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異世界リサイクル生活! 〜人魚と兎とエルフのドタバタシェアハウス〜  作者: 月神世一


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10/12

EP 10

異常な高額報酬と限界集落『ポポロ村』。兎耳娘の胃痛と、ガテン系の血が騒ぐDIYクエスト

豚神屋での「ニンニクマシマシ」祝勝会から一夜明けた、ルナミス帝国・冒険者ギルド。

「お宝ですぅ! 高額報酬ですぅ! 次はどの魔獣を狩りに行きましょうか、優也様っ!」

朝イチから、人魚姫のリーザがギルドの依頼掲示板の前で鼻息を荒くしていた。

昨日、本物の「豚肉チャーシュー」の味を知ってしまった彼女は、もはやパンの耳と雑草サラダの生活には絶対に戻れない体になっている。完全に金(ルチアナ円)の亡者と化していた。

「落ち着け、リーザ。あんまり無茶な討伐依頼を受けて、またルナが森ごと燃やしたら元も子もないだろ」

優也は缶コーヒー(ルナミス特製・微糖)を飲みながら、掲示板をのんびりと眺めていた。

彼自身のモチベーションも高い。昨日の「大規模火災の鎮圧」という善行により、リサイクルマスターのポイントは一気に5000pを超えた。

だが、スキルの仕様上『地域貢献・文化的貢献(5000p〜)』のような大規模な善行を積まなければ、さらに強力な重機や設備などの「超大型ゴミ」は召喚できない。

「(ただ魔獣を殴るだけじゃポイントの伸びが悪い。何か、こう……『何かを直す』とか『建てる』みたいな、ガテン系のクエストはないもんか)」

そう思いながら視線を巡らせていた優也の目に、一枚の特大ポスターが飛び込んできた。

『緊急・地域村起こし隊募集! 限界集落【ポポロ村】を復興せよ!』

【内容】村のインフラ整備、治安維持、農業支援など

【場所】人間・獣人・魔族の三国緩衝地帯

【報酬】着手金100万円 + 復興度合に応じた特別ボーナス

「……これだ!!」

優也の目が、獲物を見つけた鷹のように鋭く光った。

インフラ整備! 復興! まさに自分が持っている『機械保全技能士』や『第二種電気工事士』、『玉掛』などの国家資格と、リサイクルマスターの能力をフルに活かせる最高の舞台ではないか。

「ひゃ、ひゃくまんえんっ!?」

横から覗き込んだリーザが、あまりの金額に泡を吹いてひっくり返りそうになる。

「100万円あったら……ルナミスバーガーの全メニュー制覇どころか、タローソンのフランチャイズ権が買えちゃいますぅぅっ!! これです! これにしましょう優也様!」

「ああ、決まりだ。俺のDIY魂(資格)が疼いてる」

優也が依頼書をベリッと剥がした、その時だった。

「……ちょっと待ちなさい」

後ろから、地獄の底から響くような、低く震える声が聞こえた。

振り返ると、キャルルが顔面を蒼白にして、ウサギ耳をペタンと完全に寝かせた状態で立っていた。

「どうしたキャルル。腹でも痛いのか?」

「優也君……アンタ、そこの【場所】の項目、ちゃんと読んだ……?」

「場所? ああ、『人間・獣人・魔族の三国緩衝地帯』って書いてあるな」

「そうよ……そこはね……」

キャルルはガクガクと震えながら、両手で顔を覆った。

「私がこの前……満月の夜にテンションが上がりすぎて、三国の国境警備隊の駐留所に単独カチコミをかけて、全員ボコボコにしてからフル回復させるっていう『アメとムチの無限地獄』をやらかした、すぐ近くの村じゃないのよぉぉぉっ!!」

「「「あ」」」

優也、リーザ、そして横で聞いていたルナまでもが、同時に納得の声を漏らした。

キャルルの「満月の夜の奇行」は、すでにシェアハウス内でも共有されている重要危険事項である。

「無理無理無理無理! もし警備隊の連中に私だとバレたら、絶対に国際問題になるわ! 豚神屋のラーメンは諦めるから、どうか別の依頼にしてぇぇっ!」

涙目で懇願するキャルル。

しかし、すでに優也の「現場監督」としてのスイッチは完全に入ってしまっていた。

「キャルル。安心しろ」

優也はキャルルの肩にポンと手を置き、ニヤリと笑った。

「お前がやったのは『夜』で、しかも『マッハ1』で動いてたんだろ? だったら、案外顔はバレてないかもしれない。それに、もし揉めたら……俺が鉄パイプと関節技でなんとかしてやる」

「なんともならないわよ! 相手は三国同盟の軍隊よ!?」

「嫌ですぅぅっ! 100万円! 100万円の札束のベッドで寝るんですぅぅっ!」

リーザがキャルルの足にしがみついてギャン泣きし始める。

「ポポロ村……素敵なお名前ね♡ 限界集落なら、私が『世界樹の杖』で一晩にしてお野菜のジャングルを作ってあげるわ。きっと村人たちも喜ぶはずよ♡」

ルナが、再び市場破壊を予感させる極大の善意テロリズムを口にした。

「あんたたち、全員頭おかしいわよぉぉぉっ!!」

キャルルの悲痛な叫びも虚しく、多数決(3対1)により、パーティーの次なる目的地は『ポポロ村』に決定してしまった。

――数時間後。

ルナミス帝国発の『ロックバイソン・バス』の二階席に、彼らの姿はあった。

ドンッ! ドンッ! と岩の角を持つ巨大なバイソンが地響きを立てて進む中、優也は窓枠に肘をつき、流れる景色を眺めていた。

「(インフラ整備か……とりあえず、資材と重機が必要だな。ポイントで『ユンボ(油圧ショベル)』の廃車でも出せれば、俺が直して動かせるんだが)」

頭の中で工事の段取り(工程表)を組む優也。

その横では、リーザが「ふへへ……100万円……」とヨダレを垂らしながら眠りこけ、ルナが「新しいお洋服、汚れないといいのだけれど」と優雅に紅茶を飲んでいる。

そして最後列では、キャルルが胃薬(陽薬草の粉末)を水なしでガリガリと噛み砕きながら、絶望の表情で天井を仰いでいた。

彼女はまだ知らない。

このポポロ村への旅が、のちに彼女を『伝説の村長(極道)』として大陸中に名を轟かせる、壮大な勘違いと暴力の始まりであることを。

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