表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
25/113

写真

上級倭奴に給仕させながら、二人は夕食を採った。

屋敷の豪華さから予想していた通り、食事のほうもずいぶんと立派なものだった。

灰色の世界に住む、敗戦まもない倭奴どもが見たら目を眩ませるほど、彩り鮮やかなフレンチコースで、メインは仔牛のソテーだった。おそらく一食で、敗戦国民の一年分の食費にも匹敵するだろう。


「大韓女権帝国の勝利と、永遠の繁栄に、乾杯」

ソヨンは赤ワインを、ソナはマッコリベースのカクテルを少しだけ飲んだ。


◆◆◆

「ねぇ、なーに、あの写真?」


部屋の、テーブルからよく見える位置の壁に二枚の写真が飾ってあるのをソナが見つけ、食事の手をちょっと止めてから、正面に座るソヨンに話しかけた。


一枚は有名な―今では小学校の教科書にも載っている―皇太嬢と大公との会見後の、二人が並んで立っている写真である。

(皇太嬢殿下…相変わらずお美しい…)

韓国貴族の御多分に漏れず帝室の熱烈なファンであるソナは、敬愛してやまない皇太嬢の涼しげな美貌を誇らしく思った。その隙のないクールな表情は、化粧品会社のCMポスターとしてでも通るだろう。

それにしても隣の『サル』は―韓国人は大公一族を初代以来、『サル』というあだ名で呼ぶことが多い―なんてみすぼらしいんだろう…。


一方、その横にあった二枚目の写真は、ソナが始めて目にする写真であった。

一枚目の写真と同様に皇太嬢殿下と大公が写真の中心にいる。両者の服装と背景を見れば、それが一枚目と同じ日に、同じ場所で撮られたものであることは明らかだった。

しかし二枚目の写真は、一枚目と、全く構図が違っていた。

まず、皇太嬢殿下は立っておらず、座っているのだが、それが四つん這いになった大公の背中に座っているのだった。

大公は、両手両膝を衝いた四つん這いの姿勢で、カメラに対して正面を向いている。

皇太嬢殿下は、その背中の上に横向きに座り、膝の上で高く脚を組み、顔は90度横を向いてカメラ目線になっている。やや前かがみになって、左肘を組んだ膝の上に載せ、その左手で頬杖している。唇をちょっとすぼめた、魅惑的な表情で、写真に納まっていた。


そして右手には乗馬鞭を持ち、その乗馬鞭は根元で大公の顎を下から支えていた。

喉元に回された乗馬鞭で下から顎を持ち上げられている大公の表情は、一枚目の写真と全く同じ表情―緊張気味ではあるが無表情に近い―をしていた。


ソナは全く信じられなかった。最初、皇太嬢殿下は木の椅子に座っておいでなのだと思ったが、何度見返しても、殿下が座っておられるのは人間だった。さらに驚愕すべきことに、その人間は、大公その人なのである。


「ああ、その写真ね、見ての通り大公[サル]と殿下よ」ソヨンは食事の手を止めることなく、事も無げに言った。

「マジ? 嘘でしょ? 合成?」

「合成じゃないわよ」ソヨンはふふふっ、と小さく笑った。「実際の写真よ。さすがにこっちを新聞に載せたら大変なことになるだろうから、その馬乗りの写真を撮った後に、大公を立たせて撮りなおしたのよ。殿下ご本人から頂いた写真よ。素敵な写真だから、そうやって飾ってるの」


なんと、有名な二人並んで立った写真は、馬乗りの写真の後に、大公を立たせて撮り直したものだったのだ。ソナは開いた口が塞がらなかった。そして興味津々に、ソヨンにその写真に関わる詳細な説明を求めた。


ソヨンは、かつて皇太嬢殿下の御学友だった時代から、東征軍総司令(元帥)とその部下である空軍司令(少将)だった時代を経て、総督府での上司・部下となった現在に至るまで、皇太嬢殿下の信任が最も厚い臣下の一人である。

この『馬乗り写真』にまつわる話は、ある日ソヨンが殿下と二人でランチを食べているときに、ふと聞かされた話であった。その話は殿下にとって、一時の、場つなぎのためのちょっとした小話と、なんら変わりない扱いだった。

ソヨンはそのとき聞いた話の顛末をソナに話した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ