狂宴
丸山は目の前で続く饗宴を食い入るように見つめていた。
地面に衝いた両手が小刻みに震えるのは、長時間正座させられていることによる脚の痺れから来るものではなかった。
彼は、酔いに任せて無抵抗の倭奴たちを虐待する2人の姉妹の、躍動する体躯の美しさに、立ち居振る舞いの高貴さに、健康的ではつらつとしたテンションに、心を奪われたかのように見とれていた。
(あぁ、なんて美しいんだ…)丸山は息をするのも忘れ、感動のあまり、身を震わせていたのだった。
彼女らに虐げられる倭奴どもが発する惨めな呻き声と、2人の女神や周りのギャラリーたちが口にする明るい笑い声とが、まるで飲み合わせの悪い二種類の酒のように、彼の神経を酩酊させた。
ソナは、『紙相撲』の最中、プレイルームに呼び寄せた韓国人使用人に、ギャラリーとして、あるいは『倭奴を使ったストレス解消の遊び』の参考にするように、彼らに『饗宴』を見物させていたが、一方で他の倭奴たちにも、この『遊び』を見学させていた。
韓国人使用人たちは、各々スツールに座って飲み物を片手に自由におしゃべりしながら、御主人様が与えてくださったこの『余暇時間』を楽しんでいた―彼らはいつだって、倭奴が虐められるのを見るのが好きだった―が、床に正座させられてそれを見物させられている倭奴たちには、当然のことながらそのような余裕は皆無である。
倭奴にとっては、もちろんこれは『見せしめ』だった。彼らにとって絶対的な権力者であるソヨンとソナは、思うがままに自分たちの同僚を弄ぶことができる。その当たり前の『立場の違い』を、倭奴どもにたっぷりと認識させること、それが姉妹の、半ば無意識的な目的だった。
その饗宴を見せつけられて、殆どの倭奴は、いつこの暴力が我が身に降りかかってくるか分からない、それは2人の若い姉妹の気分次第だ、という恐怖感におののき、その恐怖と緊張から、彼らはまだ身体に何のダメージも負わされていないにもかかわらず、それを想像することで、『痛み』をありありと感じていた。
現に丸山の隣で、丸山と同じように正座してこの風景を見物させられている倭奴も、恐怖で体を震わせていた。
しかし丸山は全く違った。まるでオリンピックの体操競技で、自分の応援している選手が素晴らしい演技を終えたときのような、体中が粟立つような、そんな感覚だった。
強さ・美しさ・高貴さ… 彼の目の前に居る2人の女性は、その全てを兼ね備え、その全てを惜しみなく発散させていた。丸山は完全に魅了されていた。彼は2人の虜だった。
◆◆◆
『紙相撲』が終わった後、2人は話し合って次にやるゲームを決めた。
続いて2人は、同じく倭奴と鞭を使ってやる『絨毯ロデオ』をすることにした。
これは、まず活きの良い若い倭奴を裸にして足許にうつ伏せに寝かせ、その上に靴を履いたプレイヤーが踏み乗って、露出した倭奴の身体の色々な部位を手にした鞭で打ったり、足で踏み付けたりして倭奴を身悶えさせる。もし倭奴がプレイヤーを体の上から振るい落とすことが出来たら―たとえ片足でもプレイヤーに下の床を踏ませることがことが出来たら―倭奴の勝ち、逆に倭奴がピクリとも動けない『フォール』の状態で10カウントが過ぎれば、プレイヤーの勝ちである。
2人のプレイヤーが対戦する場合は、2人が同時に倭奴の背中に載り、先に10カウントを取れた方が勝ち、もし途中でどちらか1人が振り落とされてしまったら、残ったほうが勝ちである。
倭奴を絨毯に見立てており、さらに野生の牛に跨って振り落とされないように馴致させるロデオに似ているため、『絨毯ロデオ』というゲーム名がついたのだった。『紙相撲』よりはややマイナーなゲームであるが、こちらは倭奴の『調教』も兼ねており、レジャーと合せて一石二鳥であるため、韓国貴族の間で愛好家は多かった。
2人はまず『絨毯』選びから始めた。
部屋の隅にズラリと並ばされ、正座して先ほどの『饗宴』を見せられていた倭奴たちのほうに、2人が並んで近付いてきた。
「ど・れ・に・し・よ・う・か・な~♪」2人は片手に鞭を持ってブラブラさせながら、足許に正座する倭奴の列の前をそぞろ歩いた。
『紙相撲』と違って、プレイヤーは相手方の―対戦者に踏まれる方の―倭奴を選択する。なるべく若くて活きの良さそうな倭奴を選ぶことが出来れば、それだけ自分が有利になるからだった。
「よーし、私、決まったよ」ソヨンが言った。そして得意気に妹のほうを向いた。
「えぇーっ、ちょっと待ってー」ソナは視線を倭奴どもの顔から顔へ、体から体へと高速で動かしながら、姉をその体の上から振るい落としてくれそうな、勇敢で力のある倭奴を探した。
「お姉ちゃんと違って、私、始めて見る倭奴ばかりだから、迷っちゃうなー。。。もうちょっと吟味させて」言いつつソナも楽しそうだった。
(まるで修学旅行の夜に、旅館の部屋で友だちとやるトランプみたい。それにしても何で修学旅行の夜にやるトランプって、あんなに楽しいんだろう。うふふ…)




