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異世界リサイクル生活! 〜人魚と兎とエルフのドタバタシェアハウス〜  作者: 月神世一


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EP 9

農業大臣ルナの暴走(※生態系破壊)と、ハイエナ人魚の巨大野菜ビジネス

「ギャァァァァァァァァァッ!!」

日が落ちかけたポポロ村の要塞内に、100デシベルを超える絶叫が響き渡った。

声の主は、つい先ほどまで無給の過酷な土木作業を喜んでこなしていた『狂信者(元ハグレ兵)』たちである。

「た、助けてくれぇ! 人参が! 人参が俺のケツを噛んで離さねぇぇっ!」

「ひぃぃっ! こっちの豆は機関銃みたいにサヤを飛ばしてきやがる! 痛ぇ! 痛ぇよぉ!」

村の畑は、完全に『未開のジャングル』と化していた。

優也が復旧した水路の豊富な水と、エルフの王女ルナが『世界樹の杖』から放った莫大な自然魔法。その二つが最悪の化学反応を起こし、ポポロ村の農作物を一気に数百年分の突然変異レベルアップへと導いてしまったのだ。

「あははっ! みんな元気いっぱいで、とっても嬉しそうね♡」

「どこがだァァァッ!!」

村長室の窓からニコニコと手を振るルナに向かって、優也はタクティカル鉄パイプを握りしめながらマジギレした。

「生態系破壊にも程があるだろ! あのオレンジ色の化け物、完全に牙が生えてるじゃねぇか!」

優也が指差す先では、大型犬サイズの『人参マンドラ』が、太い根っこを足のようにバタバタと動かし、狂信者たちを追い回している。

「優也君! 上!!」

キャルルの鋭い警告が飛んだ。

優也が見上げると、畑のど真ん中にそびえ立つ巨大なツルから、家ほどもある大きさの『ハニーかぼちゃ』がブチッと千切れ、優也たちの頭上へと落下してくるところだった。

「チッ……! 農業じゃねぇ、完全にモンスター討伐クエストだろコレ!」

優也はマッハで振り返り、アイドリング状態だったユンボ(油圧ショベル)の運転席に飛び乗った。

ガシャン! と操作レバーを弾き、アームを真上へと跳ね上げる。

ズドォォォォォォォンッ!!!

落下してきた数トンクラスの巨大かぼちゃを、ユンボの強靭なバケット(爪)が空中で見事にキャッチした。車体が後部を浮かせながらギシギシと悲鳴を上げるが、油圧の力でなんとか受け止める。

「キャルル! 豆の野郎と人参の足止めを頼む!」

「了解! ……もう、なんで私が野菜相手に月影流を使わなきゃいけないのよぉっ!」

キャルルがヤケクソ気味に地を蹴り、畑のジャングルへと突撃する。

『月影流・草薙くさなぎ』――本来は多数の敵の足を刈るための低い回し蹴りが、巨大人参マンドラたちの足を次々と薙ぎ払い、ズバババッ! と空中に打ち上げていく。

そこへ、ユンボのバケットに巨大かぼちゃを乗せたまま旋回してきた優也が、空中の人参たちに向かってかぼちゃごとアームをフルスイングした。

メチャァァァァァッ!!

「ギャァァ……(パタッ)」

巨大かぼちゃと激突した人参マンドラたちが、断末魔と共に地面に叩きつけられ、ついに沈黙した。

「ふぅ……。これで全部か?」

優也がユンボのエンジンを切り、額の汗を拭う。

村の広場には、討伐(収穫)された巨大かぼちゃ、大量の人参マンドラ、そして弾切れになったダイズラ豆が山のように転がっていた。

「ひえぇぇ……。お、恐ろしい化け物野菜じゃった……」

村人たちが家から恐る恐る顔を出し、その規格外の野菜の山を見て震えている。

「あーあ。せっかく大きく育ててあげたのに、みんな乱暴なんだから」

ルナが不満げに頬を膨らませて畑から歩いてきた。

「お前の基準がおかしいんだよ! こんな化け物サイズ、どうやって食うんだ。大味になってて絶対マズイぞ……」

優也が呆れ返っていた、その時。

「…………ッ!!!」

野菜の山の陰から、目をカッと見開いたリーザが飛び出してきた。

彼女の手には、真っ二つに割れた巨大人参マンドラの切れ端が握られており、その口元はオレンジ色の果汁でテカテカに光っている。

「リーザ? お前、それ食ったのか?」

「優也様……! これ……これ、ただの野菜じゃありませんぅっ!!」

リーザは感極まったようにワナワナと震えながら、優也の足元にすがりついた。

「すっごく甘いんですぅ! 果物みたいにジューシーで、かぼちゃも生で食べられるくらいホクホクで……っ! 魔力がたっぷり詰まってるからか、一口食べただけで体の底からエネルギーが湧いてきますぅぅっ!」

「マジか?」

優也も半信半疑で、割れたかぼちゃの破片を口に放り込んだ。

「……! 甘っ。なんだこれ、高級スイーツかよ」

期間工時代にたまの贅沢で買った、デパ地下の高級かぼちゃプリンよりも遥かに濃厚で甘い。

「ふふへへへ……♡」

リーザの瞳が、再び『ルチアナ円(金)』のマークに変わった。

彼女はドンッ! とみかん箱に乗ると、村人たちと狂信者たちに向かって声高らかに宣言した。

「皆様! これはただの野菜ではありません! ポポロ村の豊かな水と、エルフの秘術(※暴走)が生み出した奇跡の特産品……その名も『ポポロ村限定・オーガニックメガベジタブル』ですぅぅっ!!」

「「「オーガニックメガベジタブル!?」」」

村人たちがざわめく。

「この栄養満点のメガ野菜を、帝国や三国のお金持ち(貴族)に『美容と健康に効く幻の野菜』として高値で売りつけるんです! 独占販売です! 村はこれで大儲け、私たちは大富豪ですぅぅっ!!」

「うおおおおおおおっ!! アイドル様ぁぁっ!!」

水路が復活し、要塞化が完了し、さらに『無限に生える超高級ブランド野菜』という特大の経済資源まで手に入れてしまった限界集落・ポポロ村。

狂信者(元野盗)たちは「タダでこんな美味いものが食えるのか!」と涙を流しながら巨大かぼちゃにかぶりつき、忠誠心をさらにカンストさせていた。

「……たくましすぎるだろ、お前ら」

優也は、月明かりの下で野菜の宴会を始めたカオスな集団を見渡し、思わず笑みをこぼした。

ここへ来た時はどうなるかと思ったが、結果的に村は救われ、クエストの目的(村起こし)は120%の形で達成されたのだ。

「優也君、お疲れ様。……色々と規格外だったけど、アンタがいてくれて本当に助かったわ」

キャルルが、甘いかぼちゃをかじりながら優也の隣に並んだ。

「お前もな、村長。明日にでもギルドに報告して、報酬の100万円を――」

優也が言いかけた、その瞬間だった。

ドォォォォォンッ……!!

ポポロ村の巨大な跳ね上げ門の向こう側から、地響きのようなドラ(銅鑼)の音が鳴り響いた。

「な、なんだ!?」

村の防壁の上にいた見張りが、血相を変えて叫ぶ。

「て、敵襲――!! 今度はハグレ兵じゃねぇ! レオンハート獣人国の『正規軍』だ!! 数はざっと500!!」

宴会の空気が、一瞬にして凍りついた。

「貴様らァァァッ!! よくも俺をコケにしてくれたなぁぁっ!!」

門の外から響いたのは、魔法の拡声器を使った憎悪に満ちた声。

昨日、ルナの『ハッピードリーム』でラリらされ、石ころを税金だと思い込まされて帰っていった悪徳徴税官・タイガの声だった。

薬が切れ、自分が騙されたことに気づいた彼が、私怨で正規軍を動かし、ポポロ村を文字通り『火の海』にするために戻ってきたのだ。

「チッ……。しつこいクレーマーは、現場の空気を悪くするから嫌いなんだよ」

優也は、食べかけのかぼちゃを放り投げ、再び愛機ユンボの運転席へと向かって歩き出した。

その背中には、期間工時代に培った『理不尽な上司クレーマーへの静かなる怒り』が燃え上がっていた。

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