第1話
プロローグ
私達は約束した。
2人は 明日も一緒にいると。
1ヶ月後も、半年後も、1年後も・・・。
そして、約束の日が来れば、結婚しようと誓っていた。
私達はタイムカプセルに2人の思いを約束することにした。
タイムカプセルの中には、未来の自分、そして相手へのメッセージがこめられていた。
それと、2人の名前だけが書かれた未完成の婚姻届が1枚・・・。
それらは、ちいさな缶につめられて、向日葵の下に埋められた。
そう、それは2人が出会ったあの場所に・・・。
【Love on the cake】
私が詩音と出会ったのは、とても寒い冬の日だった。
そのころの私は、毎日のようにバイトに追われていた。
冬の一大イベントのクリスマスに向けての注文を受けたり、早めに届けてという注文のケーキを届けたりしているバイトだった。
そんな私の生活といえば、もちろん彼氏がいるわけでもなく、ただ、
学校→バイト→帰宅 の変わり映えしない日々を送っていた。
けれど、そんな日が終わる日がきた。
―12/24―
クリスマスイヴだというのに、もちろん私はバイトをしていた。
バイト後の予定なんてものも、もちろんなかった。
―PM11:00―
だんだん店が込んでくる。
その中に、詩音がいた。
彼を見つけたときに湧いたあの感情・・・。
なんてよべばいいかなんて、わからなかった。
一目ぼれに似た、切ない衝動・・・。
「予約していた、宮原です。」
彼は私の前に立ち、さわやかな笑顔で言った。
私の中で一瞬、時間が止まった気がした。
手に持っていたリボンがスルリと、手から落ちていった感覚で我に返った。
「宮原様ですね?少々お待ちください。」
営業スマイルに顔をもどし、ケーキを取るために振りかえった。
初めて鼓動が早くなっていることに気づく。
深呼吸・・・。
少しだけ、落ち着いた気がした。
名前とケーキのラベルを確認して箱を取った。
「お待たせいたしました。こちらの商品でよろしいでしょうか?」
ケーキ箱とラベルを見せて確認をとる。
彼は、喋ることなくうなずいた。
「では、引き換え券をお願いします。」
そういった、一連の動作を終えると彼を見送った・・・。
けれど、後姿をいつまでも見送ってなんていられない。
物悲しさを閉じ込めて、私は仕事へともどった。