第3話
【約束のタイムカプセル―1】
彼と出会ったあの日から、私の生活は色づいていった。
何をしてても、詩音と一緒だったら幸せだった。
朝早くでかけるときも、一緒におきて一緒に朝食をとった。
夜遅く帰ったときでも、何時まででも詩音は起きていてくれた。
「付き合おう。」
その一言だけが2人の間にはなかったけれど、一緒に住んでいたし、誰から見ても幸せなカップルに見えていた。
その日が来るまでは・・・。
ある日帰宅してみると、いつもより豪華な食事とワインがテーブルに並べられていた。
満面の笑みで詩音が待っていた。
「どうしたの?こんな晩御飯、初めてじゃん。」
詩音の笑顔につられて、私も笑顔になった。
「俺、仕事決まったんだ!だから、お祝いしたくて!!」
「そうなの?それはお祝いしなくちゃね!!」
私は嬉しくて仕方がなかった。
その日私は、明日も朝から仕事があるというのに、朝まで騒いでいた。
―AM6:30―
目覚ましの音で起こされた。
「頭いったぁ・・・。あれっ?詩音?しっお〜ん!!」
気付いてみると、家の中に詩音の姿はなかった。
頭は痛かったけど、力いっぱい叫んだ。
「しお〜ん!!どこ〜??イタタタタ・・・。」
ふと、今までのことが全部“夢”だったような気になった。
涙がゆっくりと流れていく。
そのときだった。
「ただいま〜。」
優しい声と一緒に、詩音が帰ってきた。
「涙目になって、そんなに頭痛きついの?」
困った顔をしながら、彼は頭痛薬を差し出した。
けれど私はソレを受け取らなかった。
頭痛薬なんかよりも、詩音がいることをこの手で確かめたかった。
そう考えているうちに、いつの間にか体が動いていた。
なんの前ぶれもなく抱きついた私に、一瞬戸惑った詩音もすぐに私を包み込み返してくれた。
私は詩音に頭をなでられながら、涙が止まるまで泣き続けた。