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異世界リサイクル生活! 〜人魚と兎とエルフのドタバタシェアハウス〜  作者: 月神世一


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EP 2

悪徳徴税官襲来! エルフの王女がキメる『合法(?)ハッピードリーム』

「そ、村長ォォォッ!! 獣人王国の悪徳役人、タイガの奴が……兵隊を引き連れて来やがりましたぁぁぁっ!!」

村長の家で発泡酒とセブンスターの余韻に浸っていた優也たちの耳に、血を吐くような村人の悲鳴が届いた。

「チッ……。俺の現場(村)で、初日から面倒起こしてくれやがって」

優也は『タクティカル鉄パイプ』を肩に担ぎ、舌打ちをして立ち上がった。

村の広場に出ると、そこには目を覆いたくなるような光景が広がっていた。

豪奢な毛皮のコートを着込んだ虎耳の獣人――役人『タイガ』が、村人たちをひざまずかせ、冷酷な笑みを浮かべていた。その後ろには、武装した獣人兵士が十数人、槍を構えて威圧している。

「おいおい、ポポロ村のクズ共。今月の『みかじめ料』も払えねぇのか? 三国緩衝地帯で生かしてやってる俺たちレオンハート王国への感謝が足りねぇなぁ!」

タイガが、怯える村の若者を蹴り飛ばした。

「お待ちくだされ、タイガ様! 不作続きで、もう村には麦の一粒も……!」

這いずるように懇願する村長。

「金がねぇなら、若い女でも売り飛ばすんだな。おい、そこの家を漁れ! 金目の物を全部引っ張り出せ!」

タイガが下劣な命令を下し、兵士たちがゲラゲラと笑いながら村人の家へ向かおうとした――その瞬間だった。

「……テメェら、他人の現場で好き勝手やってんじゃねぇぞ」

ドゴォォォォォンッ!!

優也の鉄パイプが、先頭の兵士の腹部に深々と突き刺さった。

バイクのサスペンションが限界まで沈み込み、爆発的な反発力で兵士の巨体を数メートル先まで吹き飛ばす。

「なっ……!? き、貴様ら何者だ!」

タイガが驚愕して後ずさる。

「ただの期間工上がりの、現場監督だ」

優也が鉄パイプの埃を払う。

そして、タイガの背後に回ろうとした残りの兵士たちの首筋に、マフラーとフードで顔を完全に隠した不審者キャルルの蹴りが、見えない速度で叩き込まれた。

ドスッ! ドスッ! ドスッ!

「があっ!?」

「ぐべっ!」

月影流の片鱗すら見せない、ただの『純粋な速度と暴力』。

顔バレを極限まで恐れるキャルルは、無言のままマッハで兵士たちの急所を刈り取り、あっという間に十数人の兵士を地面に転がしてしまった。

「ひぃぃっ!? ば、化け物……っ!」

一瞬にして護衛を全滅させられ、腰を抜かしたタイガ。

だが、そこは悪徳役人。震える足で立ち上がると、お約束のセリフを吐き捨てた。

「き、貴様ら! 俺はレオンハート王国の徴税官だぞ! お上に逆らう気か!? こんな真似をして、タダで済むと――」

「滅相もなくってよ、お役人様♡」

緊迫した空気を、花が咲くような甘ったるい声が切り裂いた。

エルフの王女・ルナが、ふわりと優雅な足取りでタイガの目の前に進み出たのである。

「な、なんだお前は……エルフ……?」

「私たちは善良な村起こし隊ですもの。お国に逆らうだなんて、とんでもない」

ルナはニコニコと微笑みながら、ジャージのポケット(四次元的な魔法ポーチ)から、『怪しい紫色の煙を放つ、毒々しい極彩色の植物』を取り出した。

「な……なんだそれは? 甘い、匂いが……」

タイガの鼻腔を、強烈に甘く、脳髄を直接溶かすような香りがくすぐる。

優也のサバイバル本能が、かつてない危険信号を発した。

「おい、ルナ。お前、それ……」

「これ? エルフの森の奥深くにしか生えていない、幻惑催眠植物『ハッピードリーム』よ♡ ちょっと嗅ぐだけで、この世のすべての悩みが消え去って、最高の幸せに包まれるの」

「それ、地球で言うところの完全な違法薬物(ガンギマリの葉っぱ)じゃねぇか!!」

優也の渾身のツッコミも虚しく、ルナはタイガの顔の前にハッピードリームをフリフリと揺らした。

「さぁ、お役人様。深く、ふかーく息を吸って♡」

「お、おい、やめ……すぅぅぅぅぅぅぅ……っ」

タイガが、抗う間もなくその紫色の花粉(煙)を肺いっぱいに吸い込んだ。

次の瞬間。

タイガの瞳孔が限界まで開き、焦点が完全に虚空を彷徨い始めた。口からはだらしなくヨダレが垂れ、顔面がこの世の春を迎えたような、だらしない笑顔に変わる。

「あ、あひぃ……あひぃぃぃ……っ♡」

「ふふっ、良い効き目ね」

ルナは手早く、どこからか取り出した『徴税完了の書状』と羽ペンを、タイガの手に握らせた。

「きん……だぁ……。おんな……だぁぁ……。むふふふふっ……」

「ささっ、お役人様。この書状に『ポポロ村からは確かに税金を全額納めていただいた』という署名を♡ そうすれば、もっともっと幸せになれますわよ」

「あひぃ……サイン……するぅぅ……♡」

タイガは完全にラリった状態で、言われるがままに書状へサラサラとサインを書き入れた。完全に自我が崩壊している。

「はい、よくできました♡ じゃあ、これがお約束の税金よ。気をつけて帰ってね」

ルナがタイガの胸に押し付けたのは、村の広場に落ちていた『ただのデカい石ころ(泥付き)』が入った麻袋だった。

「ほぁぁぁ……。きんか……おうごんだぁぁ……♡ ぎっしりだぁぁ……」

タイガはただの石ころが入った袋を大事そうに抱きしめ、ふらふらとした千鳥足で、倒れた部下たちを放置したまま、ニコニコと幸せそうに村を出て行った。

「…………」

静まり返るポポロ村の広場。

魔法も闘気も一切使わず、たった一株のヤバい植物で悪徳徴税官を完全に無力化(社会的に抹殺)したエルフの王女。

キャルルは無言でフードを深く被り直し、リーザは「あんな石ころで……私のパンの耳より安い予算で税金を……」と恐怖と尊敬の入り交じった目でルナを見つめていた。

優也は、手に持っていた鉄パイプをそっと地面に下ろし、顔を引きつらせながら言った。

「……なぁ。このパーティーの中で一番ヤバいのって、間違いなくルナ……お前やん」

地球の荒くれ者すらドン引きする、純度100%の善意と狂気。

ルナは自身の引き起こしたコンプライアンス違反など微塵も気にせず、残ったハッピードリームを優也たちに向けて満面の笑みで差し出した。

「皆様も、一口キメられますか?♡ とってもハッピーになれますわよ?」

「「「結構です(ですぅ)!!!」」」

優也、キャルル、リーザの三人の声が、限界集落の青空に綺麗に響き渡った。

かくして、当面の危機(税金徴収)は極めてブラックな手段で回避された。

だが、ポポロ村のインフラがボロボロな事実に変わりはない。

いよいよ、現場監督・高木優也の『地球の粗大ゴミ(重機)』による、規格外のDIY村起こしが幕を開ける!

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