるのかと思うほど柔らかかった。

その一瞬の刹那の後、その手のひらに不意に強大な力が加わり、ゴリッ、という音と、それに続く激烈な痛み。失禁。息が出来なくなる感覚。悲鳴は上げなかったが、滲む脂汗と涙で目が曇った。

続いてソナは「こっちもね」と、丸山の耳元に囁きかけてやり、同じように左肩を抜いた。両肩が終わると、丸山の頭をポンポンと軽く叩いてやった。(痛かったでしょう。もう済んだよ)とでも言うように。事務的で機械的な作業ではあるが、これがどれだけ痛いか、ソナは理解していた。


「さて、これで下ごしらえはOK。次にひもを使います」

ソナは丸山の後ろで腰を落としたまま言って、メイドのほうを振り向いた。

ソヨンは、77番が、肩を外された痛みで体を波打たせていたので、それを押さえるように彼の後頭部を踏んでいた。


適当なひもが無かったので、メイドは使用済みのストッキングを二本、用意していた。普通の、何の変哲も無い肌色のストッキングである。その一本をソナに渡し、メイドが77番の、ソナが丸山の両手首を、それぞれ後ろ手に固く縛った。77番はあまりの激痛に体を動かし続けていたため、縛るのに少し手間取ったが、先に丸山を終えたソナが手伝って両上腕を押さえ込み、ソヨンが頭を強く踏んで固定することで、ようやく縛り終えることが出来た。そして三人は鞭を使って77番の土下座の姿勢を整えた。その間、丸山は肩を抜かれて両手を縛られながらも、激痛に耐え、綺麗な土下座の姿勢を作って、三人の作業を待っていた。

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