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発火

丸山と77番とが口論を始めたきっかけは些細なことだった。

77番が『ご褒美』を食べ終えた後、先ほど韓国人男性の使用人が地面に吐き棄てたガムを這いつくばって拾い上げるのが嫌で、上に土を被せて終いにしようと足で地面を擦っているところを、偶然通りかかった丸山に目撃されてしまったのだ。


「何してるんだ? 突っ立って?」最初は穏やかに質した丸山だったが、77番の近くに駆け寄って彼がやっていることに気付いて呆然とした。地面に落とされたゴミを隠そうとしている?

「どうして拾い上げて処置しないんだ? 何やってる?」


―このとき77番は、ソナから『ご褒美』を賜るという生涯初の栄誉に浴して、さらにはそれに含まれていた酒精による酔いから―彼は酒の匂いだけでも酔っ払ってしまうほど酒に弱かった―気が大きくなり、排他的になっていた。


「俺に指図しないで下さいよ、丸山さん。俺は神さまから、これを授かった、選ばれた倭奴なんすよ? 見えないんですか? これが」言って先ほど自分が平らげた饅頭の載っていた金皿を、丸山のほうに指し示した。

「なんだ!? 韓国人様のご命令が俺たちのすべてだろ!? ご命令どおりにせんか! 足で土を被せろと、ご命令されたのか??」

若い77番にすごまれて若干面食らった丸山だったが、踏みとどまって反駁した。金皿は敢えて見えないふりをした。そうしないと負けると思った。

「うるせーよ! 俺に指図するなって言ってるだろ! あぁ!?」

77番は完全に我を失っているようだった。ほんの僅かなアルコール分が、彼の精神を支配していた。さらに、ソナ様からご褒美を賜ったという身に余る栄誉が、彼を尊大に、向こう見ずにしていた。「俺は優秀な倭奴なんだ! てめえみたいな、へいこら土下座するしか能がない腐れ軍人崩れとは違うんだ!!」

言って丸山の左肩を、右の手のひらで強く衝いた。


その瞬間、丸山の中で何かが弾けた。

どうしてこんな若造に、そんなことを言われないといけないんだ?

相手は20以上も年の若い、旧・日本人なのである。旧・日本人にとっては、韓国人様への忠誠心こそがすべてのはずだ。そして、その忠誠心なら、自分は誰にも負けいないはずだ。


彼の目の前は真っ白になっていた。彼の頭の中には、後光を背負って並び立つ、ソヨン様とソナ様の御姿しか無かった。信仰こそ我がすべて。


丸山は猿のように目を剥いて、知らぬ間に、自分を小突いた『若造』に殴りかかっていた。


神々が彼らの行動を罰するべく、地上に降臨しつつあることなぞ露知らない。

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