遊戯
夕食を終えてから、ソヨンとソナは地下一階にあるプレイルーム[遊技場]へ向かった。
少し酔っ払ってしまっていた二人は、軽く体を動かしたい気分だった。
まずダーツをした後、ビリヤードで対戦したが、どちらもソヨンの圧勝だった。
「どう? もう1ゲームやる?」
キューの先端[ティップ]に軽くチョークをかけながら、ソヨンが言った。意志の強そうな5本の指に纏わりつかれて、玉突き棒さえも悦んでいるように見える。
(なによ…お姉ちゃんばっかり格好良い感じになっちゃって…)
もちろん、負けず嫌いのソナは0勝2敗では終われなかった。ソナは、ダーツ、ビリヤードと続いた『上品』なゲームではなく、いま自分がやりたいことを、姉に提案した。
「倭奴を使ったゲームにしようよ。せっかく東京にいるんだし」
軽い酩酊と微かな高揚感、それから何より大好きな姉と久々に遊べる嬉しさが、ソナの心を贅沢に満たしていた。
「お姉ちゃんばっかり得意なゲーム選んでずるい! ソナも勝ちたい!」体の前に立たせたキューを、両手でぎゅっと握るソナであった。
ソヨンは、ソナが自分と一緒にいる時で、かつテンションが高い時のみ一人称を『私』ではなく『ソナ』で呼ぶ癖を思い出して、まるで花のように微笑んだ。
◆◆◆
3ゲーム目にソナが選んだ競技は『紙相撲』だった。
もちろん、二つ折りの紙製の人形によるものではない。それをヒントにして考案された遊びではあるが、実際に使用するのは、生きた倭奴であった。
まず、2人のプレイヤーが、『紙の力士』にあたる倭奴を、一人ずつ選ぶ。
そして、2体の倭奴を四つに組ませて、紙相撲で土俵の端を指先でトントン叩く代わりに、それぞれ自分が選んだ倭奴の背後から手にした鞭や棒で背中を叩き、相手の倭奴を場外にするか転倒させるゲームである。
この頃では、韓国本国においても、小・中学生から大人の貴族まで、幅広い層に楽しまれていた。レジャーとしてストレス解消になるし、腕の適度な運動にもなる。
ソヨンの屋敷には30人に及ぶ倭奴が使用人として働かされているため、『力士』には事欠かなかった。
ソヨンは火急の業務にいるもの以外の倭奴を、地下一階のプレイルームに集めさせた。さらにギャラリーとして、韓国人の使用人―執事兼運転手【40代♂】・コック【30代♂】・コック助手【20代♀】・メイド【10代~20代♀】×2人・倭奴監督者【30代~40代♂】×2人の計7人―も呼んでやった。
韓国人の使用人はいずれも平民階級の出で、歳の若い者も多かったが、もちろん倭奴よりはずっと地位が高い。例えばゲストルームのベッドメイクや清掃は、19歳のメイドの監督の下で当番の倭奴が行うし、夕食の後片付けも25歳のコック助手【♀】が台所用倭奴に命じて行なわせる。
◆◆◆
ソヨンとソナは『紙相撲』の3番勝負を行なって、結果はソナが2-1で勝利した。
ソナのテニスで鍛えた腕の強さと手首のスナップは倭奴の鞭打ちに効果てきめんで、彼女に打たれた倭奴たちは見る見るうちに背中や臀部の皮膚を赤く腫れ上がらせた。韓国人の使用人たちが上げる歓声も、ソナのテンションを高揚させた。
「おーい、ハッケヨーイ! ほら、鞭、痛いでしょ! 鞭が嫌だったら根性見せて! ほら、相手も鞭、ビシビシ入ってるよ! 負けてられないよ! ほら! ほら!!」
ソナの鞭と声援は、一瞬たりとも力士を休ませることを許さなかった。
鞭による激痛と、対戦そのものによる疲弊から地面に倒れこんだ倭奴は、メイドが水を掛けて気付けさせてやった後、仲間の倭奴に担がれて部屋の外の人目につかない場所に運び出された。まるで壊れた玩具のように。彼の耳には、自らの荒い呼吸音に混ざって、プレイルームから漏れ聞こえる歓声と笑い声が、遠い潮騒のように響いていた。




