おまけ
「―――ほら、村崎さん。もっと…腰、上げて……」
荒い息遣いが、部屋に響く。
「や…っ、あ、も…もう無理…っ!」
三崎君の太くて、長い指が。
厚くて、大きな手が、私の腰を掴んで離さない。
逃げる事は許さない、そう言っているかのよう。
腰に直接伝わる手のひらが熱い。
足がガクガクする。
限界が近い。
耐え切れずに力が抜け、視界が揺らいだ。
だけど未だ腰を支えている手によって膝をつく事はなかったが、腰を持つ手の力が強まったのを感じ、それはまだ終わらないのだと教えてくれる。
「三崎く…っ! もお、だ、めぇ…っ!」
息も絶え絶えに叫ぶ私に、僅かに顔を振り。
細められた彼の目が、妖しく光る。
「…まだまだだよ、これじゃあ…満足出来ない―――」
*
「この前はどうもありがとうございました!」
月曜日、いつも三崎君達が集まっている教室へ行くとミッキーさんが1人でいて、代表して受け取って貰おうとお礼を言って菓子折りを渡した。
「お、さゆさゆ。その様子じゃあ、上手くいったようで?」
「はい! 完璧とはいかなかったですけど、ミッキーさん達のお陰で初デートは無事に完了しました!」
それはよかったと大きく口を開けて笑うミッキーさん。
ミッキーさんはあの日の宴の席で、私の話を一番親身になって聞いてくれた、とても優しい人だ。
そしてあの計画を思いついたのも主な実行犯(?)もこの人で、この人がいなかったら私達はきっといつまで経ってもデートすら出来なかっただろう。悲しい事に。有り得た未来。
だって三崎君は、私がどんなに張り付いても、ウザいくらいに誘っても首を縦に振らなかったのだ。
なのにアッサリとデートをして貰えるようにしてくれたのは、紛れもないミッキーさん。
強固な心の持ち主の三崎君と随分友人暦が長いのだろう、いつも一緒にいるし、会話を聞いている限りかなり心を許しているようで、羨ましい程だ。
いつ見てもべったりしていて、正直悔しい気持ちも無い事もないです。
私はミッキーさんを師と崇めるべきかもしれない。
そして色々三崎君を篭絡する術を請いたい。あ、本音がでちゃった。
なので。
色々お近づきになりたいと思ってお礼参りに来たのだ。かなりあざといけど仕方ない。
形振り構ってられないの。三崎君相手なのだ、いつだって真剣に本番でぶつかっていかないと!
そんな私の不純な心を見透かしたかのように、ミッキーさんは手に持った菓子折りを見て首を傾げた。
「で、これ何?」
「え? あ、えっと…、その。お礼のお菓子…です……」
ちゃんと一番の贔屓のお店のNo1を買ってきた、私のこの本気具合が逆に仇となったのか…!?
別に深い意味はないと、内心冷や汗を流しながら言うと、『もしかして…』と顎に手をかけ、私を覗き込んできた。
見透かされてる…!!
や、やっぱり自分で篭絡させないといけないですよねスミマセン! また頼ってしまうなんて駄目ですよね…!
自分の浅はかさに恥ずかしくなって1歩後ずさると、ミッキーさんは大きくため息を吐いた。
「全く。忘れてるでしょ、さゆさゆ」
「え?」
「酷いよー何の為にあんな重たいの頑張って運んだんだよー。お陰で俺こんなに痩せちゃってさー」
よよよ、と泣き真似をしてこちらをチラチラ私を見てくるミッキーさん。
…どうしよう、あまり変わってないと思うんだけど…そっちの方が気のせいなのだろうか…?
だからと言ってお腹をジロジロ見るのも失礼だ。ミッキーさんがそう言うならそうなのだろう。
「あ、あの、どういう事…ですか? 私あの日結構酔っ払っていまして、大分記憶無くしているんです…! 忘れている事があるなら教えてください!!」
「“何でも言う事聞く”って言ってたお」
私が焦って近づくと、ケロっとした顔で私の目の前に人差し指を向けた。
…何でも…?
全然記憶が無いんだけど…とは言えない…。
だけど鍵もポストに入れてあったし。
私の記憶の方が断然信用出来ないから、きっとそう言ったのだろう。
うん、言う気がする。
酔っ払っていたというのもあるけれど、三崎君とデートしたかったのだ。何でも言う事聞くくらい言っている筈。
「そ、そうでしたね…!」
「うむ」
「私…は、何をすればいいですか?」
何でもドンと来いと構えていると、ミッキーさんは唇を突き出してうーんと唸り、スマホを取り出して何やら確認していた。
華麗な指さばきで画面をタッチし終わったかと思うと、その指を私の前にかざし、
「今は無理。明日、授業終わったら4時頃に2階の空き教室に1人で来て」
と言った。
1人で、というのが気になって何をするのかと聞いたけど、来てのお楽しみだと言われた。
「三崎君は?」
「あいつには内緒で」
絶対だよ、と念を押すから三崎君関連ではないのだと分かった。きっと2人だけの―――
…2人だけの!?
何をするつもりなの!?
まさかそんなと怖くなってミッキーさんを見上げると、ひょいと片眉を上げた後笑った。
「あ、安心して。俺にそんな度胸ないから。それに俺の嫁はきくりんだし。ちょっと遊んで貰うだけだお」
そう言って手をひらひらさせて、授業行きなと出口へ追いやられる。
時計を見れば、いつも三崎君がやって来る時間が迫っていた。その前に退散しないと怪しまれてしまう。
ていうかさらっと言ったせいで流しそうになったけど、ミッキーさんにお嫁さんがいたのにはビックリした。学生結婚だろうか。中々リア充をしている。
ん? 仕事…しなくてもいいのかな?
…って人のプライバシーに踏み込むのはいけないか。人には人の事情があるのだ。うん。
しかし成程、だから私達の事に気を揉んでくれたのか。流石ミッキーさん。
バイバイと手を振るミッキーさんに手を振り返し、当の目的が分からず、あまりスッキリしないながらも教室を出て自分の授業に向かった。
でも、私の為にデートの舞台を整えてくれたんだから、ちゃんとその恩に報いないと!
恩を仇で返すなんてもっての他。
何が待ち受けていようと、今の私ならば大丈夫! な筈!!
そして翌日の4時。
ミッキーさんに言われた通りの教室へ行き、私は1人で扉の前に立った。持ち物は特に言われなかったからいつもの鞄だけ手にして。
教室の中はカーテンがひいてあるのか真っ暗で、中にいるのか覗いて確認する事も出来ない。
「…仕方ない、入るしかないよね」
これは浮気じゃないからね三崎君…! 使命なの!
心の中で三崎君へ言い訳をし、深呼吸してから扉を開けて入ると、電気はついていて思いの他明るかった。
後ろ手に扉を閉めながら中を確認すれば、目の前にはミッキーさんの他にいつもの友人さん達が3人。
空き教室なだけあって椅子や机などはあまりなく、気持ち程度にあるそれは左の方に寄せられていた。右の方には衝立が2つあって、その間に大きな布がだらりとかかっている。
凄く不吉な予感がするのは気のせいだろうか。
ミッキーさんにおいでと手招きされて足を踏み入れると、今しがた入って来た扉が大きな音を立てて開いた。
振り返って確認すると、頭をぶつけないように扉を潜って入る程大きい人だった。
私の好きな三崎君です。
「あれ!? 何で三崎君がいるの!? 内緒だったんじゃあ―――」
「な、んで…村崎さんが…!?」
お互い意味が分かんないと顔を見合わせていると、奥にいるミッキーさんが笑った。
「遅かったな三崎。そんなに大事に仕舞ってたのか?」
それ、と指差す方向を見ると、三崎君の腕の中にある段ボールだった。
見覚えのある段ボールだと眺めていると、『まさか…』と三崎君が呟いた。
「おうそのまさかよ。あ、怒るなよ? ちゃんとさゆさゆの了承は取ってるんだからさ!」
なー、と友人さん達4人で顔を見合わせて頷いている。
うう…何か段々と嫌な予感が的中してきたけど、言質はとられているからどうしようも出来ない…!
その場で動けずにいると、後ろから凄くおどろおどろしいオーラが漂ってきた。こ、怖くて後ろが向けない!
「……君は…」
「ひっ!」
「…どうしてそう…直ぐホイホイと約束して…のこのこと来る……?」
やっとの思いで振り向けば、思ったより近い位置で見下ろされていた。
影がかかって見辛くとも、その顔はやはり怒っているものだった。
じりじりと詰め寄られ、いつもだったら嬉しい筈の押しに今は恐怖しか感じない。段ボールの中からの雰囲気もプラスされて、更に怖い!
「はいはい、お2人さん。イチャイチャはお腹イパーイだから。さっさと始めたいんだけどよろしいか?」
それを寄越せとミッキーさんが近くに寄ってくる。
対する三崎君はその手を逃れるように段ボールを後ろにやり、小さくため息を吐いた。
「……やると…思うか……? 何で…お前らに見せないと……いけないんだ……」
俺だってまだなのに、と聞こえたんですが、私はここは喜ぶ所なのでしょうか?
…どうしよう。
色々ついていけなくなってるのでちょっと休憩させて欲しい。
そういった意味合いを込めてミッキーさんを見やると、ニッと笑ってくれた。
思いが通じたと喜んでいると、無常にも私を会話に混ぜてくれるミッキーさん。
「さゆさゆがオケしたから。ね、さゆさゆ?」
と、ニッコリ言われれば、
「はい」
と、言うしかなく。
呆れて出て行こうとする三崎君を、『掴まえろ』と指令が降りれば従うしかなく。
「ごめんなさい三崎君…! 約束は破れないのです…!!」
いつものように腰にしがみつけば、過去最長であろう長い長いため息を吐いた後、扉を閉めて鍵をかけた。
そして段ボールをしぶしぶと言った風にミッキーさんに渡した。
「……スク水は…絶対駄目だぞ……!」
ええーー!!という男子数人の声が響いた中、私は気を失いたいと思いました。(希望)
ていうか、
そんなのもあったの三崎君…っ!!?
「着替える時はそっちの衝立の向こうで。あ、大丈夫。覗きはしないから」
俺たち紳士だしと言われて、教室の隅にあるちょっとしたスペースに、沢山の服、プラス小物類と共に押し込まれた。
…しかし。
三崎君の押入れで見た、色とりどりの制服をこうして再び見る事になるとは。あ、スク水は段ボールの奥下に押しやりました。
あの監禁から三崎君の家に呼ばれるどころか、デートすらなかった私達だ。
だけどいつ何時三崎君の気が変わって、こうなる事があるかもしれないと心の奥深くに留めておいてはいたけれど、まさかこんな形で実現するとは思ってもみなかった。とても油断していた。
衝立の奥の小さなスペースで、懐かしのピンクのブレザーを持ってため息が出た。
ちらりと布の間から皆の方の様子を伺えば、デジカメやら一眼レフやらを用意している5人の男子がいる。
…何故!?
こんな私の写真なんか撮ってどうするの…!?
三崎君の前で着るだけならまだしも! 着るだけでなく皆の前で撮るとか聞いてないんですけど!!
これが噂の羞恥プレイというやつですか…!?
こんな18歳の年増が12歳の制服を着ていいんですか…っ!!
恐る恐る袖を通してみると、ピッタリ合ってしまうのが恨めしい。もう少し、大人としての威厳が…こう…。
胸のあたりをぐっと寄せて上げていると、早くと急かす声が衝立の奥から聞こえてきた。
…ええい、女は度胸!
何でもやると言ったのは私!(きっと) 女に二言はない!!
超ミニスカートを押さえながら衝立から出れば、フラッシュがたかれた。とても眩しい。
「ふおおーー!! 萌えーーーー!!!」
「ちょ、まじで、本人! ウホッ神☆降☆臨!!」
「ツルペタ幼女! 幼女! 幼女!」
フラッシュと共に聞き覚えた単語が並べられた。
…やっぱり戻っていいですか。
絶対無理だって…! こんなに注目されるのとか耐えられない…!!
顔を隠して衝立の奥に戻ろうとすると、後ろからミッキーさんに優しく声をかけられた。
「ほらほら、さゆさゆ。逃げない逃げない。こっちまで来てくれたら三崎の高校の時の写真あげるぜ? エピソード付きで」
「それは頑張ったらどんどん増えますか!?」
「…………村崎さん……?」
素敵な言葉が聞こえて振り返ると、ミッキーさんの隣にいた三崎君に『何を言っているの』と凄まれた。
だけど自分の欲求が抑えられない。いや、ここは抑えてはいけない局面の筈。
だ、だって三崎君の高校時代だよ…!?
私どう頑張っても知り得ないじゃない!!!
きっと三崎君の事だ、絶対自分から見せてはくれないだろうし、お願いしても見せてもくれないだろう。
ならばこの機に乗じて数枚…いや、あるだけ、心行くまで頂くしかないのだ。
じりじりとミッキーさんの方へ向かえば、一層笑みを濃くしたミッキーさんが親指を立てた。
「おうよ。色々ポーズも取ってくれたら際どいのまでやんよ」
とりあえず先に証拠だ、とスマホを出して私の前に掲げた。
そこには東京の赤いシンボルの前で皆と並んでいる画像だった。
今この場にいる友人さん達の間にいる三崎君は、後ろのそびえ立つタワーととてもよくマッチしていてとても面白かった。
ミッキーさんがスマホの画面をスライドをすると、ラーメンを食べている三崎君が現れ、その眼鏡が曇っている。可愛い。
更にスライドをすると、雑魚寝でぐちゃぐちゃになった布団と人が入り乱れる中、枕を抱いて埋もれて寝ている三崎君の姿があって、思わずスマホに手が伸びてしまった。
ヘソチラ…!!
そして無防備であどけない寝顔…っ!!!
だけど寸での所でスマホが高く上げられ、手が空を切る。
何も掴めなかった手に落胆し、私の口から情けない声が出てしまうと、
「―――これの比じゃないよ?」
オレのフォルダが火を吹くぜ、と持っているスマホと取り出したデジカメを私の前にチラつかせた。
あの中にはミッキーさんの言う“比じゃないもの”が入っていると。
それは如何ほどの物なのか。
全然想像もつかない。
男同士ではないと成せない技なのだろうか。
だからこそ、欲しいという欲が俄然強くなる。
隣で三崎君が『いつの間に!』と怒っているけど、他の3人の友人さん達に捕まって身動きが取れなさそう。よかった、私達の邪魔はされない。
ごくり、と生唾が飲む音が響く。私の。
ミッキーさんと目が合い、1つ頷き合った。
不適に笑みを溢したミッキーさんは、手始めにこれだと言って私の前に出したのは、マジさゆの大きなポスターだった。
真ん中に写っているさゆさゆを指差したので、カクカクしながら見よう見まねでとってみると、グッジョブと言われ再びフラッシュがたかれた。
いつの間にか定位置についた友人さん達も、カメラを構えてフラッシュをたかせる。
…私の中の何かが減っていく気がするのは気のせいにしておこう…。
当然、三崎君は呆れているよね。
フラッシュの中探すと、カメラを向けている4人の隣で、腕を組んでただじっとこちらを見ている姿があった。その手にはカバーに入っているデジカメが収まっている。
あれ、撮らないの?
あ、え、いや、撮って欲しい訳じゃないけどなんていうか駄目だったのかなって…!!
…やっぱり怒っているのだろうか。
馬鹿だと呆れているのだろうね。ふふ。
だけど次のポーズをしても止めにくる事はなく。
それでも眉を寄せ唇を引き結び、ちょっと機嫌が悪い雰囲気を出しているのは気のせいではない筈だ。
着たら喜んで貰えると思っていたのは驕りだったのかもしれない。馬鹿だ、私。
だけど、1つ動く度に視線が絡みつく気がする。
じっと見据えて動かないその瞳の意味は何だろう。
その奥で何を思っているの?
見られているという事だけは確かなので、恥ずかしさと嬉しさが入り混じって、段々と身体が熱くなる。
太腿の付け根くらいまでしかないミニスカートとか、初めて穿いたにーはいとかが心許ない。小学生にこんなものを着せていいのだろうかと疑問が起こる。
うっかりパンツが見えてしまうんじゃないかと、勝手に意識してあがって動きがおかしくなる。
こんな事ならせめてもっと可愛いのを穿いてくるべきだった。ミッキーさんも人が悪い。
スカートやにーはいを押さえてもじもじしている私を他所に、『こっちのポーズもー!』と色々画像を見せてくれる皆さん。
誰も私の乙女心を分かってくれない。
ヤケになって下手くそなりに合わせていると、
「……違う…」
いつの間に後ろに来ていたのか、三崎君がそう呟いて私の両腕を取った。がっちりと捕らえられ、すぐ傍に三崎君の匂いを感じて思わず全身に力が入る。
そして剣を持って反らしていた右腕を更に反らせた後、左肘を少し内に寄せられる。
『そのまま』と吐息が触れる程ダイレクトに耳元で囁かれ、腰にきた! 叫び出す寸での所で堪えて頷くと、腕にあった手が腰に滑り落ち、大きな両手で挟まれる。
「み…三崎君…!?」
「……甘い。全然違う。駄目。もっと落として」
伸びきっていた私の膝裏にやんわり膝が当てられ、密着しちゃったと腰砕けていると、『下げすぎ』と怒られた。
そして必死に踏ん張っている私の足の間に大きな靴が入り込むのが見え、まさかと思った時には思いっきり外側に広げられた。肩幅以上です。
何これ!
足がプルプルする…!!
生まれたての小鹿のように内股になって震えていると、腰にあった手に力が入れられる。
「もうちょっと左に傾いて。肩も入れて…指は顎に添えるだけ…」
プルプルしている間も着々と注文が入っていく。
グリグリと押される自分の腰の肉が気になって更に緊張が走る。
そして上から押さえつけられる重力に、私の足がもたない。
助けて、とミッキーさん達を見やるも、『顔もっと肩に寄せると最高』と更に注文を上乗せられるだけだった。
私は間違っていた。
コスプレというのは、そんな楽な物ではなかった。
軽い気持ちで引き受けてしまい、とても後悔した。
三崎君が妥協しない事により、今まで普通に撮っていたミッキーさん達まで指導に力が入ってくる。
なってないとばかりに、こうだよと言って画像を拡大してくれた。あ、ありがたいです…。
しかし、碌に運動もしてこなかった私だ。
辛うじてあった筋肉なんて、とうの昔に置いてきた。
既に身体中が悲鳴を上げている。息がし辛い。あがってくる。
「……このポーズはね、魔法翔竜剣を出す所で一番キモの部分なんだ。俺の中でトップ3に入る好きな技だ。……それじゃあ全然駄目だよ」
「あ…っ!」
だけど三崎君は許してくれない。
積極的に動く手のひらが、更に深く沈みこんでくる。
腰を持ち、微妙な力加減で角度をつけている。
熱くて、
熱くて、
息が出来ない。
「―――ほら、村崎さん。もっと…腰、上げて……」
振り返ればより近くに存在を感じ。
いつにない真摯な声色で。
真っ直ぐな眼差しに。
身体の中心が疼き、更に腰が落ちそうになる。
だけどそれは支えられ。
そして、
私の長い長い放課後が今、始まるのだった。
たまには出オチギャグ回でも。
「いやー! さゆさゆ最高だったよ!」
「……そうですか……よかったです………」
「なんか超ーエロかった! ほんとゴチって感じ!」
「……はぁ……」
「また新作あったら次もヨロシク!」
「え……」
「……ごめん…村崎さん……俺…調子に乗って…さ、触って…」
「…あ…、い、いえ…っ!」
「…………次……、あいつらに何言われても、聞いたら駄目…だぞ…」
「! はいっ!!」
※荒い息遣い=ミッキー達。