デート編 2
どうしよう。
デートというものは、こんなにドタバタするものなのだろうか。
私の予想ではもっとキラキラうふふと楽しく、イチャイチャと仲も段々深まっていく筈だったんだけど。
1人で焦って失敗してドジやってで、なんて落ち付きのない。
淑女を見せつけるといったのは何だったのか。
だけど、手は繋いだままでいてくれるという事は、まだ希望があるという事でいいですか…?
逸る心臓を押さえて目当ての映画館へ着くと、『これでしょ』と三崎君は、昨日見た映画の続編のポスターを指差した。
一瞬自分の不埒な考えが見透かされたのかと思って、焦って違うと答えてしまった。
そして直ぐさま後悔した。
馬鹿…! 自分の馬鹿…!
予告された時から凄く楽しみにしていたのに! 絶対三崎君と行くと決めて昨日見てもらったのに…っ!!
「……え…? …ふーん…。じゃあどれ…?」
首を傾げ、私の答えを待って見下ろしてくる三崎君。その声色は少し高い。
何か笑われているような気がするけど、今更これがイイとも言えず、少しポスターを見比べて、無難に知っている俳優の名前が書かれたポスターを指差したのだった。
『―――逃げて! ここはもう駄目よ! 危ないから逃げるのよ…っ!!』
ドガン、バキン、グチャ、ズドーン、悲鳴。
そんな音が盛り沢山の映像が流れて私はもうどうすればいいか分かりません。
血が出るし腕は取れるし銃で撃たれるし逃げないといけないし、あ、少しラブはあったけど基本闘ってるし。
吐くまではいかないけど、気持ち悪くて直視できない。無理。
なんでこんなのに出演してるの…前は大人なラブストーリーに出てたくせに…!
成程、チケットを買う前に大丈夫かと聞かれた意味が分かった。
大丈夫じゃないでした。
なるべく直視しないよう薄目にして、何かが取れそうな時は目を閉じさせて頂いた。
お金を払ってくれたのは三崎君だったから(いいと言ったのに)、見ない訳にはいかない。頑張るしか選択肢はなかった。
しかし終始激しい戦いばかりで、三崎君は大丈夫なのかと視線だけ動かして左隣を盗み見れば、暗がりの中顔が見えた。
横顔じゃない三崎君が視界に入る。左手で頬杖をついているのが分かった。
その様子に昨日の部屋での事が思い出された。
どうしてまた見ているの!?
映画は見ないの!?
勿体無い!
思わず視線を戻して画面へ向けたけど、丁度誰かの頭がご臨終した所で。失敗した。ひぃ。
だけどまだまだ続く激しい銃撃戦で、スクリーンがチカチカと明るくなる度に、三崎君の体勢が変わってない事が雰囲気で分かる。
見られているのだと思うと、もう駄目だった。
大接戦を映し出すスクリーンに視線を合わせても、グロい内容は全然入ってこなかった。
そして2時間を超える大作は、甘い雰囲気を作ってはくれなかった。
あるのは私のグロッキーなため息ばかりで、ただ今映画館を出た所のベンチで休憩中。
対する三崎君は同じくベンチに座っているものの、買ったパンフレットを眺めて終始ご機嫌だ。
…成程…三崎君はこういう物がお好きのようですね。チェック完了です…うぷ…。
駄目だ、気分的にも気持ち的にも沈んでいる。
三崎君にトイレへ行くと伝えてその場を逃げ…離れた。
トイレに入り、鏡の前で化粧を直す。うん、変な汗をかいて崩れている。酷い顔が更に酷くなっている。
ささっと直し、改めて気合を入れ直した。
終り良ければ全てよしでいこう。
次のプランは猫ちゃんだからね! これは失敗しようがないと思うから大丈夫!
しょぼくれた顔をした鏡の中の自分に叱咤し、意気揚々とトイレを出た。
そして三崎君の待つベンチへ向かおうとすると、何やら電話をしている姿が目に入った。
どこへ電話をしているのだろうかと眺めていると、こちらに気付いた三崎君が、慌てた様子で電話を切っている。
それがとても怪しくて、駄目だと分かっていてもどうしたのか聞いてしまった。
「……いや…別に……」
そう言ったきり黙ったのを見て、やっぱりやめておけばよかったと思った。
昨日も今日も優しくされたから、踏み込んでも大丈夫だと、許されるのだと、少し欲を出してしまった。
結果、失敗。
うーん…まだまだね、私。もう少し謙虚にいかないとね。
そう心に留めていると、いつの間にか立ちあがっていた三崎君が『行かないの?』と手を差し出していた。差し出していた…!!!
えっ、なっ、えええ…っ!?
ちょっとーー…!!!
分かんない! 三崎君が分かんないよ!!
さっきまでツンってしてたのにどうして今デレるの!? これでしょツンデレのデレってやつ…!!
あまりの興奮に、まるで昨日見た映画の人みたいだとその大きな手を観賞していると、はっと息を飲んで手を引こうとした。
何それ無意識だったの!? もう! これだから天然さんは困るっ!
折角来てくれたのに勿体無い逃がすかと捕まえれば、あいている左手で顔を覆っている。隙間から僅かに見える頬は赤い。
作戦でも、天然でも、私の心はガッチリ掴まれた。
お陰で淑女らしく謙虚にという心がけはあっという間にどこかへ行き、浮かれたまま次の目的地へ足を向けた。
その道すがら、面白くもない私の話の合い間に、三崎君がある一点を見つめているのが分かった。
…もしかして…、いや、もしかしなくても行きたいのではないだろうか。
そういえば今日はずっと私のプラン(通りではないけど)に付き合って貰ってばかりだし、やっぱり男の人にはつまらなかったのかも。
それに今日初めて三崎君が興味を示した物を発見したのだ、これはイイ女になるべく行かない訳にはいかない。
だから入るのかと聞いたのに、
「え…っ! い、や…悪いし……それに…」
マフラー内でもごもご言ってます。
だけど行きたいというのはとてもよく分かった。
「私の方が悪いですよ、今日色々と付き合って貰ったので。三崎君も行きたい所が出来たのなら言って下さい!」
当初の目的だった好きな物もチェック出来るし、三崎君も楽しいし一石二鳥★
そう思って手を引っ張って行くと、店の前で止まれをされた。
何事かと見あげると、おもむろにマフラーを外し、私の顔に頭に巻き出した。何事!?
「み、三崎君…!?」
そんなに私の顔はみっともないですか!?
目元下まですっぽり隠せられ、端から見たら凄く怪しいと思うような格好になってしまった。あ、いい匂いがする。
じゃなくて。
邪念を振り払い、恨みがましく見あげると、
「…ちょっと…見て来るだけだから、それ外さないように。1階にいて。絶対だよ」
何故か念を押しに押され、ガッチリ肩を押さえられた。
きっとこれは目印かなんかなのだろう。小さいから捜し辛いのかもしれない。
…なんか、迷子の子供に言いつけられているみたいで気になるけど、半日ぶりの三崎君の素顔にキュンとしてしまい、そのまま流されて頷いた。
そして手を引いて青いお店に入っていく。その足取りは軽い。
ふむふむ、“あにまて”というお店が好きらしい。オッケー覚えたよ!
店内に入った途端、手を離したかと思えば細い階段を上って行ってしまう三崎君。
足が長いと2段上がりも楽々なのですね。ずるい。
…それにしても…余程好きなんだな、ここ。
寄り道せずに最初からここにすればよかった。言ってくれればいいのに。
1人残された私はというと、三崎君に言われた通り1階にある賑やかな本屋さんで待つ事にした。
うろうろしているも、店内の暖房でマフラーの中が蒸れてくる。それにファンデーションもつきそうで怖い。
空気穴くらい…確保していいよね…?
そっと口元あたりまで下げれば、新鮮な空気が入ってスッキリした。
ていうか、“スッキリした。”じゃないよ…!
何の為に来たの! 好みを知る為じゃないかったの鳥頭め!
こうしている間に三崎君は楽しく買い物をしているのだろう。それはずるい。見たい。楽しげな三崎君。えへへ。
バレないように物陰に隠れながらならいいよね、迷子にならないよう気をつければ大丈夫。
三崎君を追って階段を上っていけば、さゆさゆのポスターを発見した。そのポスターに“4階へ”と書かれていたのを見てピンときた。
きっとここにいるに違いない。
デート中に他の女の所へ行くなんて…! でもなんか三崎君らしい!
悔しい気持ちと、芯を貫き通して素敵と思う気持ちが仲良く同居した。
ふむ…これが複雑な乙女心というやつか…。
唸りながら階段を上りきり、笑顔のさゆさゆに迎えられた4階へ着けば、もう息が切れ切れだった。もっと体力を付けなければ三崎君についていけない。頑張らないと。
熱くなってマフラーをゆるめながら辺りを見回すと、1階とはまた違う雰囲気だった。
本や雑誌などはなく、等身大のさゆさゆとか、CDやDVD、ぬいぐるみまで沢山並べてあって、人気の凄さが私にも分かった。
その雰囲気に圧倒されながら見回っていると、新譜と書かれたさゆさゆのCDを発見した。
そういえば昨日、マジさゆのオープニングを弾いてあげたら凄く喜んでくれたっけ。
数少ない趣味が活かされるとは思わなかった。ありがとうお母さん! 習わせてくれて!!
それならば、ちゃんと譜面を買って練習しないと。
きゃらそんという奴も、さんとらも、頑張って完璧に弾けたら、
『一生俺の為に弾いてくれ』
とか言われちゃうかも!!
よしよしオッケーさて譜面はどこだと振り返ろうとすると人にぶつかってしまい、あっと思った時には顔から倒れていた。
は…恥ずかしい…!
だけど背中が凄くぼよんってしたから仕方ないと思う…!
このフロアにいるであろう三崎君に、見つからないようにこっそり起きあがろうとすると、人の視線を感じた。
何だろうと辺りを見回すと、ミッキーさんみたいに大きい人を先頭に、沢山の人に覗きこまれている。
通行の妨げにならないよう、慌てて床に落ちたマフラーを拾い、脇へ寄って道を開けても誰も通らなかった。
更に身を乗り出して覗いてくる人の後ろにさゆさゆの看板が見えて、まさか、と背中に冷や汗が流れる。
「ちょ、あれ、さゆさゆじゃね?」
やっぱりー…!
え、嘘、ほんとに? さゆさゆに似てるっていうの、三崎君の欲目なんだと思っていたんだけど。
周りを確認しても、女子は私1人。やっぱり私の事なの?
「あれ、今日イベントなかったろ? 何今日メイトでやってたの?」
「ちょ、おま、本人ktkr! デジカメ持っててヨカター!!」
ざわざわし出して、本格的にヤバいと思いました。
こんな事になるならちゃんと言う事聞いて1階で待ってるんだった…! もう私こればっかり! 浮かれ過ぎ!!
迫りくる男子の群れに、正直気を失いたいと思いました。(希望)
お忘れだと思いますでしょうが私は女子高育ちで三崎君以外とはあまり接触がございませぬ事よ。
ううう…三崎君が何十人と迫ってくるのなら大丈夫だけどそれ以外は無理…っ!!
マフラーを握りしめ、お尻をついたまま後ずさるも、皆も近づいて来るせいで一向に距離が広がらない。むしろ近くなってきた! ぎゃああ!
どうしていつも三崎君じゃなくて違う人が来るの!! もう!!
悪態をついている間にもフラッシュがたかれ、こちらに伸びる沢山の手が視界に入る。流石に本気で怖くなり、目を瞑って頭を抱えた。
「っ、三崎く…っ」
するとパシン、と乾いた音が響き、恐る恐る目を開けてみると、目の前の黒が人の手を払いのけている姿があった。
その姿に、初めて出会った時の事を思い出す。
やっぱり、いつだって私を助けてくれるのは三崎君なんだ。
大きく肩を上下させて、腕を伸ばして男の人から距離を取ってくれる三崎君。
傍には倒れている人がいて、かき分けて助けに来てくれたのだと分かった。
「三崎君…」
コートを掴むと、肩越しにこちらに視線を寄こし、持っているマフラーを見てため息を吐いた。
うう、どうやらこういう目的だったみたいだ。
「……お前ら…勝手に見るな近づくな…。減るし穢れるじゃないか」
周りの人達に向けてそう言いながら、私の方に手が差し伸べられる。
その手を掴んで立つと、どよめき立ち、遠巻きだった人達が口を開き出した。
「ちょ、おま、お前こそ触るなよ。1人占めは駄目だぞ。順番守れksが」
「さゆさゆに近づいて何様のつもりだ。どいてよそこ、見えないじゃまいか」
三崎君の背中に隠れていると、横からこちらに手が伸びてきた。
だけどすぐさま叩き落とされ、三崎君の低い声が更に低く吐き出される。
「…触るなって…言ってるだろ……」
「なっ、いいじゃまいか少しくらい…!」
「よくない! その子は俺の…っ!」
「「「俺の?」」」
私と周りの人達の声が重なる。
すると三崎君は一瞬こっちを見て、音が聞こえそうなくらい素早く顔を逸らした。
そして、あー、とか、うー、とか言ってもごもごしている。
「…お……、俺の…、かっ、…か……」
「「「か?」」」
も、もしかして彼女って言ってくれるの三崎君…!?
周りの人と一緒に固唾を飲んで三崎君を見つめていると、
「―――ネ申だ……っ!」
と言ったかと思うと、私を抱え上げて階段を下りていった。
俵のように抱え上げられたものだから、私と同じようにポカンと口を開けている人達と目が合って、少し気まずかった。
ていうか、
私…彼女どころか人間じゃないの…!?
ぐるぐる混乱する私を余所に階下が見えてくる。
一気に4階分を駆け下り、店を出て降ろされたかと思うと、息も荒いまま私の手を引いてスタスタと歩き出した。
「み、三崎君…!」
歩く速さについていけず、思わず声をかけるとピタリと立ち止まった。
するとこちらを見て、持っていたマフラーを抜き取り、ぐるぐるに巻きつけて顔を隠してしまった。
そして再び歩き出す。
今度はゆっくりしたものだった。
「……ごめんなさい、私…その……」
言う事を守らなくて。
初めて三崎君に抱え上げられるという(お姫様風ではなかったが)事態に、流石に浮かれていていい雰囲気ではなく、早い胸の鼓動を押さえながら三崎君の様子を伺った。
「……いや…俺の方が悪い……。それに…ごめん。勝手に…その、触ったり…して……」
それは全然オッケーだと言いそうになる口を押さえた。さっき浮かれるなと言ったばかりなのに!
しかし、どうして三崎君が悪いという事になるのだろう。そんな筈はないじゃないか。
私が言う事聞いていれば三崎君の買い物を邪魔する事もなく、お店に居辛くなる事なんてなかったのに。
「……さっき…三樹雄に電話したのが駄目だった…あいつ…あの店限定のさゆさゆキーホルダーが出たって……! くそ…今日はオタらないって決めてたのに…!」
「限定品なら…仕方ないですよ」
さっきの電話はそうだったのか。
だけどその気持ちはよく分かる。限定品の力は強いのだ。
うんうんと頷けば、三崎君は再び深いため息を吐いた。
「あの店だけでも危険だったのに…よりによってコーナーまで来るとか……。言う事聞かないのは分かってたけど…、ほんと…君の行動パターンは読めない…」
ごめんなさい、そう謝ると、逆にまた謝られた。
それ以上何も言えず、一言も喋る事が出来ないまましばらく歩いていた。
どうしてこんな雰囲気になるんだろう。
こんな筈じゃなかったのに。
私のプランじゃ三崎君を満足させる事は出来ないのか。
やっぱり何1つまともに出来ない、こんな面倒な私じゃもう駄目なのか。
鼻の奥がツンとなり、溢れそうになるものを堪えていると、ふと立ち止まった三崎君が言った。
「……ちょっと…ここで待ってて……」
今度は絶対に、と鋭く言われ、大きく頷いた。今度こそ、どんな誘惑があってもテコでも動かない! そう言えば1つ頷いて近くのお店に入っていった。
ここからじゃお店の名前も何のお店なのかも見えないけど、動くなと言われたから見えないままにしておく。
離された手も、そのまま冷たくなっていった。
10分くらいすると扉が開き、左手に四角い箱を持っている三崎君が出てきた。
白い箱が何か聞いていいのか分からず見つめていると、それを私の前に差し出して小さく言った。
「……ちょっと…遅いけど…しかも丸くもない、し……、…サンタもトナカイもいない…けど…」
白い箱に書かれたお店の名前に見覚えがあった。
前に、新しく出来たという口実で、デートに誘おうとしていたお店の名前だ。
箱の小窓から見える、色とりどりの小さなケーキ達。これを三崎君が買ってきれくれたのか。
「……本当は…場所知らなくて……さっき三樹雄に…聞いた、くらいだし……」
さっきの電話はキーホルダーの話だけじゃなかったという事?
私が言っていた事を思い出して、わざわざミッキーさんに聞いてくれた、という事でいいの?
でも、どうして今。
「………クリスマスも……デ、デート…も…、碌に出来ない駄目なヤツで……ほんとごめん…」
……あ。
もしかして、あの宴の時愚痴ってしまったのを聞いていたのだろうか。
しまった…! 私って嫌な女…!
でも。
それを聞かなかったフリはしなかったんだ。
三崎君が1歩私に近づき、ケーキの箱を掲げた。
「……仕切り、直しは……まだ有効……?」
マフラーのせいで表情は全然見えないけど、微かに覗く瞳は確かに私を映していた。
私しか映っていない。
そう、自惚れていいのかな?
涙が出そうになるのを堪え、声が震えて出ないよう、手をぎゅっと握り締めて頷く。
するとはっ、と息を吐く音が頭上で聞こえ、『よかった』と言ったのが聞こえた。
その柔らかい声色だけで、私がキュンってするのを知らないのだろう。見上げれば、マフラーを少しずらして白い息を吐いている。
目が合えば、そこから覗く厚めの唇が弧を描く。
1つ1つの動作が、私を甘く痺れさせる。
本当、三崎君は私を喜ばせる天才だ。
天然なのが怖い。
「…ねぇ、三崎君」
だから私も。
正式な恋人だと認めて貰えた事だし、もっと近づきたい。
私が三崎君でいっぱいのように、三崎君も私でいっぱいになって欲しい。
「……ん?」
「ケーキの箱、しっかり持っててくださいね?」
押し付けられた箱の先にある腕を引っ張り、精一杯背伸びをして、バランスを崩して無防備になった三崎君の唇を奪った。
…奪ったつもりだった。
三崎君の恐らく柔らかいであろう唇の感触はなく、ふわりと嗅いだ事のある匂いの物が顔に押し付けられた。
それはさっき私が被っていたマフラーだった。
「…え…? 村崎さ…くぁwせdrftgyふじこlp!!?」
しかも、三崎君が空いている右手で押さえている場所は顎だった。
…マフラー有る無しにしろ失敗に終わってるとか、何もう完璧私終わってる…!
折角の…!
折角の大チャンスだったのに…!
最終ミッション成功かと思ったのに!!!
ちょっと! 神様…!
本当お願いしますあと10センチ身長下さいそうじゃないとキス出来ないじゃないですかーーー!!!
キュンキュンさせるどころか、唇を狙うただの飢えた女豹の醜態を晒して締めた私の初デート。
落とされなかったケーキが、なんともいえない甘酸っぱさを含んだのは、
また別のお話。
あにまて=an●mate。オタグッズなど色々揃ういいお店。
ks=カスの意。
くぁwせdrftgyふじこlp=声にならない悲鳴。