EP 6
冒険者ギルドで地球のゴミをDIYしたら、受付嬢とドワーフがドン引きした件
ルナミス帝国、冒険者ギルド。
ファンタジー世界お決まりの木造酒場……と思いきや、そこは蛍光灯が煌々と照らし、受付には発券機と電光掲示板が並ぶ、まるで現代日本の『ハローワーク』のような空間だった。
「はい、これで登録完了ね。優也君は今日から一番下の『Eランク』よ。よろしく」
兎耳の格闘娘・キャルル(Cランク)が、プラスチック製のギルドカードを優也に手渡した。
「ああ、サンキュー。これでとりあえず合法的に稼げるってわけか」
優也はカードをジャージのポケットに突っ込む。
その後ろでは、人魚姫のリーザが「ゴブリン1匹3000円……10匹で3万円……ふへへ、これでタローソンのプレミアムロールケーキが……」とヨダレを垂らして掲示板に張り付いており、エルフのルナは「あら、この観葉植物、少し元気がないわね」と謎の自然魔法をかけ、ギルドの鉢植えを天井まで急成長させて職員をパニックに陥らせていた。
「(……本当にこのパーティーで大丈夫か?)」
優也は一抹の不安を覚えつつも、気を取り直した。
「キャルル、早速クエストに行きたいんだが。俺、手ぶらなんだよな」
「そうね。優也君、体格は良いけど丸腰じゃゴブリン相手でも怪我するわよ。隣のドワーフ工房で、初心者の『鉄の剣(3万円)』でも買ったら? ……お金、貸そうか?」
「いや、借金は主義じゃない。武器なら……『出す』から問題ない」
「出す?」
首を傾げるキャルルをよそに、優也はギルドの隅の空きスペースに陣取り、空中に『リサイクルマスター』のスキルボードを呼び出した。
『現在の保有ポイント:990 p』(※前回、弁当を2つ出して10p消費)
「よし、これだけあれば十分だ」
優也の頭の中には、すでに『自身のMMA(総合格闘技)スタイルに最適な武器』の設計図が出来上がっていた。
検索窓にイメージを打ち込み、ポイントを消費していく。
『廃棄された原付きバイクのリアサスペンション:10p』
『工事現場で捨てられたサビだらけの単管パイプ(1メートル):5p』
『使いかけの強力ダクトテープ:1p』
ポンッ! ポンッ! と、軽い音と共にギルドの床に「地球の粗大ゴミ」が転がり落ちた。
「な、何それ!? ただの鉄屑じゃない!」
驚くキャルル。騒ぎを聞きつけて、隣の工房から顔を出したドワーフの鍛冶師も「なんじゃその汚い鉄の棒は?」と顔をしかめた。
「鉄屑? 馬鹿言うな。こいつは宝の山だ」
優也はニヤリと笑うと、工業系資格『機械保全技能士』と『機械加工技能士』の知識をフル稼働させた。
単管パイプの先端に、原付きのサスペンション(バネとショックアブソーバー)を絶妙なバランスでねじ込み、強力ダクトテープでガチガチに固定してグリップを作る。
作業時間、わずか3分。
「よし、完成だ。名付けて……『ショック吸収型・タクティカル鉄パイプ』」
見た目は、完全にスラム街のゴロツキが持っている凶器である。
しかし、優也が軽くその鉄パイプを振った瞬間――。
ブォォォォォンッ!!
鋭い風切り音がギルド内に響き渡った。
「なっ……!?」
ドワーフの鍛冶師の目が、見開かれた。
「見た目はアレだが、先端にバイクのサスペンションを仕込んだことで、打撃の瞬間にスプリングが圧縮・反発する。つまり、相手の硬い骨や鎧をブチ抜く『破壊力』を倍増させつつ、俺の手首への『反動』を完全に殺す仕様だ」
ブンッ! ブンッ!
優也は柔道のステップを踏みながら、滑らかな動きで鉄パイプを振り回す。
闘気も魔法も一切乗っていない、純粋な『物理と工業の暴力』。
「……アンタ、それ、どこで習ったの?」
キャルルが少しだけ顔を引きつらせて尋ねた。
「期間工の夜勤明けに、YouTubeのDIY動画を見てな。よし、準備万端だ。行くぞ」
優也が鉄パイプを肩に担ぐと、掲示板に張り付いていたリーザが「わーい! ゴブリン狩りですぅ! お金ですぅ!」と歓声を上げ、天井を突き破った観葉植物の下でルナが「ピクニックね♡ お弁当作らなきゃ」と微笑んだ。
「……はぁ。私の胃薬、足りるかしら」
兎耳をパタンと垂れ下げたキャルルを先頭に、カオスすぎる4人組は、ルナミス帝国郊外の森へと足を踏み入れるのだった。




